輪廻の中から抜け出してU

□43 酒は飲んでも飲まれるな
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『なには、ともあれ根性です柱間さん。』

「気持ちがあれば必ず届く。俺のようにな。」

私がそう言えば柱間さんは少し元気が出たような気がする。それから二人は水切りの話をしていた。

『ふふっ、案外柱間さんの方が先に子供を授かるかも』

柱間さんは同様していたが心なしか嬉しそうにもみえた。

『柱間さんなら大丈夫です。緊張せず、自然でいれば。』

私は言い聞かせるようにそういった。きっと柱間さんはミトという女性を心から愛しているのだろう。今時お見合いと言えば政略結婚である確率は高い。それに千手とうずまき一族となればなおさら。お互いの意思とは関係なく行われたお見合いだっただろうに。うちはの頭領であるマダラも例外ではなかったらしい。生前のイズナから聞いたことがある。色々な一族の女がマダラの花嫁候補として上げられたがマダラは頑なに首を縦にふらなかったらしい。私と結婚することになってからは上もとやかく言わなくなったがそんな話を一度も聞いたことのなかった私にとってはなんとも複雑な心境だった。そんな中、お見合いであるのにも関わらずこんなに相手を思うことができるのは素敵なことだ。柱間さんはいい人だ。それは敵であった時から思っていた。だからこそ幸せになってほしいと思う。


『そういうことならうずまき一族もこの里へ?』

「あぁ、今他の一族にも声をかけている途中ぞ」

「本当かよ。まだうちはと千手すら纏まってないのに」

「まぁなんとかなるだろうよ」

『ふふっ、忙しくなるね』

マダラはぐっと酒を飲み干した。私が注ごうとすれば左手で自分の横を叩いている。隣に座れということか。私は言われた通りに横に座ると腕をまわされぐっと抱き寄せられた。

『ちょっと、マダラ!』

「くっくっ、いいじゃないか。これから忙しくなるんだ。今のうちだろ」

『だからって…』

私の言葉に耳を傾ける気はないようで、抱き寄せられた手は肩を撫でるように動いた。私は体をよじらせたが結構な力で押さえられているため全く動けない。顔を見ると気づかなかったがだいぶ赤くなっている。どうやら酒に酔っているらしい。だがこんな量の酒でマダラが酔うはずがないのに。

「はっはっはっ。マダラめ、もう酔ったか。だから大概にしろといったのだ」

はて、柱間さんはそんなこと言っていただろうか。宴は始まってそんなに時間は経っていないはずだ。

「いやな、始まる前に二人で酒を飲んでいたのだが。マダラのやつ調子にのりおってざっと…」

柱間さんは指を1本前に出した。酒の本数だろうか?でもたった1本でマダラがこんなに…。そんな間もマダラは私にすりよってきた。

『たった1本でマダラがこんなに?』

「1本ではない。一樽だ。」

『樽っ!?』

私は驚きのあまり大きな声をだしてしまった。樽って…。逆に今までよく飲めていたものだ。それにそんな量の酒を飲んで大丈夫なものなのか。

「いやぁ、そこの店主がお祝いにと用意してくれ、二人でのんでいたのだが飲みきれなくての。飲みきれないと言おうとしたのだがマダラのやつ、みっともないから俺が飲むなど言い出しおって」

『それで一人で飲みきったのですね…』

私がそういうと柱間さんは頷いた。だからこんな酔ってしまったのだろう。いつも酒を飲んでいる姿は見ていたが酔っぱらっているのは初めてみた。それよりも、千手とうちはが手をくむ大事な場面に頭領に酒が入っているのは問題ではないだろうか…

「ライラ、柱間なんかじゃなく俺をかまえ」

横腹にすっと両手が入ったかと思うとそのまま膝にのせられた。これは恥ずかしすぎる。

『ちょっと、マダラ。いい加減に』

私は脱出を試みたが後ろから手をまわされているため失敗に終わった。

「ライラ、俺から逃げようだなんて甘いぞ」

そのまま私の首に顔を埋めかぷっと噛まれた。んっ?噛まれた?

『…………噛んだぁ!!』

私は渾身の力でじたばたしたがマダラは余裕そうに口を開いた。

「くっくっく、これで暫くは消えないな。」

しまいに傷口を舐められ、背中に寒気が走った。なんだこの人、キャラ変わってないですか?
柱間さんはというと私が噛まれたことは注して気にせず寧ろ面白そうに見物するだけだった。お願いだから助けて下さい。

「ライラ」

と、そんなことを思っているうちに手が怪しい位置に、そのまますっと着物の中に手が入ってきた。ヤバいっと思った時に救いの手がやって来た。

「全く、うちはの頭領は場所も弁えられない能無し野郎らしいな」

「なんだと…」

その人は私をいとも簡単に引き抜くとそのまま自分の後ろに隠した。顔は見かないが声からして女性、そして千手のようだ。

「ライラを返せ、女。今なら許してやらないこともない」

「ふん。ここでそんなはしたないことをされては不愉快だ。それにこの子が可哀想だ。それぐらい分かれ、この万年発情期野郎」

パリン、と何かが割れる音がした。マダラの手元を見ると先程まで持っていた杯が粉々になっており酒で手が濡れてしまっている。割れた杯の破片が床に転がる。マダラの肩がわなわな震えだし、そのままギロリと此方を向いた。やばいこの目は、本当にこの人を殺しかねない目だ。
いささかやばいと思ったのか柱間さんがまぁまぁとマダラの体を抑えつけた。

「離せ柱間。俺はこの女を殺してやる!!」

「まぁまて。それに桃華も謝れ。いくらなんでもうちはの頭領に対して失礼すぎだぞ。いくらなんでも。」

「あぁ、そうだったな。こんなんでも一応うちはの頭領だったな。不愉快だと言って悪かった。万年発情期野郎」

それを聞きもっと暴れだすマダラ。確かに肝心なところが治っていないような気が……。マダラは酒が入っているせいか、柱間さんは余裕でそれを止める。桃華さんという人物はマダラには注して興味はないのかくるりと背を向けて私の方をみた。

「私の名は千手桃華だ。一応、
彼処のアホロン毛の側近をしている。」

言葉こそ乱暴だが顔はにこやかで優しそうな女性だった。見たところ20代後半か。

『あっ、私はうちはライラ。うちはマダラの妻です。』

「貴方のことは知っているわ。噂以上の美人よ」

『えぇぇぇ、私なんか……色気もないし、……マダラの……な……も』

終わりの方はほぼ呟くレベルで自分でもなんて言っているのかわからなかった。そんな私をみて桃華さんはクスリと笑い手を出してきた。

「これからは女同士、仲良くしましょう。このちゃらんぽらんをどうにかしましょうね。」

私はその言葉に思わず笑いそうになったがなんとか堪えコクりと頷きその手を握った。お父さん、お母さん。私ライラは早速千手の友達が出来ました!

「ライラ、そんな女と握手なんかするな!おい、そこの千手の女も離せ。ライラにその凶暴さが移ったらどう責任とるつもりだ!」

桃華さんは笑顔のまま青筋が浮き出ていた。正直怖い。私に大丈夫とだけいいまたくるりと背を向けてしまった。

「これでもう私とライラは友達だ。妻の友達にまで口を出してくるとは……女々しいにも程がある。」

「ふんっ、何を言うかと思えば。下らん。お前みたいな品の欠片もない女がライラと友達だと?笑わせるな。友達は愚か、ライラの視界に入れさせるのもおこがましい。」

「私とライラは友達だっていってんだろうが。お前の耳は飾りなのか。そうか可哀想に。」

「ふっ、可哀想なのはお前のほうだ。ライラと友達になったという妄想だけでここまで喜ぶとは余程、人との関わりがないとみた。」

ばちばちと二人の間に火花がとんだ。私は今のうちにそっとここを離れようとした。柱間さんはあきれた様子でそれを見ていたが、それが二人のかんに触ったのか、怒りの矛先が柱間さんに向いた。

「まぁまぁ、二人とも落ち着け。そんなに言うのなら直接ライラに聞けばよいではないか。」

ビクッと肩が揺れた。ゆっくり振り向くと柱間さんがニヤリとしているのが見えた。私を逃がさないつもりだ。当の二人はそれは名案とばかりに目をキラキラとさせ此方を見つめていた。二人とも期待の満ちた目だ。どっちが良いか、と聞かれても困る。良いってなんだ。それに良いと言う意味が広すぎて答えずらい。
正直、今のマダラは嫌いだ。さっき噛みつかれたのはそう簡単に許してたまるか。かといって桃華さんもマダラに言いたい放題。自分の旦那を悪く言われるのは正直いい気はしないのである。

「おい騒がしいぞ、兄者達。」

そこに扉間さんが呆れたように此方を見ながらやって来た。そうだ、この人なら

『私、扉間さんが良いです。』

「えっ?」

「はっ?」

「なんと」

「どういうことだ?状況が分からんのだが…」

私がそう口にすれば皆意外だったのか言葉を詰まらせた。

『ですから。今はこの中でなら扉間さんが一番だと言っているのです。』

「なっ、何故だライラ…。俺は」

『マダラ、私は怒ってる。』

私はぐっと襟元を出して先程の噛まれたあとを見せた。痛みからしてまだくっきり歯形が残っているだろう。マダラは何も言えないのかぐっと押し黙った。

「ライラ、私なら……」

『桃華さん。私はうちはライラ。うちは一族として頭領をバカにされるのはいい気はしない。ましてや私はその妻です。』

桃華さんははっとした様でマダラ同様下をむき黙った。

「じゃあ……」

『柱間さんは嫌いです』

柱間さんはよっぽどショックだったのか部屋のすみに体育座りをして構ってオーラをはなっていた。だって、こんな事態になったのはもともと柱間さんのせいだし…

「それで、残りは俺というわけか…」

『扉間さんにはこれといって何もありません。』

「消去法ではあんまり嬉しくないな。」

扉間さんは少し困った顔をした。それもそうかも知れない。只でさえこんな面倒事に巻き込まれた上に、消去法で自分が恨まれ役になるのは嫌だろう。失礼なことをしてしまったと思い私は慌てて言葉を訂正した。

『いっ、いえ。扉間さんが良いんです!』

勢い余って少し大きな声を出してしまった。そのためか一瞬しらけてしまったが、またすぐにガヤガヤと、賑わいだした。そんな中、明らかに空気がおかしい私たち五人。扉間さんは勝ち誇った顔をして皆をみおろしていた。

「貴様ら、ざまぁないな。これに懲りたら少しはまわりのことを考えて行動することだ」

それだけ言うと扉間さんはすたすたと自分の場所に戻って行ってしまった。冗談抜きに、扉間さんが一番大人だ。だいぶ萎えてしまったのか三人ともぐったりとしていた。桃華さんはそばにあった酒を飲みまくり、柱間さんは体育座り。マダラはというと……寝ていた。うん、初めから寝ていてほしい。
私はため息をつき寝ているマダラを運ぶため口寄せをした。

「久しいな。」

『そうだね。悪いけどこれ、運んでくれる?』

サンはちらりとマダラを見ると明らかに嫌そうな顔をした。だがしかし、運んでもらわなくては此方が困る。そのためにわざわざ呼び寄せたのだから。

『運んでくれる?』

「…………」

『…………』

「……ワンっ」

よし勝った。私はサンの頭を撫でそのまま外に出ようとした。これは流れ解散であるから別に今抜けても構わないだろう。

「ライラ、もう帰るのか?」

『えぇ、柱間さん。また明日。』

また明日。そう言えば柱間の顔から笑みがこぼれるのが目でみてわかった。桃華さんにも宜しくお願いしますと言いそのまま家へと向かった。
うちはの集落に着いても人気はなかった。まだあそこにいるのだろう。今日ぐらいはめをはずしてもばちは当たらないだろう。部屋に入りそのまま布団を引きその上にマダラを転がした。サンはそれが終わるとすぐに消えてしまった。拗ねてしまったがまぁそこは気にしない。可愛いサンには今度なにかあげよう。

「っ…」

『ご機嫌よう』

私はニコニコスマイルでマダラを見ると彼は額に汗を流し動揺した。

「ライラ、あれは愛情表現の一種であってだな」

『あら、そうなの』

私の顔は変わらずニコニコだ。片手を肩に当てると歯形が触ってわかる。それもそうだ。結構な力で噛まれた。痛かった。それに公衆の面で……。許すまじ。

『これから3日間触らないでね』

「3日だと。無理だ、断る。」

即答か!と突っ込みたくなったが、ここで流されてはダメ。今日という今日はちゃんと懲らしめてやる。

『無理でもなんでも。私はそう決めたから。』

「嘘だろ…?」

そう言い近づいてくるマダラ。その手を払いのけ私は立ち上がる。裏切られたかのようなマダラの顔をみて少し胸がいたくなったがここは心を鬼にする。私はそのまま部屋をでた。

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