女狐
□一章
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千手とうちは
この二つの一族が協定を結んだのはほんの1ヶ月ほど前のことだ。
最初こそ色々と準備があり忙しかったがここ最近になり早くも大分落ち着いてきた。
“火影”の座に誰がつくか、
最近の巷じゃこの話で持ちきりであった。マダラ自身この話題で頭が一杯であるが誰がなるかなど聞かずとも皆解りきっていた。
千手柱間
マダラの憧れであり、忍び世界の頂点であり、またマダラの友である男だった。柱間はマダラに“火影”をやって欲しいなどといってはいたが所詮そんなことはおきないとマダラ自身わかっていた。
自業自得とも言えようか。
うちはと千手が協定を結ぶのにこれだけの時間が掛かったのはなにを隠そう自分ののせいだとマダラは思っていた。
最後まで皆の意見を無視して独りでに千手に戦をしかけていた。
ついには千手に亡命するものまで現れる始末。
そんなマダラが皆の頂点とも言えよう“火影”になんてなれるはずなかったのだ。
弟と約束した平和はそこにあると言うのにマダラの心は穏やかではなかった。
親も他界し弟を失い、守ろうとしていた一族の者でさえマダラを遠ざける。
幸いにもマダラについてくるものもいるが至って少数だった。マダラの心にはどす黒い、まるで半紙一面に染み渡った墨のようだった。そんな心境のなかマダラは素直にこの里の誕生を喜べないでいたのだった。
日常で話す相手といったら用事があるうちはの者か里の創設の関係者か柱間ぐらいであった。
唯一安定した話し相手であるのが千手、しかも長だというのはなんとも可笑しな話であるとマダラは思った。
そんな柱間も2週間前に他の一族との同盟の話をつけにいって帰ってくるやいなや自室に籠りがちになり仕事もたまってきているそうだ。その理由については友であるマダラでも知らなかった。
具合でも悪いのだろうか。
しかし具合が悪いなら連絡ぐらいよこしても構わないのではないか。
ただ単に面倒くさくなってさぼっているのか。
しかし奴はそんな男ではないことはマダラはよく知っていた。
里の創設の為の重要な峠はもう過ぎたかも知れないがやるべきことはたくさんある。
そんななかで奴が仕事を放棄するとは思えない。柱間はそういうとこに男である。
マダラはそんなことを考えながら自宅へ戻った。
扉を開けると、お帰りなさいませ、と使用人が出迎えた。
そのうちの一人が連絡用の巻物をもっていそいそとやって来た。その巻物は見たところ千手からのものだ。
「柱間様からのお便りです」
「柱間から?」
マダラは其を受け取り、自室で読むことにした。
汚いのが余り好きではないマダラは以前から物は余りおかない方ではあったが最近では色々な書類が溜まってきてしまった。初めはこんなものだろうと半ば諦めてはいたが改めて見るとこれはひどい。マダラは普段であれば目につけばすぐに行動する人間であるが、そんな書類はお構い無しとばかりに書類を机から押し退かし柱間からの便りである巻物をひろげていた。
其処には普段見ることはなかった柱間の文字があった。
思っていたよりも綺麗に、力強く、そして一度に書いたのか、文字の最後のほうは掠れていた。
しかしそんなことは全然頭に入って来なかった。マダラはその内容に唖然としてしまった。
そこにはこの巻物の意味がないほど手短にこう書かれていたからである。
“相談があるので明日家に来て欲しい”
一体奴になにがあったのだろうか。