dream
□雨夜の星
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七月七日。
今日は言わずと知れた七夕の日だ。
私たちの学校、天河原中では、エントランスホールに大きな笹が飾られている。
分別がつく年頃になったとはいえ、今日くらいは誰しもが神にすがりつくたくなるのだろう。
落ち着いた萌黄色の笹には赤、青、黄色、さまざまな色紙がぶら下がっていた。
そこには「彼女がほしい」とか、「○○高校に合格する!!」とか、みんなが思い思いに書いた願いが汚い字で書かれていた。
私は密かに思いを寄せている人、星降香宮夜の短冊はないかさがしていた。
彼ならきっと、「宇宙飛行士になりたい」と書いているだろう。
あるいは、「以前のようなサッカーがプレイしたい。」と書いているかもしれない。
彼が本当は真面目で優しい人物だということは私は知っているつもりだ。
普段はクールぶっているが、チームメイトやマネージャーの私のこともちゃんと考えている。
サッカーがフィフスに支配される前の生き生きと走る姿も私はこの目で見ていた。
私はそんな彼のことが好きなのだ。
だから私は彼と両想いになれるよう、短冊に書いて、誰にも目のつかないように、校門が閉まる直前のこの時間にに笹に取り付けた。
まあ、それは叶うはずもない願い事なので、まったく無意味なことなのだが・・・。
やはり人間は神に縋り付いてしまう生き物なのだなあと痛感させられた。
ふいに、思いがけない人物がこちらにやってきた。
「西園寺・・・!」
それは私の思い人、星降香宮夜だった。
「星降君!もうとっくに帰ってるとおもったのに!!」
「西園寺こそ・・・。練習はとっくに終わってるのにどうしたんだ?」
「もしかして短冊をつけにきたのか?」
「それはっ・・・・」
さえぎる前に彼は私の短冊を見つけてしまったようだった。
ああ、私の初恋はここで終わるのね・・・
まあ、ある意味ロマンチックな終わり方でよかったわ・・・。
「西園寺・・・。これ、本当なのか?」
私はおそるおそる彼の顔を見た。
軽蔑されるに違いない・・・。
と思ったが、意外にも彼は髪の毛と見分けがつかなくなるくらい耳まで真っ赤にしていた。
「西園寺。俺もお前のことが前からすきだった。付き合ってほしい。」
彼はいまだに顔を赤らめながら、やや伏し目がちに思いを伝えた。でもきっと、私の方がずっと顔が火照っているだろう。
「はっはい・・・。こここちらこそ、よよ、よろしくお願いいたしますっ。」
緊張のあまり故障した警備ロボットのような喋り方になってしまった・・・。
「ぶっ、お前、そうゆうとこ本当可愛い(笑)」
「・・・・。」
私はさらに顔をゆでだこのように赤らめた。