神代桜の奇跡
□弐捌
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「ライラ様、鷹がかえって来ました。」
朝目覚めると外から女中の声がする。近くの羽織りものを肩にかけ外に出ると女中の言う通り昨日飛ばした鷹が帰ってきていた。この時間にくると言うことはまた見てすぐに書いてくれたということだろう。右手を上に出せば鷹が降りてくる。軽く頭を撫でてやれば鷹はクルルと喉を鳴らした。元々この鷹はマダラに仕留められそうなところで私が助けたのだ。その為か最初のうちは私にしかなつかなかった。ある日私が留守の間仕方なくマダラに世話を頼み出かけた日があった。そして夕方家に帰るとなんとマダラの腕に鷹が止まっていたのだ。最初は違う鷹かと思ったが首に巻かれた赤いスカーフは紛れもなく私がまいたものだった。何があったのかと聞くと、いや、なんとなく、と曖昧な返事が帰ってきた。それいこうこの鷹は渡とマダラにはなつくようになったのだ。鷹を腕に乗せたまま部屋に入り囲炉裏のそばに座る。ぱちぱちと炭が燃える音のなかマダラからの文をみた。見慣れた字でかかれた文をみると嬉しくてしょうがない。内容は主に戦況が中心だった。今はどの辺りを攻めていて、彼処を陥落させたとか、ここが取られてしまっただとか。内容からしてどうやら千手に押されているようだった。一刻も早く駆けつけたいが指示があるまで動くわけにはいかない。危険になったらすぐに駆けつけるよう命令すると言われているため、まだその時ではないのだと言い聞かせた。私はマダラに比べて戦の経験は少ないが、戦がどれだけ過酷なものかなのは分かる。だから今回の戦が何を意味しているのかも知っている。だからこそ、私はマダラに…
「ライラ様、顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」
『えっ、ええ。少し冷えてしまったみたい。大丈夫、心配いらないわ。』
「そうですか。マダラ様からはなんと?」
『あまり状況が思わしくないみたいで。まだ当分は、』
「まだまだかかるのですね……早く、休」
「こらっ、」
隣に座っていた女中が 隣の10代後半程の女中の膝を軽く叩いた。
「もっ、申し訳ございません」
「ライラ様、どうかお許し下さい。この子はまだ行儀がなっていなくて……」
『いいえ。どうか謝らないで』
私が立ち上がるとてに乗っていた鷹が外へ飛んでいった。私は囲炉裏に新しく炭をいれた。すると消えかかっていた火が再び勢いを返し燃え上がる。
『私もそう思います。』
「えっ?」
『だから、貴方の言いたいことは分かるわ。それに、怒るだなんてとんでもない』
私の言葉に女中たちは驚いたのかみんな目を見開いていた。新しい炭をいれた為か徐々にあがっていく温度。私は囲炉裏から離れ襖を開けた。
『この話はこれで終わりにしましょう。』
部屋から出ると一気に体温が奪われる。はぁっと手に自分の息を吹き掛ける。こんななか命懸けの戦をしているマダラたちのことを思えばこれしきのことで弱音ははけない。私は外に出て敵を待ち構えた。