あぁ、懐かしの友よ
□2 懐かしの「碁」2
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先手の進藤が黒石を置く。右上スミ小目だ。進藤の石の置き方はとても素人くさい……よくこんな打ち方であんな碁が打てるな………いや、やっぱり何かあるのか?そんなことを考えつつも、オレは次の一手を打った。すかさず、進藤も次の手を打つ。
パチッ バシッ ビシッ
みるみるうちに美しい棋譜が作られていく。いや、それだけではない。進藤はオレ相手に指導碁を打ってきた。そんなことは、まだ囲碁を始めたばかりの少年にできるはずがない。これは確実に何かがあるな……
バシッ
…………….…………秀策のコスミ…
進藤はそれを打ってきた。現代ではコミというものができ、使われなくなってきた「コスミ」を……
「………虎次郎……」
『!?っっ』
『どーしたんだよ、佐為??』
『……少し気になることが………いえ、今はこの対局に集中しましょう。』
対局はどんどん進んでいく。オレは進藤にこれ以上指導碁なんてさせないように真剣に打った。進藤の打つ手がだんだん厳しくなってくる。
ビシッ
……これ以上は打てない………
「ありません……」
「「ありがとうございました。」」
……負けた………しかし、この対局でわかったことがある。それは………
「なぁ、進藤。この碁、お前が打ってないだろ??」
「『!?』」
進藤は凄く驚いた様子でこちらを見てくる。
「なっ…何言ってんだよ??ここには、オレとお前しかいねぇじゃん!」
「どう考えたって、つい最近囲碁を始めたばかりの奴が打てるよーな碁じゃねーよ!!まだ幽霊とかに取り憑かれて打ってるとかの方が信じるっつーの!!」
「『!!??』」
……えっ!?まじなんですか?その反応………
「あっ悪いー、そういえばオレ今日用事あるんだったわ。じゃーな!!」
「あっおい!!待てよ!逃げんなっっー!!」
そう叫んだときにはもう遅く、進藤は走って帰ってしまった……さすがに進藤の足には追いつけない……
「くっそーー!!絶対あいつの強さの秘密を暴いてやる!!」
オレの声は虚しく響いた…………
ところ変わって、走り出した少年は……
『おいっ佐為!!お前のせーでバレかかったじゃねーか!!」
『すみません……あの者が思ったよりも強くて………というより、あの者、あの歳であの強さはいささかおかしいですね………塔矢 アキラよりも強かったです。」
『え!?まじで??大河ってそんなに強いのかよ!?』
『ええ……そしてあの碁………以前どこがで見た気がするのですが………』
『んなわけねーじゃん。それより明日からどうしよう………………………』
……一人で百面相をしていた…………