あぁ、懐かしの友よ

□1 懐かしの「碁 」1
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あの棋風は虎次郎と全く同じである。

オレはこのことは断言できる。しかし、ありえないだろう。この時代にあいつと同じ棋風のヤツがいるなんて……。たしかに虎次郎……いや、本因坊秀策はこの時代でも有名で、たくさんの棋譜が現代にも残っている。しかし現代では新しい定石などができ、その結果、本因坊秀策の棋譜によりたくさんのことを学んだとしてもあそこまで一緒の棋風になるわけが無いのだ。なのに、あいつ「進藤 ヒカル」は、同一人物が打ったとしか思えないような碁を打った。

「これは本人に聞くしかないな。……いや、あやしまれるか?いきなりお前何故ここまで本因坊秀策と同じ棋風なんだ?なんて聞くのは………対局してみるか……?」

まぁ、とりあえず学校に行くか…と思いオレは家を出た。







学校に着くと、進藤 ヒカルはもう席に着いていた。オレは意を決して話しかけてみることにした。

「なぁ進藤、お前囲碁強くなったんだって?兄貴から聞いたぜ。昨日の大会あと少しで優勝だったんだってな?」

「え??お前兄貴って……もしかして加賀ってあの加賀の弟なのかよ!?へぇー気づかなかったなー。」

「たぶんその加賀の弟であってんよ。オレ実はちょっと碁打てんだよ。そんで、昨日の決勝の碁見せてもらってさ。一回お前と打ってみたくなったんだよ。だから、今日の放課後打たねぇか?」

そういうと、進藤は慌てだした。何やらボソボソと独り言を言い出した。そういえば虎次郎もいきなり強くなってからこんな感じになったよな……。なんか関係があんのか??

『どーすんだよ?佐為!?加賀ってクラスメイトなんだぞ!?お前の力とかバレたらヤバくないか??』

『大丈夫ですよ、ヒカル。指導碁を打てば……まぁ、塔矢ぐらいの腕でしたら、指導碁ということがバレるでしょうが、これぐらいの歳の者で塔矢ぐらいの腕の者なんてそうはいませんから。』

『……わかった。』

「今日の放課後だつたら空いてるよ。でも何処で打つんだ??」

独り言が終わった進藤はオレに話しかけてきた。小さな声過ぎて、独り言の内容は聞こえなかったが、誰かと話しているようだった。進藤は電波君なんか………?いやそしたら虎次郎も……??

「あ、あぁそれだったらオレん家なんてどうだ?学校からなかなか近いし。」

「わかった。そんじゃ放課後な!」





それから授業を受け、やっとのことで放課後になった。

「進藤行くぜー!!」

「あっ待てよ、加賀!!」

オレ達は家に着くまでたわいない話とかで盛り上がった。もともとオレらはクラスでもなかなか話す方だったので会話には困らない。まぁ、男子というのは女子と違って、グループとかあまり作らないのだが。

「あっそういえば、家に兄貴いるかもしんないから、オレのこと「大河」って呼べよ。兄貴とごちゃになってまぎらわしいからよ。」

「そういやそーだな。わかったよ。」

『……大河………??』

『どうしたんだよ、佐為??なんかあったのか?』

………進藤はまた独り言を始めたようだ………

『いえ、知っている者に顔も名もそっくりだったもので……。気にしないで下さい。』

『そりゃ凄えな……』

「進藤早く入れよ!!独り言なんて言ってねぇでさ!!」

「あっ、悪い悪い、今入るよ」

オレの声でようやく動きだした進藤はオレの部屋に入ってきた。オレの部屋ははっきり言って殺風景だ。必要最低限の物しか置いていない。まぁ、今日はそれプラス碁盤と碁石が昨日から出しっぱなしのため置いてあるが……そんなつまらない部屋を進藤はグルグルと見回している。

「何にもねぇな。碁盤と碁石ぐらいでさ。」

「まぁな。漫画とか兄貴の借りるし、別に困らねーよ。」

「そっかー……んじゃ始めるか??」

「そーだな。」

オレと進藤が碁盤の前に座る。お互いに碁石を取り、蓋を開ける。中をみると、オレのには白石が入っていた。

「オレのに白石入ってたから、オレが握るぞ?」

「うん。」

オレが握った碁石の数は14、進藤は2個黒石を置いていた。

「進藤が先手だな。コミは五目半でいいか?」

「うん。じゃ、始めよ。」

「「お願いします」」

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