*Long2*

□となりの彼氏 28
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ぱちぱちとはぜる火の玉は
橙色から黄色に色を変えながらじじじと踊る。

それに「綺麗!」と声を上げながら女子皆で笑っていると
ここでも恋話が浮上した。


「で?名無しさんの本命は誰なん?」

「本命っ!?」


びっくりした私の手からぽとり、花火が落ちる。
暗くなった手元とは逆に、リカちゃんの顔は明るくめちゃくちゃにやにやしていた。

「あ、それは私も気になってました!」なんて春奈ちゃんも元気よく手をあげる。



女子が集まると結局こういう話になるのかぁ

なんて思いながら苦笑する。


「豪炎寺か?それとも風丸かっ?」


ぐいぐい来るリカちゃんは
大阪出身だけあって押しが強いっ


「え、修也はともかく何で風丸君」

「そんなん見てればわかる!」


はっきりと言いきられてどきっとする。
恋のスペシャリストというのは自称だよ、って塔子ちゃんが言ってたけれど
もしかしたらリカちゃんは本当にスペシャリストなのかもしれない。
…その妙な迫力も含めて。
っていうか修也のことは吹雪君にも聞かれたよ


「え、えっと修也は単なる幼馴染で…」


新しい花火を取りながらそう言えば、「ちぇっ、つまらんなぁ」と
あからさまにリカちゃんはがっかりした。


でもその隣塔子ちゃんが屈託のない様子で
「じゃあ風丸はどうなんだ?」と聞く。


「え、風丸君は…」


はい、好きです。
なんて言えないよぉおっ


一瞬の言葉の淀みが少しの間をうんだ。


そうして無難にアパートが隣で、なんて言ったら
案の定本当にぃー?というに疑惑とどこか楽しげな笑顔が四方八方から飛んでくる。


「ほ、本当に!」

「でも仲良さげでしたよねぇ」

「まぁ、でもマックス君と半田君とも仲良いし」

「中学時代から風丸さん知ってますけど、
あんなに女子と打ち解けてるとこ見たのは初めてですよぉ」

「春奈ちゃん、名無しさんちゃんが困ってるでしょう」


苦笑しながら秋ちゃんが助け舟を出してくれる。
秋ちゃん、本当に貴方って人は…っ!


…でも、春奈ちゃんの言葉って本当かな


ぱちぱち、再び明るくなった手元を見つめる中
静かに、だけど確かに心臓が鳴ったのがわかった。



夜になってから時間はどんどん過ぎて行く。



「あら、花火もこれで最後みたい」


冬花ちゃんがそう言ったのを最後に
皆でまた元のたわいもない話だったり、今日のバーベキューの出来事を話し始めて
夏の日を彩った。


ちなみにまだ聞き足りなそうなリカちゃんと春奈ちゃんの視線は
ずっとスルーしていたのは言うまでもない。
 

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