長文部屋

□for whom 2
2ページ/3ページ


その魔力と言うのがどれだけ凄いのかは誰も知らない。
しかし、その人物は決まってこうである。
水色の髪、水色の瞳、白い肌、そして消えそうな気配のない存在感…

「…まんまじゃねーか。」

火神はポツリと呟いた。
瞳は見ていないが、水色の髪だし、肌は白いし、おまけに影が薄い。初め気づかなかった位だからなおさらだ。
大我はその頬を静かに撫でた。

「すまない。」

顔を歪めて謝るのには訳があった。
この少年、話によれば幼い頃に浚ってきたそうである…あの部下である島村の命令で。
先ほどにも言ったように魔力を持つ人間は人間として扱われないと言うのが近代である。
孤児院で平和に過ごしていたこの少年、浚われそうになった時に力を暴走させて魔力を消費しすぎたせいで今でもずっと眠ったままの様だ。
力の持ち主であると言う時点で何かあるとは思ったが、余りに酷過ぎる。
日向は父親である王に報告に行っている。
何でもこの事は王にも内密に進行されていたようである。

それもそうだ、こんな事父親が許すはずも無い。
王の息子である火神もまた魔力の持ち主であるからだ。
実のところ、王妃が魔力の持ち主でたまたま次男である火神にも力が宿ってしまったのだ。
そのことは血縁者しか知らない極秘であるのだが、そんな息子がいるのに同じ境遇を持つ子供に手をあげるほど非道な男ではないのだ。

暫く頬を撫でていると、窓からふわりと風が吹き彼の髪を揺らした。
その髪が大我の手に触れた時、そこから光があふれ出す。

「は?え?な、なんだよっ!!」

驚いて手を引くと光はそのまま少年だけを包んでいく。
余りの眩しさに目を閉じてしまったが、大我が光が収まって目を開けようとするのと目の前で眠っていた筈の少年の瞳がゆっくりと開くのとは同時であった。



.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ