長文部屋
□for whom 1
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セイリン国
そこは緑に溢れた国、商売も盛んで他国から一目置かれている。
その国を治める王には二人の息子がいた。
長男は時期王として勉学に励み、優秀そのものだったが次男は地位など気にせず自由気ままに生きていた。
「くぉらぁっ!!大我―――――――――!!どこいきやがったぁ!」
セイリン国長男、順平は短い黒髪を振り乱しながら城中を走り回る。
勉学の励みすぎで視力が落ちても、魔力を込めた眼鏡をつければどんな遠いものでも目的のものを見つける事が出来る。
庭の草むらに赤黒い髪を見つけると手元にあった週十億もする花瓶をためらいもなく投げつけた。
「―――おっと!!あっぶねぇなぁアニキ!当たったら死ぬだろフツー!」
「狙ったんだよだぁほ!!ってかサボってんじゃねーよ!死ねこのバカガミ!」
全力で逃げる弟、それを殺す勢いで追いかける兄。
これは毎日のことであり、城の中の誰もが気にも止めてはいなかった。
ただ、城の掃除全般を任されている小金井信二は粉々になった花瓶を見つめて嘆いていた。
「あぁ〜勿体ない〜」
崩れ落ちる彼を幼馴染であり、城全体の装飾を任される水戸部凛之助は隣で慰めるのであった。
本日も平和である。
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「―――まいたか?」
順平の気配を遠くに感じながら大我は視覚からのっそりと出てくる。
「ったく、アニキはいちいちうるせーな。勉強なんて腹の足しにもなりゃしねぇ。」
兄に怒られている理由…それは勉学についてだった。
毎日飽きもせずに家庭教師を呼んでの勉強…大我には苦痛でならなかった。
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