進撃の巨人

□破壊の右手
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「傷の男(スカー)?」

「はい。近頃セントラル付近に顔に傷のあるイシュヴァール人の男が出現し、手練れの錬金術師を殺害していく事件が起こっております」

「何でまた錬金術師を…?」

「殺害された錬金術師は、どの方もイシュヴァール殲滅戦に出た錬金術師です」

「なる程、イシュヴァール人か…分かった。しばらくは気をつけるよ」

急にセントラルから始まったって?そうなんですよ。こっちはこっちでほっておくと仕事が溜まっていって……仕方がないんで監視付きで此方の世界へ帰って来ることが許されたんです。あ、兵長からちゃんと許可貰ってます。毎回確認だそうで。

久しぶりに帰って来たらまあ仕事が山積みだった訳で………今の状況に至るのですが……。

「准将は特に気をつけてください。只でさえ色んな地方へ仕事へ行かれているんですから」

軍の中で私は地方へ派遣されその土地の税金の確認や東西南北の軍の軍事情報を取り締まりをしているらしい。大方ラース…キング・ブラッドレイがもっともらしい理由を考えたんだろうが。

「分かった。他に報告は?」

「後は……鋼の錬金術師殿がセントラルへいらしています」

「また鋼か…………なんでこう被るのかな…それで?」

「鋼の錬金術師殿も最近傷の男と接触し、交戦しました。傷の男は現在逃亡中です」

「どうせエドワードは生きているんだろう?次は何をしているんだ」

「今は……アームストロング少佐の部下が付いているので安心だとは思いますが……」

「ならいいや。報告ありがとう」

「いえ、では失礼しました」

一度頭を下げると静かに部屋を後にした。話が終わり訪れた静寂の中、新緑色のフードを被った人物が声を発した

「あの…名無しさん?私は話聞いてても良かったの?」

「仕事に支障はありません。あなたは此処の世界の人間ではありませんからね。此処の人間にさえ話さなければ問題ありませんよペトラさん」

黙々と書類に目を通し確認のサインを書いていく。ペトラさんはフードを深く被り椅子に座っているが、これにもちゃんとした理由があるのだ

本来世界間の行き来はタブー。そんなことをできる人物は私しか居ない

ドッペルゲンガー、とは自分そっくり、瓜二つの自分が存在すること。世界を行き来することで気づいたのはそのことだった。どの世界にも一人ずつ自分そのものが存在する。だからバッタリ会ってしまうとややこしくなる可能性があるのだ。そのための、対処法は………

「顔を見られなければ大丈夫って………」

「本当ですよ。相手を認識しなければ良いんです。」

相手を“自分”だと分からなければ良い。それなら顔を隠せば良い。単純だがこれが一番効率的だと思う。それに必ず会うとは限らない。

「エドワードが傷の男と交戦………狙われるのは錬金術師。見境なくか。」

たちが悪い。イシュヴァール殲滅戦に出ていた錬金術師ならともかく錬金術師と言うだけで襲われるのだから。

「一度エドワードに情報収集に行くか。ペトラさんどうします?ここに残りますか?」

「わ、私も行くわ!兵長からあなたの監視を頼まれてるもの!」

「ふーん……分かりました。じゃあ一緒に行きましょう。」

兵長が…………か、逃げないって言ってるのに……。信用が欲しい!ギブミー信用!

そんなことを思いながら名無しさんとペトラは軍を後にした。
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