機械オタク、魔法界に参上!

□閑話1 始まりの日
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僕は、小さい頃からずっと一人だった。

正確には、一人ではないのかもしれない。

一応、叔父さん達一家がいるからだ。

でも、心はずっと一人ぼっちだった。

僕は何故か、生まれて数ヶ月で自我が生まれだした。

その結果、思考能力が人の数倍発達した。

だから、僕にはわかった。

叔父さん達は“僕”を見ているのではなく、“スリザリン家の嫡子”を見ていることを………

この世界には、“僕”を見てくれる人は、いないということを………

従兄弟と話していても感じる。

どこかよそよそしく、腫れ物を扱うような態度……

たぶん、親から“スリザリン家”とはなんたるか、どれくらい重要で、尊敬すべき家系なのかを刷り込まれているのだろう……

そのため、僕と関わる唯一の同年代の子供とも壁が生まれた。

僕は、この世界が辛かった……

だから、僕はこの狭い世界を飛びたした。

“スリザリン家”ではなく、“僕”を見てくれる人を探しに……












僕は、叔父に買ってもらったばかりの箒に乗って、空を飛んだ。

一人で箒に乗るのは初めてだ。

いつも誰かしらが、僕についていたからだ。

僕は取り敢えず、叔父さんに絶対に行ってはならないと言われていた場所に行くことにした。

なんでも、そこには“穢れた血”という生き物がいるらしい……

叔父さんは、

「“穢れた血”には、関わってはいけない」

と、会うたびに、口を酸っぱくして言う。

まるで、僕にそれを刷り込むかのように………

でも、僕は今日、その言いつけを破る!!

その先に、新しい世界があると信じて…………

しばらく空を飛ぶと、なんだか賑やかな街が見えてきた。

このまま、箒で街まで飛んで行ったら、たぶん凄く目立つだろう……

僕は、そう判断して、街の近くで箒から降りることにした。

箒は、森の中に隠しておく。

こんな箒をもって歩いていたら、目立つからだ。

街は凄く賑やかで驚いた。

こんな街は見たことがない……

僕は、別世界に来た気分になった。

ぐるぐるぐるぐる街を回る。

僕は、楽しくて、楽しくてしかたがなかった。

ふと、冷静になると、僕はあることに気づいた。

「……僕が箒をおいた森ってどこ………?」

僕は泣きたくなった。

全く知らないこの町……

取り敢えず僕は、公園で休憩することにした。

もう夕方なので、人は少なかった。

僕は、ベンチに座る。

たぶん今、僕の周りは、暗いオーラが漂っているだろう……

「はぁ……これからどうしよう……」

「ねぇ、あなた。なにかなやんでいるの?」

ビクッとして、声がした方を見ると、一人の可愛い女の子がいた。

歳は、僕と同じくらいだろう……

「え!?」

「あなたが、なにかなやんでいるみたいだから、はなしかけてみたの……もしかしたらちからになれるかもしれないから、はなしてみて?」

第一印象は、歳のわりにしっかりとした話し方をする子。

まぁ、滑舌はたどたどしいけど。

たぶん、頭が良い子なのだろう。

僕は、少しの期待をかけ、話して見ることにした。

「へぇー……つまりあなた、まいごなのね?」

………ぐさっときた……

僕は、人より大人びていると自分で思っていたからだ。

まぁ、事実、迷子なのだけど………

「……そういうことだね…」

「じゃぁ、わたしがあんないしてあげるわ!たぶん、あなたが、いっていたもり、わたししってるわ!!」

「!?本当?お願いします!!」

僕は、即答で答えた。

やっぱり、箒がないと困るからだ。

「ええ、いいわよ。わたし、ハーマイオニーっていうの。あなたは?」

「僕、シモン!!」

僕たちは、たくさん話をしながら、森へ向かった。

ついでに、“穢れた血”っていう生き物について聞いたけど、そんなものはいないって教えてもらった。

僕は、今までで一番幸せだった。

僕を“僕”として見てくれる子との会話……

凄く、凄く特別な時間だった。

ずっとこうしていたいって思うくらい………

でも、無情にもこの特別な時間は終わりを迎えた。

「ほら、シモン。あそこよ!もりがみえるでしょう?………ここからひとりでもだいじょうぶ?わたし、もうかえらないといえないじかんなの……」

僕はもっとハーマイオニーといたかった。

でもそんな気持ちを必死で隠して、笑顔で

「うん!大丈夫だよ!!ありがとう、ハーマイオニー!」

と言った。

「ほんとうにごめんなさい……つぎは、もっとあなたとはなしたいわ……」

「!?また、君に会いに来てもいいの?」

「もちろんよ!だってわたしたちともだちじゃない!!」

ハーマイオニーはキラキラとした笑顔で言う。

何故か、僕の心臓がドクドクといつもより速く鼓動する。

もっとハーマイオニーの笑顔を見たいと思った……

「……これ、ハーマイオニーにあげる……今日のお礼。」

僕は、首にかけていたネックレスを渡した。

ずっと僕が持っていた物だ。

たぶん、父上か母上の形見なのだろう……

大切な物だけど、何故かハーマイオニーに持っていて欲しいと思ったんだ。

「ほんとう!?すっごくきれい……ありがとう、シモン!」

「う…うん………」

思わず見とれてしまった。

あまりに可愛い笑顔に………

「あっ!!じかんだわ!またね、シモン!!」

そう言って、ハーマイオニーは走って行ってしまった。

僕は、また会いに来ようと誓って森へと走った。

すると…………

キキキキッッッーーー!!!

ドーンッッ

視界が真っ暗になる………

そして、だんだん見たことがない映像が流れ出した……

あぁ、これは僕の、いや、俺の前世の記憶か………







全ての映像を見終わって目を覚ますと、そこは病室のようだった。

俺は、全てを理解し、部屋を飛びたした。

魔法界に住んでいる俺にはここでの戸籍がない。

つまり、逃げないと面倒なこたになるからだ。

前世の記憶を思い出した俺は、機械に興味を引かれるようになった。

それを隠しもせずに生活しているうちに、マルフォイ家との微妙な壁もなくなり出した。

たぶん、マグル大好きな俺を、尊敬する一家とは別と考えるようになったからだと思う。

それからの生活はまぁまぁ楽しく過ごした。

その生活が、今世で一番幸せな時間の記憶と引き換えだったということに気づかずに………

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