女狐

□四章
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「ここぞ」


柱間に案内されたのは先程の客間から少し歩いた家のそばに建てられた蔵のようなところであった。
蔵といっても分厚い扉で隔てられているわけでなく鍵がついているわけでもない。
まぁ誰でも開けられるようにしているのだろう。


この中に稲荷寿司が入っているのだろうか。そんなバカな。
何か裏があるとしか思えないが柱間自身、嘘はついてないと言い張っていたのできっとこの中にそれが入っているのだと思いたい。
マダラが黙って扉を見つめていると柱間は蔵の扉をあけ招き入れた。



扉の先には柱間の木遁でつくったのであろう檻がありそのなかに何かがあった。明らかに稲荷寿司ではない。生き物だ。
光の加減で丁度中に有るものが見えないが気配でわかる。あれは生き物だ。

柱間は檻の近くまで歩きマダラを手招きした。

中に入ると丁度見えなかった檻の中が徐々にみえてきて柱間の隣に立ったときには中全体が見えた。
そこには確かに、真っ白な何かがいた。が
こちらに背を向けて寝ているため其がなにかまではわからない。

「どうだ、マダラ。お稲荷様ぞ」

柱間はいつもより少し高い声でそういった。その声がまたマダラをイライラさせた1つでもある。
マダラは取り敢えず柱間の首を締めることにした。


「貴様…。ふざけるのも大概にしろ。なんの種類の動物だが知らぬが、拾ってきたのを俺に押し付けるきか?」

「くっ…、マダラっ。よくこやつの姿を見てみろっ」

これ以上やっても意味がないと思い取り敢えず首を絞めるのをやめた。
すると柱間は膝をつきゲホゲホと咳をした。
「取り敢えずよく見てみろ。こやつは其処らの動物とは違うのだ」


柱間に言われマダラはもう一度檻の中に目をやった。

しかし背を向けてしまっているため白い毛並みのなにかということしかわからない。ギリギリまで檻に近づいた。

するとその動物はピクリと動いた


そしてゆっくりと起き上がり此方を見た


最初の一瞬赤く見えたがよく見ると深い黒の瞳だった。気のせいか?マダラはさらにまじまじとその姿をみた。
狼よりは一回りぐらい大きい。
全身白い艶やかな毛並みにおおわれ、耳の先端、手足の先端は少し黒みがかっている。
耳は大きく上にたっており、尻尾は太く長くゆらゆらと動いている姿はまた美しかった。

マダラはただひたすらにその姿を眺めた。

するとぽんと肩に手がおかれた

振り向くと柱間が此方を見ていた

「少し外にでるぞ」

「何故だ」

マダラが言い終わるより早く柱間はマダラの腕を掴んで外に連れ出した。
マダラはその行為がいたたまれなく嫌だった。
「おい、なぜ外にださせた」

「やはりか…」

柱間は少し思い悩んだ顔をした

どういうつもりなのか。
マダラはもう一度やつの姿を見たくなった。

マダラが蔵の中に戻ろうとするとまたしても柱間に腕を捕まれた。

「なんだ柱間、」

「マダラよ。少し話してもよいか?」

マダラは多少のやる気れなさがあったが、
腕を振りほどき柱間に向き合った

それから柱間はやつと出会った境遇を話始めた。





二週間前柱間は同盟を結ぶため、その一族の集落まで赴いた。
そして無事にその一族と同盟を結びその国をでた。
里付近になると柱間はすこし修行をしようと思い連れとわかれて近くの森へと足を運んだ。
修行を終わらせ帰るついでに俺にようがあったらしくうちはの集落へ行った。川沿いを歩いているとなにかが光に反射しているのがみえ近くに寄ってみるとこいつがいたらしい。
力なく横たわっている姿をみて俺の家に寄ることなく連れて帰ったらしい。

自宅に戻りとりあえず扉間や他のものに気づかれぬよう以前からあまり使われていない蔵を掃除しそこにいれた。

最初こそ心配してずっと様子を伺っていたがそのうち頭の中がこいつのことでいっぱいになった。

扉間がいないこともあってか仕事も身に入らず次第に書類をためるようになった。

そして気づいたら一日中こいつのことを考えている
そしてろくに外に出ることもままならないらしい

最早、病的の域にまで達しているようだ。


「うちはの集落で見つけたのだが、お主見たことないか?」

マダラは首を横にふった。大体あのような生き物は生まれて初めてみた。それがまさか自分の一族の集落にいるなんてとても信じられないと思った。

「マダラよ、少しのあいだだけ預かってはくれぬか?」


柱間はまるで祈願するようにそういった。
冷静になって考えれば、そんな得たいの知れぬものを預かるのはごめんこうむりたいが、マダラは内心しめたとも思った。

もっと見ていたい

「まぁ、そういう事なら」

マダラがそういうと柱間は少し驚いた顔をした。
だが直ぐにその顔は元に戻った。

「気づいているかも知れないが、あやつにはなにか、不思議な力がある」

不思議な力
それだけ聞くとなんとも優しい表現なきがする。
だが実際はとんでもなく恐ろしい力なのだ。

現に一瞬みたマダラでさえも蔵のなかに入りたくてしようがない。
二週間もみた柱間は一体どんな感覚なのだろうか。
早く蔵の中へ入りたい。
早く、早く、早く……

「よく我慢できるな、お前」
マダラは何かしらしていないと頭がおかしくなりそうだったので、なんとか声を絞り出した。すると柱間は蔵の方をみた。

「平常を装っているだけだ。俺だって蔵の中に入りたくて仕方ない」

マダラも蔵の方をみた。
あの中にあれがいると思うだけで体が疼く。

すると柱間が歩きだした。
負けじとマダラも歩きだした蔵を一緒にあけ中に入ってからは競るように歩いた。

早く、早く、早く……
ものの数秒でつくというのにマダラの頭はもっと早くと命令した。蔵にはいると案の定檻の中にいた

先程とは違い今度はこちらに顔を向けて眠っていた
マダラは何故か安心感を覚えた
姿をみたときの瞬間とてつもない安心感は、まるで中毒のような気分だった。
マダラはため息を一つ漏らした


「こりゃあ、お前が言ったお稲荷様ってのも分からなくわない」

「そうであろう?しかし一体こやつは何者なんだろうか」

柱間は顎に手を添えて首をひねった
マダラは檻の前にしゃがみ顔をのぞきこんだ


「俺は神だのなんだのはあまり信じないんだがな」


マダラはそっと呟くようにそういった


「よかろう、この狐は俺が預かってやる」


「お前、お稲荷様にむかって狐などと…。無礼者ぞ」


「ふん。大体この狐があの稲荷神だって証拠がない。それに狐のほうが親近感があるだろう?」


「はぁ、そうであろうか…」


「しかし、どうやって持って帰えるか」

「それなら木遁でつくったこの檻をそのまま使えばいい。」

「大きすぎるだろう」

「須佐能乎を使えばいいだろう」

「…。」

マダラは無言で柱間を睨んだ。須佐能乎なんか使ってこれを持ってかえることを想像してみる。目立つどころの騒ぎではない。そんなのもはやギャグだ。

「ハッハッハ。この際完全体とやらで持ってかえってはどうかの?」

柱間は腹を抱えながらそういった。マダラは奴の背中に蹴りをいれるとそのまま
その檻に手を触れた。

「このまま瞬身で帰る」

「いきなり痛いではないか。まぁ瞬身でもなんでもよいが…助かるぞ」

「これで少しは仕事やっとけよ」

マダラはそういい残しその柱間いわく稲荷神と共に家にとんだ。

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