輪廻の中から抜け出してU
□45 人生そう甘くはない
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「ライラっ!」
マダラは部屋を出ていったライラを追いかけた。マダラの声が聞こえるや否やライラは歩くスピードをあげた。
「ライラ、待てって」
少し小走りをしてライラの前に立ちふさがった。一歩歩けばライラは一歩後ろに下がる。それを繰り返すうちにライラは壁に追いやられ逃げ場を失った。逃げようとするライラを塞ぐために両手を壁につき逃げ場を無くす。するとライラは顔を上げてこちらを睨んだ。
「ライラ」
『昨日の約束、忘れたの?』
「だから触ってないだろう。」
マダラは接近はしているが約束通り触ってはいなかった。ライラは返す言葉が見つからないらしく黙ってしまった。
「すまなかった。」
マダラはライラの頭に手をおいた。そして何時もより声色をすこし低くしてみた。
『……』
「今後は酒は慎むようにする。」
『うん……』
思ったより素直な返事に驚いたが、これも桃華とか言うやつのお陰なのだろうか。ライラは顔を上げてこちらを見た。赤い瞳はゆらゆらと揺れだし、涙が溢れそうになった。
「悪かった、泣かないでくれ。」
もう一度優しく撫でてやると今度はライラから背中に腕をまわしてきた。
『あのあと、色んな人から言われて恥ずかしかったんだから』
「すまない」
『でもね、さっき私が作った水羊羹をマダラが美味しいって言ってくれたのは嬉しかった』
「あぁ。」
『本当は、マダラが甘いの嫌いだから腹いせに作ったんだけど』
マダラはそれをききくっくっ、と喉をならして笑った。ライラと過ごす時間が長すぎて、ついには舌までやられてしまったのか。
『許してあげる』
ライラは腕をはなしてマダラの顔を見上げた。
「本当か」
『でも』
ライラはマダラの口元に人差し指をあてて言葉をさえぎった。
『約束は、約束ね』
呆気にとられたマダラの腕からいとも簡単に抜け出したライラは数歩さきに行き手を後ろにして悪戯に笑ってみせた。その様子はまるで好きな子に意地悪する子供のようだ。
『じゃあ、私は買い物してくるね』
ライラはばいばいと手を振ってその場をさった。残されたマダラははぁと、ため息をついて大人しく仕事に戻ることにした。