短  編

□ごめんなさい…(おまけ編)
1ページ/2ページ





・・・おまけ・・・




 その後、巧みに言葉を操って茂を外へ遊びに追い出した左之助は愛妻の機嫌を取るのに必死だった。



「なあ、千鶴……」


「知りません」



「いや、あれはお前と出会う前の事だし……」


「貧弱で申し訳ありませんでしたね」



「いや、それはそれで育て甲斐があって楽しい…」


「今、何かおっしゃいましたか?」



「いや、何も……」



左之助に背中を向けたまま、取り付くしまの無い千鶴。



その小さな背中を困った様に、それでもどこか楽しげに、愛しさを込め見つめる左之助。




「…なあ、千鶴……」



 小さく耳元で囁きながら、背後から千鶴をそっと抱きしめる。



「そ…そんなんじゃ誤魔化されません…」



耳元に囁かれ響く、甘い声。



何故か、ずしんと腰にくるのは惚れた弱みだからだろうか?



顔を真っ赤に染めながら力無くも抵抗する千鶴。




「妬いてくれたんだろ?」


「!!……そんな事……」



千鶴は身を捩って離れようとするが、そうはさせまいと、背後から優しく抱擁する左之助。




「今の俺にとって、今はお前だけだぜ……?」



「……ゃっ!!」




白いうなじに唇を添えると赤く染まったその小さな体がふるりと震えた。


その反応に気を良くした左之助はそっと千鶴の体を押し倒した。



「あっ…駄目………」



「なんでだ?」



「茂が……」



「外に遊びに行っちまって、しばらくは帰ってこねえぜ?」



「でも……」



「いいから黙ってろよ…」



「んん…駄目…い…や……」




左之助は小さく嫌々と首を振り抵抗する千鶴の甘い唇を塞ぎながら、そっと手を胸元に伸ばした。





「母様をいじめるなっ!!」





突然、乱入してきた茂は左之助の後頭部めがけ、手にした棒を勢いよく振り下ろした。




そこは腐っても原田左之助。



伊達に新撰組十番組組長をしてきた訳では無い。


さっと片手でその棒を掴み取り奪い取った。




「危ねぇじゃねえか!、いきなり何をするんだ!?」



棒を取られない様に横背後に隠しながら、左之助はきつめに茂に問うた。




「母様をいじめるな。母様は僕が守るんだ!!」


「俺がいつ千鶴を苛めたんだ?」


「母様、嫌だって言ってた!!」


「!!。し…茂、それは……////」


真っ赤になりながらも千鶴が説明をしようとするが、どう説明すれば良いのか分からない。


ただ口をパクパクさせてしまうだけである。


そんな千鶴の上で溜息交じりに説く左之助。



「あのな、茂。あんな事言っても実際、千鶴は嫌がってねえんだよ…」



「さ…左之助さんっ!!」



「でも、母様は駄目って、嫌だって……」



左之助の言葉に少し勢いを無くした茂に、左之助は改めて向かい合って座り直した。




「良いか、茂。よく覚えておけよ?」


「左之助さん……?」



茂に向かって酷く真面目な顔付きになった左之助に、何故か嫌な予感を感じる千鶴。



「女はな、嫌よ嫌よも好きの内って言ってな……」


「左之助さんっ!!」



「千鶴はああ見えても実は喜んで………」



「な…何を子供に言ってるんですかあーーーーーっ!!!!!」





がらがらぴしゃーーーん



どーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!!!!






本日特大の雷が原田家に落雷しましたとさ……







おしまい




次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ