女狐

□二章
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昨日柱間から便りが届いた。

その内容は手短で簡単であり、またなんとも気にかかるものだった。


“相談があるから明日家に来て欲しい”


全く、あれほどまでに巻物を無駄に使っている者をみるのは初めてだとマダラは思った。
あの内容ならば巻物にする必要などないのに。
それにわざわざマダラにだけ読めるよう術式が課されていたこともマダラの疑問を増やした。
そんなにも読まれたくなかったのか、はたまたマダラと会うことを、秘密にしたいのか。


そこまでの意図はわからぬが、とにかく状況が状況であり、柱間になにかあったと見て間違いないとマダラは確信した。

朝食をとり身支度を済ませてから、ここから歩いたら一時間以上するであろう千手の集落にある柱間の家に向けて家をでるつもりでいた。

いくら向こう側こらの誘いであっても流石に朝早くは迷惑だろうと思いマダラはゆっくり散歩でもしながらいくことにした。
最初は修行でもしようとしたが余りにも昨日の柱間の便りが気にかかってしまい身に入らないのでやめにした。
随分とお早いですね、どちらへ?使用人が聞く。少し修行にでも。マダラは平気で嘘をつきその場を逃れた。
マダラが森で修行をすることは別に珍しいことでもなかった。
使用人はなんの疑いもなく軽く返事をすると掃除に取りかかった。マダラは心のうちで胸を撫で下ろす。変に心臓がばくばくと動く。別にに秘密にしてほしいなどと言われたわけではなかったが、どうしてだか誰にも言ってはいけない気がした。



其から少ししてマダラはただ黙々と柱間の家に向けて歩いている。
半分ほどきただろうか
所々に桜の木が植わっているのが見える。

もう春も深まってきており桜の花が咲き始めている頃だった。
しかしまだ咲き満ちてはおらず強い風が吹けばいくらか花びらを散らせる。

その花びらが体につくたびにマダラはその花びらをとっては眺めそれを地面に投げていた。その行動を永遠と続ける。はたからみれば変に思われるかもしれないが、マダラは昔からこうするのが好きだった。桜を眺めているとなんとも不思議な気持ちになる。つい、今自分がなにをしていたのかも忘れてしまうほどに。



そんなことを考えているうちに柱間の家についた。


時刻は十時頃

この時間なら問題なかろう

マダラは扉のまえにたち二三回ノックした。

すると中からこちらに近づいてくる足音が聞こえ目の前で止まった。
すると扉が開き久々にみる友の姿がそこにあった。

少し痩せたか

柱間は苦笑いを浮かべそこにたっていた。

「あぁ、マダラよ、よく来てくれた。さぁ入ってくれ」


久々に聞く柱間の声はひどく掠れていた。その理由を聞く間もなく、マダラは柱間の指示に従い中に入った。
連れてこられたのは客間であった。

別に畏まらなくても。マダラはそういったが、柱間は苦笑いをするばかりであった。
マダラは案内された客間の机に肘をつきぼぉっと辺りをみまわした。柱間はお茶を入れにこの部屋にはいなかった。

自分の家の客間と瓜二つであるこのへやはなんとも人の家に上がっている感じがしないとマダラはおもった。
しかしどこか違うのか、何か違和感を感じた。目線の少し先に白く小さな花が重力に従って飾られている。葉のほとんどは黄土色に変色し、もう何日も水をあげていないようだ。それは百合の花だった。

「マダラよ、熱いお茶でよいか?」

「あぁ、かまわん」


柱間は自分で入れたのか、お茶を二人分と茶菓子を少し持ってきた。
其にしてもこの家にはひとの気配がしなかった。
マダラは写輪眼を使ってないので確かにはわからないのだが、とにかく気配がないのだ。

「他のやつはどうした?」

マダラは疑問に思ったことをそのまま聞く。どうやら弟の扉間は里の創設のために外にでていてあと一ヶ月近くはもどらないらしい。


あぁ、だからこいつはこんなにも、自由にやっているのか。マダラは納得した。

もし扉間がいたら例え体調をくずしたとしても部屋に引きこもるのを、許してはくれないだろうと。

「なるほど。ところで相談したいこととはなんだ?」

マダラははそれが気になって気になって仕様がなかった。
マダラはいぬくような目で柱間をみるとやつはまたしても困ったような顔をした。
そしてパクパクと口を開いたり閉じたり閉じりしていた。

「なんだ、落ち着かないやつだな。さっさと言わないなら幻術でもかけて無理やり言わせるぞ」

マダラは用意された茶菓子を一つ口の中に運びながら少し面倒くさそうな声でそういった。

すると柱間は諦めたように口を閉じ真剣な表情になった。

柱間のこの顔は戦の時に見せるものそのままだった。
普段温厚な柱間からは想像出来ないような威厳がある表情。
普通の一般人でさえもこの顔をみたら柱間の強さがどれ程のものかわかるだろう。
久々にみたその表情にマダラは冷や汗をかき思わず茶菓子をてにしたまま固まった。



「なぁ、マダラよ」


柱間は重々しい口調で柱間はそう切り出した。

マダラも少し真剣な表情になり眉間に皺がよった。
そして柱間の目をじっとみた。漆黒の瞳からは何の感情も読み取れない。一瞬柱間の瞳が揺れたのをマダラは見逃さない。


「なんだ、柱間」



「御主



















お稲荷さんは好きか?」






マダラが持っていた茶菓子を落っこどしたのはいうまでもない。

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