*Long2*

□となりの彼氏 34
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それでもさすが世界の舞台で戦っただけあるプレイヤーと言うべきなのか?
…いや、この場合なんだろう
やっぱり単にお酒に強いというかなんというか

時間になれば皆立ちあがって「花火だーっ!」なんて言って元気よく叫んで…
ううん、酔っ払って叫んでいるのだから立派だ。

マネージャーの秋ちゃんはちょっとだけ疲れたように笑っていて、
春奈ちゃんは眠そうに目をこすってたけど。
試合の時はいなかった冬花ちゃんは、打ち上げから参加したのだけれど
エドガーさんをかわすので疲れたんじゃないかなぁと思う。

多分それを助けた吹雪君は影のヒーローだ。


「Wow!!これがJapaneze Matsuri!!」


きらきらとした瞳、はサングラスで見えないディラン君だけど
その他海外組の皆は子供のように無邪気に屋台を見つめている。
綿あめをおそるおそる、
でも楽しげにほおばるフィディオ君はちょっと可愛らしかった。

ぞろぞろと、何でも花火を見るには絶好のスポットがあるそうで
屋台の群れをぬけて気持ちの良い風が吹き抜ける河川敷の道を歩く。

私たちは最後尾で

前を行く吹雪君、基山君、不動君に佐久間君の後を
すこぅし遅れながら風丸君と歩いて行っている。


「名無しさんちゃんは、風丸君のこと頼むね」


僕はこの3人を見てるから、と言って
先ほど席を立てば甘く、でもどこかいたずらっぽく微笑むとさっさと歩きだしてしまった。

「ふぶきぃー」と唸る風丸君だったけど
どうやら相当飲まされていたらしい。吹雪君に。

ちなみに基山君も吹雪君に飲まされた口らしく、
その頃には復活し始めていた佐久間君が教えてくれた。

…吹雪君、でもそんな貴方を嫌いになれないのは何ででしょうか


「…大丈夫?」


ぐらり、時折揺れる体に控えめに手を差しのべながら
珍しくぼぉーっとしたお隣さんに声をかける。

眠たげな目がこちらを見ると
同時に眉をさげた。


「…大丈夫、さっきよりは」


そうして顔を覆うと「かっこ悪」と呟くのが聞こえた。


かっこ悪いっていうか…
正直なところは


「なんか艶っぽい?」

「え?」

「な、何でもないっ」


うっかり心の声がこぼれてしまったっ
…聞こえてないといいんだけど

とは言いつつも、それは本心なわけで。


夜風に吹かれながら、まだ少し赤い頬とけだるげな様子は
普段の爽やかなかっこよさに一種の艶を与えていて、
とても大人びて見えるのと同時に、綺麗なのにやっぱり男の人だなぁと思った。

佐久間君の色気もすごいけど風丸君のはなんか違う。
佐久間君はもう少し危険で妖しいというかなんというか。
風丸君はどこか潔い感じ。


「…試合だって、もっといいとこ見せたかったし」

「え?」


ふと横顔を伺いながら考えていれば、おもむろに放たれた言葉によって
今度は私が聞き返した。

聞こえているのかいないのか、
彼はその先を言おうとしない。

The酔っ払い。
こういう時は対応に困るな、と苦笑する。

でもな、


前の方では楽しそうな笑い声が聞こえる。
遠くに見える屋台の光がうすぼんやりとオレンジ色の光を放っていて
暑い空気は今は穏やかに私たちを包んでいる。
河原に光る月の光と祭りの賑わいは綺麗で

心地よい夏の夜。


隣では好きな人が歩いてる

それだけでもう、充分満ち足りている。

足元に転がった石を優しく弾いてこっそり笑った。
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