IS 〜天使の翼〜

□第7話
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誘拐事件から三年後 大西洋深海秘密基地

ソラは事件後、束のところに行き聖天使の改造をしていた。

「よし……これで完成!!」

三年という歳月を掛けてシステムの修正・武装の改造を終えて、ソラは達成感を感じながら椅子に腰かける。

(ふぅ、思ったより時間かかちゃったなぁ……)

「ソラちゃん!お腹減ったよ〜!! 」

「あ、はーい!」

集中して作業をしてたからいつの間にかもうお昼になっちゃった。束お姉ちゃんが待っているからすぐに作らないと!

ソラは椅子から立ち上がり、キッチンへ向かう。

「くーちゃん、何が食べたい?」

「なんでも――」

「なんでもいいが一番困るんだよ〜」

「………」

くーちゃんが黙っちゃった……。私は冷蔵庫の中身を確認する。

「そうだね……玉子が余っているから、オムライスにしようか。くーちゃんも手伝ってね」

「はい、わかりました」

くーちゃんは最近から一緒に料理し始めて少しずつ上手くなっている。

(くーちゃんが最初に作った料理は……凄かったなぁ……)

パンとスープを作ったらしいけど、出てきたのは消し炭と七色のゲル状物体。
束お姉ちゃんは平気な顔で食べてたが私は一口で意識を失い、一週間ほど寝込んだのは今でもよく覚えている。

「束お姉ちゃん、出来たよ!」

「待ってました!ご飯は何?」

「オムライスだよ。くーちゃんも頑張っていたよ」

「そんなこと無いです……ソラ様の足手まといでした……」

「そんなこと無いよ。くーちゃんは少しずつ上手くなっているよ」

「二人とも、早く早く!食べようよ!!」

「「「いただきます」」」

「うん、ソラちゃんの料理は本当に美味しいね!毎日食べてても、全然飽きないよ!!」

「私だけじゃなくて、くーちゃんも褒めてね。あっ、束お姉ちゃんも料理やってみる?」

「わ、私は……ちょっといいかな〜。それよりニュースだよ!大ニュースだよ!!」

「一体どうしたんですか?束様」

「おっ!?くーちゃんも気になる?ソラちゃんはどう?」

「束お姉ちゃんがそこまで言うなんて何があったの?」

「実は……なんと、なんとね!いっくんがISを動かしたんだよ!!」

「「えっ!?本当!?(ですか!?)」」

「うん、本当だよ」

「でも……どうしてですか?ISは本来男性には反応しないはずですよね?」

「うん、私も詳しく調べて無いからまだよく分からないだよ。――ところで、ソラちゃん聖天使はもう完成した?」

「えっ!?うん、システムも武装も完成したけど?」

「じゃあさ……午後から束さんのお手伝いしてくれないかな?」

「まさか……一夏君のIS?」

「ぴんぽーん。さすがソラちゃん、今日も冴えてるね!!くーちゃんもよろしくね〜」

「はい、わかりました」

「それで……何時まで作ればいいの?」

「そうだね……日にちはまだまだあるけど来週にはソラちゃんが居ないからな〜」

「えっ!?私どこかに行くの?」

「じゃじゃあ〜ん♪これな〜んだ?」

束お姉ちゃんはどこからか白がメインの服を出した。

「制服……ですか?それ?」

「ぴんぽーん!ソラちゃんには学校に行ってもらうよ〜」

「ちなみに聞くけど、どこの学校?」

「うふふ……IS学園だよ」

「やっぱり……。そういえば、確か……千冬お姉ちゃんと箒ちゃんがいるね」

「それにいっくんも入学することになっているよ!」

束お姉ちゃんは私を学園に入れる気満々だけど、私には一つ問題がある……

「でも、束お姉ちゃん。私……中学校いってないよ……」

(というか小学校すら卒業してないんだけど……)

「あっ……」

それから束お姉ちゃんが私の履歴書を捏造してIS学園に入学できるようにしたらしい……




【IS学園――正式名 IS操縦者育成特殊国立高等学校】

ISの操縦者育成を目的とした教育機関であり、その運営及び資金調達には原則として日本が行う義務を負う。ただし、当機関で得られた技術などは協定参加国の共有財産として公開する義務があり、また黙秘、隠蔽を行う権利は日本には無い。また当機関内におけるいかなる問題にも日本は公正に介入し、協定参加国全体が理解できる解決をすることを義務づける。入学に際しては協定参加国の国籍を持つ者には無条件に門戸を開き、また日本での生活を保障すること。
                      IS運用協定 IS操縦者育成機関についてより抜粋




(ヤバイ……とってもヤバイ……。入学初日から遅刻するなんて……)

そして私は今、タクシーでIS学園に向かっている。
束お姉ちゃんの手違いで入学式の時間を間違ってしまい現在進行形で遅刻している。

(まあ……連絡したからなんとかなる……かな?)




IS学園正門前

私、織斑千冬は義妹が来るのを待っていた。あの誘拐事件後ソラは束のところに行き、もう3年くらい会っていない。先週のある日、珍しく束から電話が掛かってきた。電話の内容はソラをIS学園に入学させてほしいと言うことだった、私自身もソラに学生生活を送ってほしいので了承した。

「それにしても……遅いな」




「お客さん、1790円になります」

「はい、ありがとうございました」

(ふぅ、やっと着いた。時間は……入学式の終わり頃かな?)

「さてと……誰か居ないかな?あ、あの人は……千冬お姉ちゃん!?」

門の前にはスーツ姿の千冬お姉ちゃんが居て、むこうもこちらに気が付いたようだ。

「やっと来たか……久しぶりだな、ソラ」

「うん……久しぶり千冬お姉ちゃん!」

「あまり時間が無いから歩きながら話すぞ、あと学園では織斑先生と呼べ。いいか星神?」

「はい、織斑先生」

「それでいい……足の具合はどうだ?」

千冬お姉ちゃんは私の歩幅に合わして、早過ぎず遅すぎないスピードで歩く。

「杖を使えば歩けるけど……階段は無理です」

「車椅子は使わないのか?そっちの方が楽だと思うのだが?」

「はい……確かに車椅子は楽だけど……出来れば自分で歩きたいので」

「……分かった。移動の時はエレベーターを使うといい。それと……ISは持ってきたのか?」

「うん、ほら」

私は千冬お姉ちゃんに聖天使の待機状態の指輪を見せると難しい顔になった。

「しかし……使ったら他の奴らにばれるぞ」

「大丈夫だよ、元々ばらすつもりだから。流石にIS学園に居ればいきなり奪いの来るとは思わないし、委員会が渡すように言ってきても黙らせるから」

「はぁ……面倒なこと起こすなよ」

「はい、善処します」




それから私は千冬お姉ちゃんのあとについて行き教室の前に着いた。

「1年1組?」

私は教室にかけられているプレートを見る。

「そうだ、このクラスだ。私が呼ぶまで待っているんだ」

「はい」








「皆さん、SHR始めますよー」

黒板の前でにっこりと微笑む副担任の山田真耶先生。

「それでは、一年間よろしくお願いしますね」

「「「「「……」」」」」

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」

うろたえながらも進めていく副担任の山田先生かわいそうに……

だが、しかし……

(これは……想像以上にキツイ……)

クラスメイトほぼ全員からの視線を感じる。それにしても、席が悪すぎる……。よりによって真ん中の最前列とは……

チラッ プイッ

「………」

一夏は救いを求めて窓側の席にいる幼なじみの篠ノ之箒を見る。しかし、視線に気づき窓の外に顔をそらした。

(なんて薄情な……)

「……君。織斑一夏君っ」

「は、はいっ!?」

俺はいきなり大声で呼ばれて思わず声が裏返ってしまった。

「あっ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる?怒ってるかな?ゴメンね、ゴメンね! でもね、あのね、自己紹介、『あ』から始まって今『お』の織斑君なんだよね。だからね、ご、ゴメンね?自己紹介してくれるかな? だ、ダメかな?」

「いや、あの、そんなに謝らなくても……っていうか自己紹介しますから、先生落ち着いて下さい」

「ほっ、本当?本当ですか?やっ、約束ですよ。絶対ですよ!」

(うわっ……)

今まで背中に感じていた視線が一気に向けられている。

「えー……えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

――ちょっと待て、「もっと色々喋ってよ」的な視線と、「これで終わりじゃないよね?」的な空気はなんだ。

「……」

(えっ……言うこともう無いんだけど……)

だらだらと背中に流れる汗を感じる。どうしたらいい?何を言えばいいんだ!

「……以上です」

ガタタッ

期待外れの終わりだったため、思わずずっこける女子が数名いた。

「あ、あのー……」

パァンッ!

「いっ――!?」

この叩き方、威力、角度、速度といい。とある人物を思い出す。

「………」

おそるおそる振り向くと、そこにいたのは……

「げえっ、関羽!?」

パァンッ!

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

また叩かれた。威力はさっきより上だ……って周りの女子が若干名引いている。
いや、待て。何で千冬姉がここにいるんだ?職業不詳で月一、二回ほどしか家に帰って来ない俺の実姉は。

「あっ、織斑先生。用件は済みましたか?」

「ああ、山田君。クラスを押し付けて済まなかったな」

「い、いえっ。副担任ですから、これくらいはしないと……」

「――諸君、私が織斑千冬だ。君達新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな?」

「キャーー!!千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!」
「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」
「私、お姉様のためなら死ねます!」

女子達の黄色い歓声が教室中に飛び交い、千冬は頭を抑える。

「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる……。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

「きゃあああっ!!お姉様!もっと叱って!罵って!」
「でも時には優しくして!」
「そして付け上がらないように躾をして〜!」
「あっ、言葉だけで濡れてきちゃった……///」

(おい!?最後の奴、ヤバイぞ!!)

「で?挨拶も満足にできんのか、お前は」

「いや、千冬姉、俺は――」

パァンッ!

「織斑先生と呼べ」

「……はい、織斑先生」

「えっ……?織斑君って、あの千冬様の弟……?」
「それじゃあ、世界で唯一男でISを使えるっていうのも、それが関係して……」
「ああっ、いいなぁ!代わってほしいなぁ!!」

「さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。 いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

(おお、なんて横暴な鬼教官。目の前の姉は人の皮を被った悪魔だな……)

「織斑先生、質問で〜す」

「布仏、どうした?」

「私の隣の席、空いているんですけど〜?」

「ああ、入学式に間に合わなかった生徒だ。紹介する。星神、入ってこい」

「はい、失礼します」

ガラッ

「星神さん、自己紹介お願いします」

「はい、星神ソラです。特技はパソコンと料理とお菓子作りです。よろしくお願いします」ニコッ

「「「「かっ……かわいい!!!」」」」
「何あの子!?めちゃくちゃかわいいわよ!!」
「お人形みたい!!」
「撫で撫でしたい!!」

ガタッ

「……ソラなのか?」

俺は今、物凄く驚いてる。あの誘拐事件の後、病院からが退院したら、リハビリのため旅に出るとか言ってきて結局止めることも連絡先も教えてもらうことも出来ないまま行ってしまい、行方不明だった家族が目の前にいる。

「久しぶりだね、一夏君」

「ああ、久しぶり――って色々聞きたいことが――」

「一夏君、頭上注意」

「――えっ?」

パァンッ!

一夏はソラの言葉の意味を気付けず、出席簿に叩かれる。

「席に着け、馬鹿者」

「先生、私の席はどこですか?」

「ここだよ〜」

だぼだぼの制服で手を振る生徒がいた。

「彼女の隣です」

「分かりました」

(窓側で後ろの席か……寝心地良さそうな席だね)

「私は布仏本音だよ〜。本音でいいよ〜。え〜と……星神だからほっしーだね。よろしくね〜」

「よろしくね、本音ちゃん」

差し出された手を握り、挨拶をする。

(良い友達になれそう。後で、一夏君に挨拶に行こう)

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