長文部屋

□Hunting
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「テーツくんっ!」


チャイムが鳴ってほんの数分、黒子に抱き着く桃井に火神は呆れた思いを込めてため息をついた。
昼食中に黒子から聞いてはいたが、迎えに来るのが早すぎないか?
まぁ、そんな事言えるはずがない…というか、言っても聞く耳持たないだろう。
全身からハートでも飛んでいるのではないかという位の熱視線。
その視線の先の黒子は全く分かっていないのか相変わらずの無表情だ。

(前言撤回だな)

お前みたいな奴に惚れる女が…いた。
それも極上物の女である。

「…世も末、だな。」

意味も分からず口からこぼれていた。

「すみません、桃井さん。もう少し待っていてくれませんか?」

「待つ待つ!いつまでだって待ってるから、ゆっくりして♪」

黒子は今、先ほどの授業の見直しをしていた。
わからない所があったようで、もやもやしたまま帰るのが嫌いな黒子は答えを説いてから帰るようである。
まぁ火神にとっては黒子の頑固なところはわかっていたのでいつもは終わるまで待っていたりするのだが、今日は先約がいるのを知っている。なので先に帰ろうと立ち上がっていた。
桃井は火神の横を通り、黒子の前の席…つまり、火神の椅子を使って黒子を嬉しそうに眺めていた。

「……んじゃ、俺帰るから。」

「はい、また明日。」

「さようなら〜。」

黒子は集中すると周りが見えない。
ノートを見つめながらの声のみ。桃井は桃井で黒子を見つめるのに忙しいようでこちらを見ることはない。
さらに重いため息をつきながら火神は教室から去っていった。

それからは火神の様に順々に人が帰っていく。
最後には二人しか残らなくなったのだが、桃井は二人きりが嬉しかった。
昨日から黒子を見ていると心臓の高鳴りが激しい。
そして、見ていると彼の周りがキラキラしているように見える。
側にいるだけで嬉しい、楽しい、苦しい。
全てがごちゃ混ぜになるけれど、こんな間隔初めてで。
この気持ちを教えてくれた黒子に感謝していた。
ほんのちょっとしか関わっていないが、彼の人となりが良くわかった。

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