IS 〜天使の翼〜
□第2話
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平日の朝
「千冬お姉ちゃん、朝だよ。起きて!」
「ん……あと1時間……」
ソラは千冬を起こすために声をかける。
しかし、千冬は反対側に寝返りをかき全く動かない。
「駄目だよ、遅刻しちゃうよ!」
……駄目だ、完全に起きない。こうなったら、千冬お姉ちゃんから布団を取り上げる。
「おはよう、千冬お姉ちゃん」
「ん……おはよう」
千冬は布団を奪われると目を擦りながら身体を起こす。
そして――
チュッ
朝の恒例、ソラの頬にキスをした。
初めの頃はソラが恥ずかしいからやめるように頼んでいたが、ソラ成分を補給していると真顔で言ったため本人が諦め恒例化した。
「ご飯出来てるから、すぐ来てね」
「ソラ、千冬姉は起きたか?」
「うん、起こしたよ」
千冬を起こし、下に降りると一夏が朝食をテーブルに運んでいた。
「やっぱり、ソラが起こしに行った方がいいな。俺じゃあ全然起きないからな」
「そんなこと無いよ」
「いや、ソラの方が――」
「おはよう、一夏」
「おはよう、千冬姉」
千冬が下に降りてきて、テーブルに座る。
ご飯は必ずみんなで食べる。
これが織斑家のルールだ。
「「「いただきます」」」
「ん?この卵焼きは誰が作ったんだ」
千冬は卵焼きを一口食べると聞いてきた。
「あ、それはソラが作ったんだ」
「そうか、ソラはもう立派な嫁になれるなぁ……」
千冬お姉ちゃんが真顔で呟いた。
「いやいや!?小学生で嫁入りは無理だよ!」
「(ソラが嫁入りかぁ…………うん、絶対に嫌だな。ソラは誰にもやらん!!)」
「(ソラが嫁さんかぁ…………欲しいな。もし、変な奴が来たら絶対に守る!!)」
千冬と一夏は箸を止め、本人が気づかないよう心のうちで決意を固めた。
ん?なんだか二人の様子がおかしい……?
ソラは二人の箸が止まってる事に気付き不思議に思うが、ふと時間が気になり時計を見た。
「えっ!?二人とも時間が無いよ!!」
「「えっ……?」」
千冬と一夏はソラの声に反応し、自分達も時計を見る。
時刻は八時を回っていた。
「ま、マズイ!今日は日直だった!?先に出る!行ってきます!」
「「行ってらっしゃい」」
一夏とソラは家から出ていく千冬に声をかけるが自分達も時間が余り無い。
「ソラ!俺達もすぐに行くぞ!!」
「ま、待ってよ〜!」
ソラが織斑家の家族に入り一番最初に思ったこと、それは――朝が慌ただしい……。
織斑家から歩いて十分、小学校に来ていた。
身分を証明する物が無く、住民票すら存在するか分からないが私は学校に行けるようになっていた。
なんでも、千冬お姉ちゃんが友達に頼んだらしい。
詳しく知らないけど色々と凄い人らしい。
学校では私は転校生という扱いになった。ちなみにクラスは一夏君とは同じクラスだった。
転校初日から質問責めで大変だった(主に容姿のせいで)、けど一夏君のおかげでクラスに溶け込むことが出来た。
一番の友達は一夏君の友達でもある篠ノ之箒ちゃん。
「ソラ、放課後はどうするのだ?一夏は道場に行くらしいぞ」
一夏君と箒ちゃんは篠ノ之道場で剣道を習っている。
「そうだね、たまには行こうかな?」
「よし。それでは行くぞ!」
道場に行っても私は二人が練習しているところを見ているだけであった。
「なあ、ソラは剣道やらないのか?」
「ああ、それは私も思った」
あ、二人とも私に剣道を勧めてきた。
「そうだね。やってみようかな?」
「「本当か!?」」
二人は嬉しそうに聞き直してきた。
「……けど、私は初心者だから手加減してね」
「「ああ、分かった」」
こうして、私も剣道をやる事になった。
「はぁ、はぁ…… 初心者にいきなり面打ってくる人、初めて見たよ。人の話をちゃんと聞いていた?」
「「ゴ、ゴメン!!」」
一時間一通り最低限のことを教わったら、試合をする事になったのだが二人は手加減無く竹刀を振るってきた。
「はぁ……まぁいいよ。そこそこ楽しかったし、これからも続けようかな。ところで一夏君そろそろ帰って夕飯の支度しないといけないよ」
時刻は5時過ぎ、千冬お姉ちゃんがもう少しで帰ってくる。
「あれ?もうそんな時間か。箒、また明日な」
「バイバイ、箒ちゃん」
「ああ、二人ともまた明日」
道具を片付け、家に帰りすぐに夕飯の支度をする。
「一夏君、夕飯は何が食べたい?」
「そうだな……昨日は魚だったし、一昨日はハンバーグだったからな。今日は中華を食べたいな」
冷蔵庫の中身を確認して作れる料理を考える。
「それじゃあ、チャーハンと餃子にしようか。私が餃子を作るから、一夏君はチャーハンを作って」
「了解」
調理開始から二十分
ソラは具を餃子の皮で包んでいた。
(あっ!?お風呂するの忘れてた……)
「一夏君そっちは出来た?」
「ああ、出来たぞ。そっちは?」
「これから焼くところだよ。後は私がやるから一夏君はお風呂の支度をして」
「ん、了解」
さて、千冬お姉ちゃんが帰ってくる前に焼かないと。
「ただいま」
焼き終わり皿に盛り付けていたら、ちょうど千冬お姉ちゃんが帰ってきた。
「おかえり、千冬お姉ちゃん」
「おかえり、千冬姉」
「一夏にソラただいま」
さてと、みんな帰ってきたからご飯だね。
「「「いただきます」」」
「んっ!このチャーハンは一夏が作ったな。また、腕を上げたな。この餃子はソラだな、もう店に出しても良いレベルだな!」
お腹が空いてたのか千冬お姉ちゃんは次から次へと口の中に頬張っていった。
「それより、千冬姉。今日、道場で練習していてソラも途中から練習に入ったんだ。それでソラもこれから剣道することになったんだ」
「ほう、ソラが剣道か私は応援するぞ」
「ありがとう、千冬お姉ちゃん」
「なに、ソラだったらすぐ強くなれるさ」
「なっ、なら俺も強くなる」
「ふふ、それじゃあお互い強くなったら勝負しようね!」
「ああ、負けないぜ!」
「私だって負けないよ!」
こうして、雑談を交わしながら夕飯を食べていった。
夕飯を食べ終えると片付けを始める。
ソラは皆の食器を運び、スポンジを手に取る。
「ソラ、風呂に入るぞ!」
洗い始めようとしたら千冬がお風呂に誘ってきた。
「えっ?でも、まだ片付け終わって無いよ」
「たまには一夏に任せとけ」
「ああ、毎日ソラが片付けしているから、入っていいぞ」
「うん、分かった」
ソラは一夏に片付けを頼み、千冬と一緒にお風呂に入って行った。
「ソラの髪は綺麗だな」
私達はお風呂に入り千冬お姉ちゃんが私の髪を慣れない手つきだが丁寧に洗っている。
「そうかなぁ?千冬お姉ちゃんの髪も綺麗だと思うよ」
「ふふ、ありがとう」
髪と身体を洗い、二人は湯舟に浸かる。
「はぅ、お風呂は人類の宝だねぇ〜」
「相変わらずの、風呂好きだな」
風呂に入ってるソラはいつもより機嫌が良く、軽く表情も蕩けていた。
「うん、気持ち良いもん♪」
ドキッ
「(な、なんて可愛い笑顔なんだ!)」
ソラが普段する笑顔とはまた一味違う可愛らしい笑顔を見て、千冬は鼻を押さえながら心の中で叫んでいた。
「千冬姉、ソラ、そろそろ上がってくれ」
「あ……ああ、分かった。ソラ、上がるぞ」
「はーい」
一夏の声で千冬は我に返り、ソラと一緒にお風呂を上がった。
それから私達はテレビや雑談などして寝た。
これで織斑家の1日が終わる。