輪廻の中から抜け出して

□37 どうか、
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『サン、もっとスピード出ないの!?』


「無茶いうな。これでも全力だ」

私はサンに乗りうちはの領域まで急いでいた。



《イズナが怪我をした》



文にはそう書かれていた。わざわざ文にして連絡するほどだからきっとかなりの重症なのだろう。

はやく、はやく戻らなくては。きっとここに来る前から感じていた胸騒ぎはこれだったのかもしれない。
私は仲間が戦っているときに呑気に一人だけ平和な世界にいた自分がとても許せなかった。

私はぎゅっとサンの背中にしがみついた。


「ライラ、そろそろつくぞ。」

私はスッとサンから降りた。

『サン、ありがとう。あとは休んでていいよ。』

ポフンという音をたてて消えたサンを確認して私はうちはの集落に入った

今は昼過ぎ、何時もなら人通りがいいこの場所も今日は何故だか人が見当たらない。何時もとは違う、なにか異常が起こっているのはすぐにわかった。一体この数週間でなにがあったのか。


私は走って家まで向かった。家の中に入ると何人かの女中がいてひすいとかんなもいた。


「ライラ様!!」


『イズナは!?マダラはどこ!?』


「此方です…」

かんなはとてもいかない顔をして私を案内した。その表情も私を不安にさせていた。

「この部屋に」

『ありがとう』

私はかんなにお礼をいうと勢い良く襖を開けてなかに入った。

『イズナ!マダラ!』

「ライラか」

中に入ると布団に寝ているイズナとその隣にはマダラが顔を伏せて座っていた。

『イズナ、怪我をしたって聞いたけど…』

私はイズナの寝ている布団に近づきそっと隣に座った。

イズナの目には包帯が巻かれており息も荒くとても辛そうだった

『イズナ、目…どうしたの?傷は?傷はどこ?』


「あぁ。腹部を…扉間に…」

腹部そうきいて私はイズナの布団をめくった。するとイズナが言ったとおり腹部に包帯が巻かれておりそれは赤く滲んでいた。

『っ!包帯取り替えなくちゃ。それに止血も、』

「いいんだ…。ライラ。俺はもう助から…ない。」

『どうしてそんなこと』

私は手のひらにチャクラをため医療忍術を使った

「ライラ、それ以上やらなくていいよ、」


『いやっいや!』

どれだけチャクラを、込めても血が止まることはなかった。このままでは、このままではイズナは


『それにその目。万華鏡の使いすぎ?』

「違う。僕の瞳を兄さんに移植したんだ、」


『えっ?』

イズナの目をマダラに?どうして?それではイズナが失明してしまうではないか


「ライラ、僕はどのみち…死ぬ。それなら最後は…兄さんの力に…なりたいんだ。」

『どうして!?ねぇ、マダラも!』

私は泣きつくようにマダラに言った。それでようやくマダラは顔をあげた。するとマダラの目はすでに万華鏡写輪眼になっていた。しかしその模様は何時もとは違うものでまるでイズナの万華鏡と掛け合わせたかのよいな模様だった。

『本当に目を…』

「ライラ、兄さんを…責めないであげて。頼んだのは、僕の方なんだ…」

『イズナ、どうして?ねぇ、マダラ!マダラってば!』

「いい加減にしろ」

私はビクッと肩を震わせた。
マダラのこんな声は初めてきいた。それがまさか自分に対してだなんて夢にも思わなかった。

「俺だって…誰が弟の目を好き好んで奪うものか」

マダラの目から一筋の涙がながれた。
あぁ、マダラだって辛かったんだ。一人で沢山考え、悩み、やむ終えずこうしたのだろう。いやこうするしかなかったのだろう。
それなのに私は…


『ごめんなさい…』


「ライラ、兄さん…。最後ぐらい二人の…元気な姿を見せてよ…」

見せてよ、その言葉に私の胸は傷んだ。マダラも悔しそうに手を握りしめていた。次第にイズナの声も小さくなっていき、死期が近づいているのがわかった

「イズナ…本当に本当にすまない。俺は結局…」

「兄さん、謝らないでよ…。僕は兄さんの弟に…なれて、幸せだった。兄さんは俺の…誇りだ。だから…その目でライラと、幸せに暮らして欲しい…」

「あぁ。ありがとうイズナは。必ず平和をつかんでみせる」

「うん…。兄さんならできる。」

イズナの首が少しだけこちらをむいた。

『イズナ…』

「ライラ。僕は昔から…ライラのこと、好きだったんだ…。」


「だから…ライラには幸せになって…欲しい。そして…兄さんの隣にいて…あげて欲しい…」

『イズナありがとう…。』

私はイズナの手を握った。すると少し握り返したかと思うとすぐにその力が抜けていった。

『イズナ!?』

「二人とも…今まで本当に…ありがとう…。愛してる」

『っ!』


「イズナ!?」

イズナの手から完全に力が抜けた。


あぁ、イズナはついに…



イズナの顔はとても安らかなものだった。
先ほどまで会話をしいた人がだんだん冷たくなっていく感覚。
私は大声をあげて泣いた。マダラもその場で静かに涙を流していた。

そしてそのあと私とマダラとヒカク、その他何人かの少人数でイズナを葬った。

「イズナ…。」

花で囲まれたイズナはとても安らかな顔をしていた。
土に埋められるイズナを見ると堪えていた涙がまた溢れ出した。

『イズナっ…』

忍は感情を殺すように訓練されているためか涙を流しているのは私だけだった。泣いてはいけないとわかっているのに止めることは出来なかった。

それから何時間そこにいたのだろうか。日が沈んでから大分たっている。
私の涙はまだ止まらなかった。


「マダラ様、そろそろ…」

「あぁ、すまないがライラを送っていってくれないか」

「はい…」

マダラはそういいその場を動こうとしなかった。

「ライラ様、そろそろ帰りましょう」

ヒカクが私に手を差し伸べた

『いや、私もここにいる。』

私は目を擦りながらそういった。

「ですが…」

「ライラ、疲れているだろ。帰って休め」

『いやっ!マダラの隣にいる…』

意地でもどかない。そう態度に出すとマダラが此方に歩いてきた。
そして私の腰を引きそのまま抱き寄せた。

「ライラ、俺を困らせないでくれ。お前までいなくなったら…俺は…。」

『マダラ…。』

暫くしてマダラが抱き締めていた手をとり、今度は肩を掴んだ


「ライラ…」

『うん、わかった。でも、マダラもちゃんと休んで』

「あぁ。」

「ライラ様、」

『うん、今行く』

マダラが私の肩から手を離した。私はヒカクの後に続くようにしてその場を後にした。

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