あぁ、懐かしの友よ
□プロローグ
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バチッ ビシッ バチッ………
二人の少年が囲碁を打っていた。
ビシッ バチッ………
「……………ありません…」
「「ありがとうございました。」」
「虎次郎……お前どーしてこんなにいきなり強くなった?昨日までのお前と違いすぎる!しかも棋風まで変わってんじゃねーかっっ!?いってぇどーいうことだよ!?」
負けた方の少年が勝った方の少年に怒鳴りつける。
「……ごめん。大河……もうキミとは打てない…………」
勝った方の少年は、悲しそうな顔で謝る。
「ごめんって何だよ!?打てないって!?オレ達好敵手だったんじゃねーか?お互いに高め合って、碁打ちを目指そうって言ってたじゃねーか!?」
「ごめん……ごめんね、大河……」
「……もういい。オレはもうお前の好敵手にはなれねぇんだな。…オレは碁打ちになんねぇ。お前一人でなってろ。」
「なんで!?キミだって碁打ちになりたかったんだろ!?目指せばいいじゃないか!」
勝った方の少年、虎次郎は慌てたように言う。
「オレが碁打ちになりたかったのは、お前と打つ碁が面白かったからだ。もうオレにとって碁打ちなんて意味ねぇんだよ。」
そう言って負けた方の少年、大河は席を立った。
「大河…………」
バッッ………
「……夢か……ずいぶんと遠い昔の夢だな……」
辺りを見渡すとそこは"現代"の自分の部屋だ。外を見ると、もう夕方になっているということにオレはとても驚いた。少し小腹がすいたのでリビングに行くと、そこには今日将棋部の部長なのに何故か囲碁の大会に出た兄貴がいた。
「お、大河じゃねーか。やっと起きたのかよ。もう夕方だぜ?」
「自分でもビックリだっつーの。兄貴こそ今日の大会どーだったんだよ?」
兄貴はその問いを待ってたかのように笑顔で話だした。
「それがなー、優勝したんだが、こっちの三将が小学生ってことがバレて失格。おしかったんだがなぁー。」
オレが小学生?って顔をしたことに気づいた兄貴がそのことについて話しだした。
「人数が足りなかったからさ、出てもらったんだよ。そいつの強さが謎なんだわ。いきなり強くなったり、弱くなったり。」
「いきなり…………??」
オレはそのことに何か引っかかりを持った。
「おぅ。たしかお前と同い年のヤツだぜ。進藤 ヒカルっていう名前でな。」
「進藤 ヒカル!?」
「おっ!?知ってんのか?」
進藤 ヒカルの名前に反応したオレに兄貴は驚いて聞いてきた。
「知ってるもなにも、クラスメイトだぜ。しかもあいつ最近囲碁教室に通い始めたばっかみたいだし、大会に出れる程の力なんてないはずなんだけど??」
「どーいうことだよ?あいつの決勝での棋力なんてプロ並だったぜ?最近始めたとかじゃありえないだろ??」
「兄貴、その対局並べてくれない?」
「あぁ。」
兄貴はオレが持ってきた碁盤に例の対局を並べてくれた。美しい黒と白の石の並び。しかし、オレには何か見覚えのあるその棋風……………
「虎次郎……??」
オレは誰にも聞こえない声でそっとつぶやいた。