長文部屋
□Warmth
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『テツヤ、貴方には謝っても謝りきれない…本当にごめんね。』
フワフワとした感覚の中で懐かしいぬくもりを感じる。
『それは俺たちの間に生まれたこと?それともこの子を置いていく事?』
大きな手がやさしく撫でる。見あげるとそこには優しく抱きしめてくれている母と父。
二人とも笑ってはいるが、何処か寂しそうである。
『…どちらもです。一人で抱えていくのには余りにも酷です。』
『…そうだな。でも、俺たちの子だ。大丈夫。その為に今、行くんだろ?』
『…ええ。』
母は息子をそっと降ろすと額に口づけた。
『さようなら。テツヤいつまでも愛しているわ。』
父親は息子の頬を一撫でした。
『愛しているよ、テツヤ。どうかこれから側にいられないことを許してくれ。そして…どんなことがあっても人を恨む事だけはするんじゃない。男と男の約束だ。』
夫婦は息子と離れるとそっと手をつないだ。
『怖くないのか?』
『あなたが一緒だもの…テツヤの為なら怖くないわ。守りましょう、テツヤの未来を』
『あぁ。』
待って、行かないで…
そう言いたくて声を出そうとするが声は出ない。
手を伸ばそうとしても動けない。
待って、待って、待って…
だんだんと遠くなる両親、浮上していく意識…そう、これは夢だった…
【Warmth】
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