女狐

□八章
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柱間は尻餅をついた。マダラもまた目を見開いた。狐が喋ったのである。信じられないともう一度狐を見る。すると狐は白い煙に包まれた。それにより一旦視覚を奪われる。そしてそれと同時にマダラの体が揺れて柱間同様尻餅をついた。そして視界が明けるとそこに狐はいなかった。

「お稲荷様が……」

柱間は残念そうに呟いた。

「おっ、おい」

「どうした……っ!」

柱間は大きく目を見開いた。その視線の先には二人いた。


「だっ、誰ぞ?」

マダラは見知らぬ女に抱きつかれていた。尻餅をついたのはそのためだった。

「ありがとう」

柱間でもマダラでもない声が聞こえた。鈴の音のような綺麗な女の声であった。女はマダラから離れて立ち上がった。


「だっ、誰だ?」

「私の名はうちはライラ。」

「うちはだと?マダラの知り合いか?」

「いや……見たことない顔だな。」

マダラは再び女の顔を見る。白く日に焼けていない肌に漆黒の黒い髪。浴衣の上からでもわかる女らしい艶やかな体。所謂、美人であった。それも超がつくほどの。

「私は南賀神社の神主の娘」

「南賀神社だと?」

マダラは眉を寄せる。ヒカクの話によれば南賀神社の神主の子供は生け贄にされたとかなんとか。

「そいつならとっくに死んでいるはずだが」

「宇迦之御魂が私を助けてくれたんだ」

「宇迦之御魂……あの稲荷神の?」

「ほほぉ!やはりお稲荷様であったか!」

「生まれてすぐ、生き埋めにされた私を宇迦が救ってくれた。それから私は宇迦と二人でこの山で暮らしていた」

「その宇迦之御魂はどこに?」

「わからない」


ライラは唇を噛み締めて拳を握りしめた。

「一ヶ月前ぐらいに私に神の印を与えて急にいなくなったんだ……」

「神の印?」

柱間は首をかしげた。同じようにマダラもわからないといった顔をした。

「そうか、人間は知らないか、、、。神にはそれぞれ神である印がある。宇迦はそれを私に与え何処かに……」

「ならば、今はお前が神ということか?」

マダラの問にライラはこくりと頷いた。


「その反動で暫くの間、神の姿になって、そしてようやく今戻れたんだ」

「なるほど」

「しかし、お前が南賀神社の神主の娘である証拠がない。」

「証拠……。これでは駄目?」

ライラは目を瞑り、再び開けたときには写輪眼になっていた。マダラは目を見開いた。今まで女で写輪眼を開眼したやつなど他にいただろうか。そもそもうちはにはくの一がいない。女が写輪眼を開眼などという事態はおそらく他に例はないだろう。

「お前……忍びなのか?」

「宇迦から一通りのことは学んでる。万華鏡写輪眼も…」

「「!!」」

ライラの目は先程とは違う形の写輪眼だった。マダラは更に驚いた。まさか万華鏡まで開眼しているだなんて。うちは一族の誰もが開眼できるわけではないのに。

「この能力は魅了の能力」

「魅了?」

「まさか」

「ごめんなさい。身を守るためには致し方なかったんだ」

「通りで。可笑しいと思ったんだ」

ライラとあってからこの数週間、明らかに何時もの自分とは違かったことは柱間もマダラも気ついていた。それがまさか幻術だったとは思いもよらなかった。

「まさかあれは全て万華鏡の能力だったのか」

ライラは申し訳なさそうに頷いた。柱間は大きく息をはいた。

「そんなことしなくとも取って食ったりはしないぞ」

「念のため。」

「それで、此れからどうするんだ?」

「……」

「ならうちに来るか?弟も住んでいるん…」

「いや、俺の家にこい。」

「なっ!マダラめ、何を言っておる。先に言ったのは俺のほうぞ」

「こいつはうちは一族なんだ。他の皆にも挨拶しなければならないだろう。俺の家に来たほうが色々と手間が省ける。」

「まっ、まぁそうだが」

「ライラ、うちへ来い」

「本当にいいの?」

「あぁ、俺は一族を守ると決めたからな。お前も例外ではない」

「ありがとう!!」

ライラは再びマダラに抱きついた。そしてその衝撃にマダラはまたもや尻餅をついた。ライラはマダラの首に腕を回しこれでもかというほど体を密着させた。マダラの顔はたちまち赤くなったのは言うまでもない。

「わっ分かったから。家に行くぞ」

「俺もそろそろ帰らなくては。扉間の説教はごめんぞ」

「また落ち着いたら連絡をよこす。」

「あぁ、わかった。じゃあの。ライラもまたな」

「色々とお世話になりました」

柱間そのまま家に帰っていった。

「ついてこい」

マダラはくるりと体を回転させてあるきだした。そのあとを追いライラも歩く。

「あの……」

「マダラでいい」

「……マダラ?」

「なんだ?」

「どうして私を信じてくれたの?宇迦は人間は疑い深いって言ってた」

「まだ全てを信じた訳ではないが、取り敢えずお前が南賀神社の者だということは信じた」

「どうして?」

マダラはくるりと反転してライラの髪を触った。

「この黒い髪に白い肌。それに写輪眼がうちはであることの何よりの証拠だ。それにお前が殺されたと言うことも知っていた。お前をこうしてしまったのはうちはにも責任があるしな」

「そう……。マダラは私とあまり変わらないように見えるけど」

「年は同じだ。俺も人から聞いた。」

マダラは再び歩きだした。 ライラもそれに続く。

「マダラは優しいね。」

「そんなことないと思うがな」

「ううん、優しいよ。宇迦は人間のことあまりよく言わなかったから…。」

「その宇迦ってやつは何処にいるのかわからないのか」

「うん…。いきなりいなくなってて。」

「そうか」

「私、宇迦を探したい。」

「そうだな…。落ち着いたら探しに行くか」

マダラの言葉にライラの顔はぱぁっと明るくなった。

「マダラ、ありがとう」

「おっ、お前。急に腕にくっつくなっ」

「どうして?」

「どうしてって……」

マダラは赤くした顔を見られないようそっぽを向いて歩いた。ライラはくすりと笑ってそのまま腕にしがみついたままマダラと歩いた。




胸があたって年甲斐なくドキドキしたのはマダラだけの秘密

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