長文部屋
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いつも見る黒子とは違う小さな姿に胸がギュッと潰された気がした。
一緒にいた中で、黒子がこんなに泣いている姿を見たことがなかった。
転んで擦り切れて泣いたり、怒られて泣いたこともあるが、すぐに袖で拭って“大丈夫”と言ってこちらを心配してくれる黒子が、ずっと、ずっと泣いていた。
そこでようやく気付いた。
自分たちはなんて無力なんだろう…と。
そして、どれだけ黒子に頼り切って生きてきたのだろうと。
守っていたつもりが守られていた。
泣いている黒子を抱きしめることも出来なかった。
泣き声を聞きつけて来た保育士が黒子を助けてくれたが、キセキ達はしばらくは呆然としていた。
それからは残りの時間をなんとなしに過ごしていた。
別れてしまう悲しさと、情けない自分の感情が交じり合って側にいるけれど上手く関われなかった気がした。
気持ちの整理がつかないまま、黒子との別れの日が来る。
5人で話し合って買ったぬいぐるみを無言で差し出せば、黒子は涙を流しながらも喜んでくれた。
「ありがとう。みんなだいすきです」
そして、黒子は引っ越していった。
名前も知らない街へと…
それからはあっという間だった。
当たり前に保育園に通い、いつもの様に遊んだり給食を食べたり昼寝をしたり。
でも、心にはぽっかりと穴が開いてしまった。
一つのピースが足りないのだ。
少しずつ、5人の表情がなくなってくるのが見て取れた。
それに気づいた5人の母親が7月7日、緑間の誕生日という口実も兼ねてパーティーをしようと集めた。
しかし、そこには黒子はいない。
おまけに外は大雨、気分が萎えるのは仕方ない。
子供たちを置いて母親はおしゃべりに夢中であった。子どもを心配していたのはどうしたんだと言いたい位であるが、5人はそんな事を気にすることもなく外を眺めていた。
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