輪廻の中から抜け出してU

□44 仲人の苦労
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あぁ、痛い。割れそうなぐらいに頭が痛い。それもその筈で昨日夜、俺は過去最高とも言える量の酒を飲んだ。もともと酒には強い自信もあったのであそこまでよったのも、二日酔いがこんなに酷いのもはじめてだ。隣にいる柱間を見ると全く具合が悪そうにはみえず寧ろ目が爛々としている。無償に腹が立つ。

「お前、よく普通でいられるよな」

「マダラが飲み過ぎなのだ。」

「お前が手伝わんからだろ。」

「あの場は残すべきだったぞ」

「そんなみっともないことできるわけないだろう。」

ダメだ。頭が痛い。少し会話しただけでも吐き気がする。俺は再び机に伏せた。

「全く、こんな大切なときに使い物にならんぞ」

柱間がつんつんと頭をつつくがガン無視をした。柱間の言うとおり今の俺は精々書類にサインが出来るぐらいで実際なんの役にもたたない。今は柱間と二人で里の構成を考えるため、新しく作った部屋にいる。そこには里の要となる人物が出入りする場所で入るのが許されているのはごく数名だ。 するとこんこんとドアをたたく音がした。誰だか知らんが頭に響くから静かにしてくれ。

『お疲れ様です。お茶をおいれしました。』

この声は、俺は勢いよく頭をあげた。その反動で頭がグラッとしたがそんなことはどうでもいい。

「おぉ、悪いのぉ。」

『いえいえ。』

ライラは柱間の前にお茶を置いた。そして俺の前にもお茶を置いた。俺の時だけ勢いがよかったのは気のせいだろう。

「おい、ライラ。今日の朝はどこに…」

『あっ、お茶菓子持ってきますね』

俺が話かけたとたんライラはバタバタと部屋を出ていってしまった。今朝、起きて布団からでるとライラは既にいなかった。ヒカクによると朝早く用事があるようで出ていったらしい。昨日のこともあって愛想でもつかされたかと心配した。しかし、ヒカクやその他の人はそんなことはない、と言い切ったので俺も考えないようにしていた。そうだ只の用事だと。そりゃあ何年も一緒にいたらそういう日だってあるさ。うん。しかし今の態度をみても明らかに何時もと違う。怒っているのは一目瞭然で、正か公言通り3日間このままなのか。

「なんだ、まだ喧嘩中なのか」

俺は深いため息をついた。よりによってこいつには見られたくなかった。まぁ状況も状況で遅かれ早かれ見抜かれてはいただろう。いっそのことこいつに話してみようか。

「それがなぁ。3日間手出し禁止って言われたんだ」

「むっ。3日間と」

俺はあぁ、と返事をして再び机に伏せた。柱間は顎に手をあててうぅっと言った。

「マダラに耐えられるのか?」

「いや無理だ。」

「しかし、無理に襲ってもなぁ…余計に嫌われるだけぞ」

「そうだよなぁ…。」

「しかし3日はつらい。」

「2日もつらいってのに、3日なんて暁には…」

「一人で頑張るしかないぞ」

俺はがっくりと肩を落とした。男同士の話となるとどうしても会話が下品になってしまうのは致し方ないというもの。しかし一人はつらい。つらすぎる。

「寝る部屋は一緒なんだぞ」

「あぁ……それは無理ぞ」

「どうすればいいと思う?」

「どうって言われてもな…。要するに、マダラだけがそう思っているのが駄目なんじゃないか?」

俺だけが?言われてみれば確かにそうかもしれない。いつも求めるのは俺からだし、何をするにも俺からだ。まぁ、ライラも満更嫌でもなさそうだが…。それに第一に男と女では性欲の差がある。

「だが、女にも性欲がないわけではないぞ。いっそのことライラを誘惑させてみてはどうだ?」

「ほぉ、それは新しい意見だ。しかしどうすればいいのだ?」

「うむ。こればかりは女に聞かなくてはな。男と女は観点が違うからな」

こんこんと、扉を叩く音がするかと思いきやタイミングよく千手桃華が入ってきた。こいつは女だが女じゃない。こいつにだけは絶対にきかない。
しかしそんなこともお構い無しに柱間の阿呆が口を開いた。

「おぉ桃華丁度いい。率直に聞くが、お主が男から抱かれたいと思うのはどんな時か?」

「ごぼっ……っ、おい柱間」

「いやぁ、聞きやすい女が近くにいてよかったのぉ。」

いやいや、こいつとライラとでは百歩譲って同じ女としても天と地の差があるではないか。

「全く。真っ昼間からなぁに考えてるんだか…。まぁ、そうだなぁ。」

おっ?思ったより素直に考えている。まぁ参考程度にはなるか…。俺は思わず顔をまじまじとみてしまった。よくみると見たことある顔だ。千手のなかでも珍しく、幻術が得意な女だったはず。まぁ、我らうちはには到底及ばないが。

「多分女は男ほど性欲はないが、全く思わんわけでもない」

「ほぉ。」

「例えば抱き締められた時とか撫でられたときとかだな。女はそういう些細なことに一喜一憂するからな」

「なるほどなるほど。それは知らんかったぞ」

「抱き締めたり撫でるか」

「なんだ、やるのか?」

桃華は興味津々とばかりに食いついてきた。なんだか昨日より丸くなっている気がする。きっと酒ぐせがすこぶる悪いのだろう。

「まぁ参考程度にだな。まず触らせてくれないからな。」

「そうか…。ならあとは声とかだな」

「声?」

「女は声にも敏感だ。私は耳元で話されるとドキドキするな」

「くっ、桃華がドキドキだと。」

「柱間、後で殺るぞ?」

桃華は、にこにこな顔のまま手首をコキッと鳴らした。柱間は額に汗をかきながら冗談だ冗談と弁解している。酒ぐせだけではなく、元々持っているものなのかもしれない。だが今回ばかりは感謝しよう。

『お茶菓子持ってきました。あっ桃華さん』

「ライラか。いやぁ、今日も美人だね」

『全く、お世辞はいいです。あっ、このお茶菓子よかったらどうぞ』

ライラはお盆に幾つか茶菓子をのせて戻ってきた。それを俺たちが作業している机に置く。他にも一人一つの水羊羹を持ってきた。元々桃華が来ることは知っていたのか、三つぶんちゃんともっている。

「ほぉ、水羊羹か。久しいのぉ」

俺の前にも水羊羹はおかれたが一向に目を合わせようとしてくれなかった。俺は内心ため息をついたがここでめげていては駄目だ。俺は有り難うと一言言うとちらりとライラがこちらを見たがすぐに視線をそらされた。俺は水羊羹を口にした。ひんやりとしていてとても気持ちがいい。本来は冬に食べる物らしいが、今では夏に食べるのが一般的だ。今は5月の半ばなのに一体どこで買ったのだろうか。それにしても口に広がる冷たさといい、ほのかにかおる蜜柑の味がさっぱりとしていて美味しい。

「マダラは甘いものが嫌いそうだが、案外そうでもないんだな。」

「いや、あんまり好きではないんだが…。これは何故だか上手いと感じる
。」

俺の言葉を聞くと柱間も水羊羹を口に運んだ。つられるように桃華も口にしていた。

「これは上手いぞ」

「蜜柑の風味が上手い。どこで買ったの?」

ライラはえっと言い何故だかお盆を抱えた。そして下を向きながら少し頬を染めた。どうしたのだろうか。他の二人も疑問に思ったらしくどうしたのかという表情をしている。

『いえ……実は、私の手作りでして……』

最後の一口を食べ終えた瞬間俺は思わず噎せそうになった。俺はあまり甘いものが好きではなく、どうして此れはこんなにも美味しいのかと疑問だったが。なるほどそういうことか。同時に朝早くから家にいなかったのもこれが理由だとわかった。

「ライラの手作りか!通りで上手いはずだ。なぁマダラ!」

「あっ、あぁ。上手かった。」

ライラは気まずそうに視線を反らしたが先ほどより顔が和らいだ気がする。

『わっ、私はこれで。』

ライラはそそくさと部屋を出ていこうとする。すると柱間と桃華が俺の背中を叩いた。口パクで、追えといっていた。

「世話をかける」

俺はライラの後をおった。







「全く、世話が焼けるな。」

「本当ぞ。それよりマダラのやつ、よく手作りだとわかったな。」

「あぁ。あれは私も驚いたよ。ライラのやつ、マダラが甘いもの好きじゃないから嫌がらせのつもりで出したんだ。」

「なんと。」

「予想外にマダラが食べるからまさかと思ったが…。ライラも意表をつかれただろう。」

「桃華は知っていたのか?」

「あぁ。あらかたな。朝からここで水羊羹を作ってたんだが、その時に丁度話を聞いてな。」

「なるほど。」

「ライラが作ったのなら食べれるってなんて言う話だ」

「愛の力とは恐ろしいな。」

「全くだ。」

そういい二人は残りの水羊羹を口にして、暫しの間例の二人の話で盛り上がったとさ。

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