長文部屋
□Warmth
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夢から現実に戻された瞬間、さっきまで動けなかった体から酷い痛みを感じた。
唸るが余りの痛さに声さえも出ず、体も動かせそうになかった。
重い瞼を開くと、見えるのは真っ白な天井。
此処は…?確か僕は…
次第に意識がはっきりしてきたのか、先ほどまでの出来事を重い出すと今の現状がさらに理解できなくなってしまった。
崖下で死を覚悟したのではなかったか…?
しかし、此処はどう見ても森林でもなく家の中。
体は動かせないが、目だけで動かすとなんとなくどういう場所かは理解して安堵してしまう。
(僕は助かったんですね。)
ツンと臭う消毒臭。周りには機材がいろいろと置かれている。
黒子の体は柔らかなシーツに包まれていた。
「…あ?起きた?」
何処からか声が聞こえてきた。しかし体が動かせないので確認が取れない。
少しでも動かそうとするならば何もしてないくても痛い体が余計痛む。
「いっ…」
「あぁっ!動かなくていいから!」
慌てて駆け寄ってきたのか直ぐに目の前に来た。ショートの女性が白衣を着て優しく笑ってくれていた。
「君、1週間眠ったままだったのよ?」
「あ、なた・・・は?」
「私は相田リコ。ここの病院の看護師。あ、今先生呼ぶから!日向君!!彼、起きたわよ!!」
バタバタと何処かに走り去ってしまったリコにあっけにとられていると直ぐにリコが男性を連れてきた。
見るからに医師の様だ。
「おーほんとだ。よかったなお前。命拾いしたぞ。」
そう言いながら素早く触診し始める男性。胸ポケットに日向と書いてあったので、リコが呼び出した日向君とはこの人の事だと理解した。
「…ちょっと熱があるな。傷のせいだろうな。ま、しばらくはこのまま動けないが…しゃべれるか?」
「は、い…。」
「あーいい、いい。まだしゃべれる状況じゃねぇなそれじゃ。おい、リコあいつに電話してやれずっと心配してただろ。」
「言われなくても今してるー!」
遠くから聞こえる声に日向は苦笑した。
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