IS 〜天使の翼〜
□第3話
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「ちーちゃん!この娘、私に頂戴!!」
「誰がお前に渡すか!!」
千冬はふざけた束を黙らせるために腕を伸ばしアイアンクローをしようとする。
「なんのっ!」
束は捕まえられる寸前で腕を避けアイアンクローを回避した。
「ふふっ。甘いよ、ちーちゃん!くれないならソラちゃんをお嫁さんとして貰うから!!」
ブチッ
「ほう、お前がソラを嫁として貰うだと?」
「あっ、もしかしてちーちゃん。嫉妬しちゃった?」
ブチッブチッ
千冬は我慢の限界を越え怒りが爆発し、顔は般若へと変化した。
「束ぇぇぇ!!」
(うわぁ……。あそこまで怒った千冬お姉ちゃん初めてみた……。さすがの束さんでもあれは無理だよ……)
ソラは数歩後ろに下がり、被害の受けないところから束を哀れんでいた。
「死ねぇぇぇ!!」
再び千冬はアイアンクローを決めるために腕を伸ばした。
「それはもう、見切っているよ!ちーちゃん!」
(あっ、また避けた……?)
束は先程同様捕まえられる前に避けて回避する。
「甘いぞ束!!」
「――えっ!?ぐえっ……」
ちょうど束が避けた先には千冬腕が待ち構えていて束の首に渾身の一撃が決まった。
(な、なんてパワー……。アイアンクローを避けた所に、もう片方の腕でラリアットなんて……。凄い勢いで壁に減り込んだけど、生きてる?)
なぜこうなったと言うと……
ある日、箒ちゃんが一緒に練習しようと誘ってくれて、休日にすることになり道場に行く事になった。
道場前の階段を上っていたら一枚の紙が落ちてて、拾って見てみると両面びっしりと隙間なくプログラムが書かれていた。
(これって、プログラムだよね?でも――)
ソラは持ち主が居ないか辺りを見回すと、セーラー服を身に纏い頭にはウサミミ?を付けている人がじいーっとこちらを見ていた。
(無い無い!何処にも無いっ!!)
束は家の自室で鞄や机の上など手当たり次第に探し物をしていた。
「はぁ、どこにも無いよ……。あーあ、もう少しで完成なんだけどなぁ……私、あの紙どこやったんだろう?」
結局、部屋の荷物を全てひっくり返しまで探したのだが見つからなかった。
束は後悔と無気力でテンションが奈落の底へと落ちて行き、荷物が乱雑に置いてある床に力無く座った。
(ああ!こんなことならコピーしとけばよかったのにぃぃぃ!!はぁ……部屋には無いからやっぱり外かな?でも、一体どこに……学校は絶対ありえないし、ちーちゃんの家は最近行ってないし、あとは……落としたのかな?)
「……あ、さっき階段で鞄落としたんだ!もしかしてその時に、うんうん!それしかない!!」
束は慌てて部屋から出て行き、一目散に階段に向かった。
「確かここら辺だったはずなんだけどな……」
(ん?あの子が持っている紙って……まさか!?)
束は階段の途中で紙を持っている女の子を見つけ声をかけた。
「そこの子、ちょっといいかな?」
「はい、どうかしましたか?」
「君の持っているその紙、私のなんだ。返してくれる?」
「あっ、はい。どうぞ」
束はソラから紙を受け取り無事を確認していた。
(ふぅ、見つかってよかった)
「拾ってくれてありがとうね。じゃあ」
束は用が済んだらすぐ部屋に戻ろうとした。
「あっ、あの!」
「ん?まだ何かある?」
「そ、そのプログラムなんですが間違っていますよ」
「えっ!?そんなはず無いんだけど……」
束は紙を広げて改めて目を通し確認する。
「えーと、ここのプログラムと、ここのプログラムが矛盾しているからこのままだと動作不良を起こすと思います」
「…………」
束はソラが指を指して教えてくれたところをじっと見てみる。
「あっ、あの〜?」
「君、名前は?」
「あ、星神ソラです」
束は名前を聞くと何かを思い出したようで確かめるように名前を聞き直した。
「あれ?星神ソラって言った?」
「はい、そうですけど……」
「そっかぁ!君がちーちゃんの言っていた、ソラちゃんかぁ!」
「もしかして……ちーちゃんって、千冬お姉ちゃんのことですか?」
ソラは首を傾げながら束に聞く。
「うん、そうだよ。千冬だからちーちゃんなんだよ。ところで、ソラちゃんはこの紙の内容を理解出来たの?」
「はい、思考プログラムですよね」
「正解だよ。それにしても束さんでも気づかなかったところをよく見つけたね」
束はソラを「偉い偉い」と頭を撫で下ろす。
(この子は私よりも出来る……)
「――ねぇ、ソラちゃん。これから暇?」
「ごめんなさい、これから箒ちゃんと練習あります」
「そっかぁ……それじゃあ!帰るときに私の部屋にきてね!」
束は先に先客がいることを知ったら一瞬がっかりするがすぐに持ち直した。
「あっ、貴女の名前は?」
「私は篠ノ之束、みんなのアイドル、ラブリー束さんだよ。じゃあまたね♪」
束はソラへとびっきりの笑顔で自己紹介をして、部屋に帰っていった。
ソラと箒は道場に入ると早速練習するために胴着に着替えていた。
「そういえば、箒ちゃんのお姉さんって個性的だよね」
「なっ!?どうしてそれを!」
「さっき、神社の階段のところで会ってね」
「そうか……姉さんが済まなかった。多分、悪気は無いと思うから許してやってくれ」
突然、箒ちゃんは着替えの手を止めて謝ってきた。
「えっ!?どういうこと?」
「いや……姉さんがソラに酷いこと言ったんじゃ無いのか?」
「いや、別に酷いことなんて言ってないよ」
「そうか……なら良いんだ。――さて、ソラ。そろそろ練習始めようか」
「うん、そうだね」
竹刀を持ち、二人は練習を始めた。
1時間後、道場の縁側に座り休憩をとる。
「ところで箒ちゃんって、何で剣道しているの?」
ソラは体をストレッチしながら聞く。
「ふむ、そうだな……家柄だろうな。親もやっているし道場もあるからな。ソラは何でだ?」
「う〜ん、護身術のためかな。でも、極力使わないつもりだけどね〜」
「何故だ?ソラならもう大会に出れるレベルだぞ」
確かに私は一夏君や箒ちゃんとの練習で強くなっている。
「でもね、大会には興味無くてね。それに……」
「それに?」
「ただ力を振り回すのは暴力でしかないから……」
私は遠く空を見ながら呟いた。
「ソラは強いのだな……」
「さあ!休憩はおしまい。練習しよう!」
竹刀を持ち、二人は夕方まで練習した。
「あれ?千冬お姉ちゃん?」
箒ちゃんとの練習を終えて束さんの部屋に向かったら、部屋に入ろうとしている千冬お姉ちゃんを見つけた。
「ん?ソラじゃないかどうした?」
「束さんに呼ばれてね」
「はぁ……またアイツか」
千冬お姉ちゃんはため息を吐き、頭を抑えながら部屋にのドアを開けた。
「やあ!やあ!いらっしゃっい!二人とも」
束さんが元気よく迎えている。
「で、束。 呼んだ理由はなんだ?」
「ちーちゃん、この娘頂戴!!」
そして、冒頭にもどる……
「それで結局、用件はなんだ?」
千冬お姉ちゃんは壁にめり込んでいる束さんに聞く。
「ふっふっふ。簡単だよ――世界を変えよう!!」
束さんは壁から勢いよく脱出して私達に宣言した。