輪廻の中から抜け出して

□40 平和は目の前だ
1ページ/1ページ





『っ!!マダラ!!』

気がつくと私は家の布団で寝ていた。
重たい頭をお越しなにが起こったのかをゆっくりと思い出してみる。

そうだ。マダラに幻術をかけられて…。
辺りを見回すとまだ暗かった。あれから約1日ほどたっているのだろうか…。
私が無理にでもついて行こうとするのをわかっていたのだろう。マダラは相当強い幻術をかけたようだ。
まともに立つことさえ儘ならない。それでも私は立ち上がった。チャクラは練れない。戦うことなんて出来ない。
それでも私はマダラのところへ行きたかった。

『行かなくちゃ…』

シャシさんと…、イズナとも約束したんだ…。それに何よりマダラとも。
ずっと隣にいるって約束したんだ。私はマダラからもらった指輪をそっと撫でた。

そしてゆっくりではあるが全力でマダラの元へ足をすすめた。

うちはの集落をぬけると少し先にマダラの須佐能乎が見えた。今まさに戦っているのだろう。私は更に足に力をいれ、走った。

その場所の近くまで行くと急に須佐能乎が消えた。

『まさかっ、』

近づくにつれ徐々に人の死体が転がっていた。
更に進と千手の忍がいた。

「何者だ!?」

「こいつは!」

『お願い、退いて』

私はそこを強引に突破しようと走った。

「とまれっ!」

「止まらなければ切る!」

私はそんな言葉お構いなしに走った。
そして相手の上を飛び越えようと高くジャンプした。

「くそっ」

相手は私にクナイを投げた。体を捻って避けようとしたが何本かは避けられず腹部に突き刺さった。
それでも走ろうと前を向くと川岸に人が集まっており、その真ん中にマダラが背をつけていた。

『はぁはぁ…マダラ』

私が叫ぶとそこにいた人達が私の方を見た。
そこには柱間さんと扉間さんもいた。

「あれは…ライラか?」

柱間は立ち上がってそう言った。

「柱間様、今ならやれます!」

私の後ろにいた忍がそう言った。私はそれでも歩みを止めなかった。

「そやつに手を出すな!」

私は一歩一歩マダラに近づいた。

そしてついにマダラの顔が見えた。彼は目を見開いて此方を見ていた。
柱間さんと扉間さんは黙って私を見ていた。
そしてマダラの前まで行くと力つき倒れそうになった。

「おっと」

柱間さんが私を支えた。

『やめてっ!』

私はその手を振り払った。そして重力のままマダラの隣に倒れた。


「どうして…」

『ずっと…一緒って…いったでしょ…?』

私は腹部から流れる血を押さえなんとか声をだした。

『それに…マダラのいない世界に私の幸せはないよ…。死ぬ時は一緒って言ったのはマダラだよ…』

私がそういうとマダラの口元が緩んだ

「ライラ…」

「マダラ、ライラ…終わりだ」

扉間が刀を向けた。

「…まて扉間」

「なぜだ兄者、今がチャンスだろ…!?」

「手出しは許さん…」

柱間さんはすごい形相で扉間さんを睨んだ。流石の扉間さんもそれには従うことしか出来なかった。


「フン…いっそ…一思いにやれ…柱間。お前にやられるなら…本望だ」

「かっこたけても無駄ぞ。長であるお前をやればお前を慕う若いうちはの者がまた暴れだす」

「もうそんな芯のあるやつはいねーよ。うちはには」


「いや、必ず居る…。また…昔みてーに水切りできねーか?一緒に…」

「そりゃ無理ってもんだぜ…俺とお前はもう同じじゃねぇ」

「今の俺にはもう…兄弟は一人もいねぇ。それにお前らを信用できねぇ」


「どうすれば…信用してもらえる?」

『マダラ…』

私はマダラの方を見た。マダラは一瞬此方を見た。

「腑を見せ合えるとすりゃ今弟を殺すか…己が自害して見せるか。それで相子だ…そうすりゃお前ら一族を信用してやる。」

マダラがそういうと周りの千手の者が騒ぎだした。それもそうだろう。こんな条件飲むわけないのだから。私たちを今ここで殺しておいたほうがいいに決まっている。

「バカバカしい…耳を貸すな兄者!」

「ありがとうマダラ。お前はやっぱり情の深い奴だ。」

そういい柱間さんは鎧を脱ぎ捨てた。まさか…

「いいか扉間…俺の最後の言葉としてしっかり心に刻め…俺の命に代わる言葉だ、一族のものも同様だ。」

柱間さんはクナイをとりだし自分の腹に向けた。
「俺の死後決してマダラを殺すな。今後うちはと千手は争うことを許さぬら皆の父とまだ見ぬ孫たちにかけて誓え。」


そういい柱間さんは涙を流した。この涙はマダラがあの時…イズナが死んだときに見せた涙と同じだと思った。
この人は本当に私たちを…

気づくと体が動こうとしていた。

しかしそれよりはやくマダラが柱間さんの手を掴んだ。

『っ!!』

「…!」

「もういい…お前の腑は見えた」


「マダラっ!」

柱間さんはそのままそのクナイを落とした。
マダラはだいぶつらいのか息を切らしながら膝をついた。
そして私の隣にきて私の体を起こした。

「解っ!」

マダラが幻術を解いてくれたお陰でようやく体が自由に動くようになった。

「おい、医療忍者は?」

柱間さんがそういうとすぐに千手の人がやって来た。そしてぎこちない手つきで私の腹部に手を当てた。
私とマダラはその光景を呆然とみていた

「出来ました…」

『ありがとう。』

私はその人にお礼をいった。

「ライラ…」

呼ばれた瞬間マダラに抱きしめられた。
『マダラっ』

「ライラあまり無茶しないでくれ」

『うっ…だって…マダラがっ…』

緊張が一気にとけまたしても涙が溢れだした

「なんだ、また泣いているのか…?」


マダラは私の顔を除きこんだ。
そして私の額に口付けをした。

「今度こそ…お前を幸せにする。」

私の目からは更に涙が出てきた。
もう…もう…

パシッと乾いたおとがした。
私がマダラの頬を叩いたのだ。


『マダラのバカっ!嘘つきっ!マダラの…バカ!!』

私はくるりと後ろを向いて顔に手を当てて泣いた。


「…」

「マダラ…振られておるぞ」

「うるせぇ!」

マダラの一言でズゥーンという効果音つきで柱間さんは体育座りをしてしまった。

「兄者、空気を読んでやれ」

扉間さんは柱間さんの肩をポンポンと叩いていた。

「ライラ…此方を向いてくれ。」

『いやっ』

「ライラ、置いていくぞ」

『いやっ』

「はぁ…」

マダラはため息をついた。
そして私の肩をつかみくるりと此方をむかせた。
そしてあの時と同じように私の頬に両手を添えた。
マダラの顔をみたら涙は止まった。

「ライラ…。すまなかった。謝って許されると思ってない」

『うん…。』


「今度こそお前を幸せにする…。」

『うん…。』

「もう一度、俺にチャンスをくれないか?」

『うん…。』

マダラはぐっと顔を寄せた。
マダラの瞳越しに見えた自分の瞳は腫れていた。

「ライラ、愛してる」

『うっ…私も…愛してるっ…』

今さっき泣き止んだばかりなのにまた涙が出てきた。そろそろ脱水症状になるんじゃないか自分。

「っ、最近よく泣くな…。」

『これはっ…嬉し泣きだもん』

私はそういい悪戯に笑って見せた。


「マダラちょいと泣かせ過ぎやしないか?」

柱間さんがへらへらと笑いながら言った。

「うるさい、貴様に関係ないだろう」

ズゥーンと柱間さんはまた落ち込んでしまった。

「兄者…」

「はぁ、もういい。そろそろ行くか。」

「もういいとはなんぞ…もういいとは」

『ふふふっ』

マダラは私の手を掴んだ。


空を見上げると朝日が出始めていた。
それはまるで今の私達を写しているようだった。
そう、これからが忙しいのだ。平和な世界はもう目の前だ。

私は握られた手に力を入れた。するとマダラも強く握り返してくれた。


イズナ…。見えていますか?貴方が望んだ世界はもうすぐそこです。どうか最後まで私達を見守って下さい。


「今…」

『うん。』


今イズナが笑ったのはきっと勘違いじゃないと思う。

マダラは空に向かって手を伸ばした。

「平和は目の前だ」

『うん』

私はその手に自分の手をかざした。

神様どうかこの手がずっと離れませんように


金色の指輪がキラリと輝いた

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ