*Long2*
□となりの彼氏 35
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すらり並んだてんでバラバラの飲み物の種類を見て、
これほど合わないのも珍しいと思うと同時に
頼んだ人柄をそれぞれ表しているようでおもしろいなと思った。
意味もなくストローで中身をかき混ぜれば、カラン、と小気味の良い音がして氷が鳴る。
…オレンジジュースを頼んだ私ははたしてどう見られているんだろう?
ただいま雷門商店街の一角、
喫茶店で女子会中です。
「こないだはお疲れ様」
「まさか名無しさんさんとまた会うなんて思いませんでしたよー」
ふわり、ミルクティーのように優しく笑った秋ちゃんの隣で
案外大人な春奈ちゃんはカフェオレに口をつける。
「しっかりマネージャーしてたって聞いたけど、私も見たかったなぁ」
残念そうにそう呟く冬花ちゃんはアイスコーヒーで、なんだかその組み合わせにしっくりくる。
…あれ、私が一番お子様っぽい、と思ったの
はさておき
前回のびっくり遭遇から数日後、秋ちゃんたちと女子会しようね!と去り際にした約束が
今、こうして実現している。
というのも夏休みが終わってしまったら、皆忙しくなるから、という理由からだ。
それにお互い実家にいる方が距離的にも近い。鉄は熱いうちにうて、なんて言葉があるけれど
再び連絡を取り合った時から、すでに話がまとりかけていて、こうして今日にいたる。
そしてそして今日はなんとあの円堂君の彼女さんにも会える
「それにしても夏未さん遅いですね」
はずなのだけど、残念なことに集合時間から30分が過ぎても一向にその人は現れない。
眼鏡をかけて携帯を睨む春奈ちゃんの言う通り、まだ到着していないのだ。
冬花ちゃんと秋ちゃんも、心配顔で、時間には正確なはずなのに、と言う。
…一体どうしちゃったんだろう、もしかして、今日のお誘い自体、迷惑だったかな、と私も一緒に不安になったその時だった。
春奈ちゃんの携帯が鳴る。
皆でほっとしつつ期待に顔を輝かせてディスプレイを覗き込む。
けれど表示されていたのは
「…鬼道君?」
あ、そういえば春奈ちゃんとは兄弟だったんだっけ。
「はい、もしもし。…えっ、今?」
1人首をかしげた私だったけど、納得する。
それにはかまわず電話に出た春奈ちゃんはなにやら驚いていたようだったけど
うんうん、と話しこんでから私たちに遠慮がちにこう言った。
「あの…、今から河川敷にこないかって」
えっ、という顔をしたのは私だけで、
後の2人は「サッカーしてるのね」と少し呆れたように笑った。
「でも夏未さんが来てないからいけないわ」
秋ちゃんが言う。
けれどそれに対して春奈ちゃんはちょっと苦々しい顔で
「すでに円堂さんが連絡してるそうです」と
間髪いれずに答えたから
もう本当に皆準備がいいというかなんというか…
「サッカー好きだねぇ…」
あはは、と少しぬるくなりはじめたジュースをすすれば皆して笑った。
どうやら今日の女子会はサッカー観戦になるみたい
うーん、でもそこでもゆっくり話ができればいいや!
「あ、風丸さんもいるみたいですよ」
今から行くね、と言って手早く電話を切った春奈ちゃんだったけど
最後に思いだしたように私にそう言うとなぜだかうふふと笑った。
「…あ、そうなんだ」
今の間は何ですか?なんて質問には
絶対答えないっ