頂 き 物 ♪
□桜夢記:ロカ様作/紅緋〜紅・原田Ver〜
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千鶴と一緒に花嫁行列を見たのはいつだったろう……。
あの頃はまだ京の都にいた。
新八がいて、平助がいて……。
三人で馬鹿騒ぎをして、土方に膝詰で説教されることなんて、日常茶飯事だった。
遠い思い出だ。
いまだに内乱状態が続いている母国を離れることに躊躇いがないわけではない。
多くの仲間たちの姿は今もまだ戦場にある。皆、明日をも知れぬ身だ。
だが、彼らに譲れないものがあるように原田にも譲れないものがある。
嘗ての彼を知るものであればそんな原田の姿を笑い飛ばすかも知れないが、彼が欲していたのは、いつだってささやかなものだ。
「左之助さん」
優しい、柔らかい声音が彼の名前を呼ぶ。
愛しいものと共に在ることの幸福。
優しさと互いを想い合う慈しみの日々。
千鶴と繋いだその手を原田が離すことなど決してない……。
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