短編
□クリア
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誕生日なんて、あっても無いようなもんだ。
そう、俺は思っている。
【クリア】
8月31日。
朝方からひっきりなしに鳴り響くメールの着信音に青峰大輝は顔をしかめる。
内容なんて分かってる。
今日は自分の誕生日なんだから。
「…うっせーなぁ。寝かせろよ。」
「いいえ、起きてください。」
「うおっ!?テツ、なんでいんだよっ!」
「おばさんが家にあげてくれました。゛あのバカを起こしてあげて゛って。」
きょとんとした目でベッドの縁に立つ男に頭を抱えたくなった。
彼は黒子テツヤ、青峰の幼馴染み。
幼少からの付き合いで、彼といない日は無い位いつも隣にいる。
そのお陰か、友情よりも深い想いを彼は持ち始めていた。
愛しくて、恥ずかしくて、複雑で。
ここ最近、彼を避けていた。
なのに、なのに今、此処に、何故来たんだバカヤロウ。
どうしょうもない胸の高鳴りに気付くはずもない黒子は青峰の手を引いた。