女狐

□三章
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「おっ、おい。柱間、」


マダラはやっとのことで声をだした。

まさか、其れだけではないよな?
あれだけ意味深な発言をしておいて、まさか、まさかな…。


「んっ?なんだマダラ。俺の質問のほうがさきぞ?」

マダラが答えない限り柱間は先には進ませる気はなかった。面倒くさい男だと、マダラは思った。はため息を一つして仕方なく口を開くことにした。

「はぁ、全く。で、なんだったけか…」

「お稲荷さんは好きかと聞いたのだ」

「あぁ、稲荷寿司のことだろう?」

「お稲荷さんだ」

「だから、稲荷寿司の」

「お稲荷さんだ」

「…」


なんなんだこいつは。

頭でもやられてしまったのだろうか
いや、今考えてみると元々こんな感じだったかもしれない。
頑固な部分は昔からあった。
マダラもひとのことは言えないのだが、それ以上だと思った。
その頑固な部分が少し強くなっただけだ。
あぁ、きっとそうに違いない。

マダラは冷静になり頭の中を整理した。

そうだ、元々俺とこいつは考えも違ければ性格も違う。
それに柱間は元々よく言えば朗らか、悪くいえば能天気な男なのだ。
柱間にとっての真剣な話と俺にとっの真剣な話は訳がちがうのだ。

マダラはうんうんと頷き再び柱間の方へ目をやった。

「御主、今とんでもなく失礼なことを考えただろう」

「…いや。で、まぁ俺はよく食べるな」

「今の間はなんぞ…。まぁよい。で、御主はお稲荷さんが好きであるよな?」

好きであるよな?

マダラはその質問に疑問を覚えた。好物が稲荷寿司だと知っていたのならなぜあえて聞いてきたのだろう。
マダラは昔から好んで食べてはいたので知っていても可笑しくはなかった。
それなら尚更なぜ今さらそんなことをきくのだろうか。
マダラはぐるぐると思考を巡らせたかどうやら思い当たる節はなかった。

「好きであるなら問題なかろう。どうだマダラ。ここは一つ人助けだと思ってお稲荷さんを持って帰ってくれぬか?」

「家にか?なんだ、食いきれんのか?」

「いや、食べては駄目だ。」

「はぁ?」


先程からどうも話が噛み合ってないきがする。
というより柱間が合わせようとしていない、大体こいつは何を言っているんだ。何を隠している。

単に稲荷寿司を作り過ぎて御裾分けするということならまだ分かる。しかしそれを食べてはいけない意味がわからない。
なぜ食べてはいけない稲荷寿司を家に持ち帰らなくてはならないのだ。
柱間の顔をみるかぎり冗談を言っているようではない。
流石のマダラも徐々に苛々してきたようだった。
さっさと本題をはなしてほしい…。

「いや…あれだ、マダラ。お稲荷さんを少しばかり預かって欲しいのだ。なに心配いらない。ほんの一、二週間でよいのだ」


「預かるだ?大体食べるのを禁止しておいて何故家に持って帰らせる。それに預かるとはなんだ?」

マダラが少しばかり強い口調でいうと柱間は苦笑いを浮かべ、頼むと額を机につけた。

「おっおい。軽々しく頭をさげるでない、みっともない。それに何を隠している?さっさと話せ」

柱間は机につけていた額をゆらゆらと外し頭をあげた。そして真っ直ぐマダラの瞳を見た。
そこには先程の苦笑いからは想像もつかないほど表情が消えていて冷たい表情だった。

目に生気がない。
柱間のこんな顔は初めて見たかもしれない。
マダラはなにかいけないことをしてしまった気になった。
体が逃げろといっていた。
しかし柱間の目にとらわれたかのように動けなかった。
全身から冷や汗がでてくる。
きっと顔色は相当に真っ青であろうとマダラはおもった。
マダラは後ろに手をついて少し後ずさった。

「マダラ、こちらに着いてきてくれぬか?」

先程よりなんトーンも低い声で柱間はそう言い、たちあがった。
正直いったらとんでもない事が起きそうで行きたくない。
しかし柱間の言葉は有無を言わせず、現に今柱間の目線のさきはマダラであり立ち上がるのをまっている。

どうしたものかとマダラが眉を寄せると柱間がこちらに歩いてきた。

「なぁに、さっき話したことぞ。少しばかりお稲荷さんを預かってほしいだけだ」

ころっといつも通り、少しおどけた声で柱間は言った。

その落胆さが逆にマダラを警戒させた。

「本当にそれだけか?」

「あぁ、勿論そうだ」

どうやら嘘ではないらしい。
マダラは立ち上がり柱間のあとに続いて部屋をでた。

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