神代桜の奇跡

□弐弐
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マダラと共に部屋に戻るとすでにヒカクとイズナが起きていた。二人とも昨日の話を早くききたいようでどこか落ち着きがない。改まって四人で座ってみるも、なかなか言葉を発せず暫し沈黙が続いた。このままじゃダメだと思い話そうとするがはて、何処から話したらよいのやら。私が黙り混んでしまったので代わりにマダラが話してくれた。流石は上に立つだけあってマダラは話が上手い。マダラが話終わると、マダラは何かないのかと言いたげな目で見てきたが正直マダラの言葉だけで十分だった。私が特に、と一言発すると再び沈黙が訪れた。当の本人がこれでいいのかとも思うが本当にマダラが全て代弁してくれたので問題はない。今度沈黙を破ったのはイズナだった。

「それでライラは、元の時代に帰りたいの?」

一瞬意味がわからなかった。元の時代に帰りたい。そんなこと考えてもなかったからだ。いや、考えないようにしていたのかも知れない。どんなに願っても所詮帰れはしないのだから。だったら帰りたいだなんて思わないほうがましだ。それに、そんなことを抜きにしても私はさして帰りたいとは思わないのだろう。どうしてだかわからないが私はこの時代で生きたいと思う。この人たちと過ごしたいと。そうありのままに話せばイズナはよかったと微笑んでくれた。ヒカクもイズナと同様の反応をしてくれた。隣に座っているマダラの顔は見えない。顔を伺おうとしたがナゼダカ気が引けたのでやめた。すると今度はヒカクが口を開いた。

「此れからも戦には…」

それは愚問だとおもった。ここまできて戦に出ないなんてことは許されない。それはヒカクもわかっているだろうに。どうしてそんなに辛そうに質問するのだろうか。仮に私が弱音を吐けば、戦場に行かなくて済むのだろうか。どう考えてもそんなことはあり得ない。今は少しでも戦力が欲しい時。例えそれが女であろうが子供であろうが、戦う力があるのなら戦場へ向かわせる。そういう時代なのだ。前の時代もそんなんだったなと思い出してみると、少し悲しい気持ちになった。私はずいぶんと長い時間を越えてしまったが、その間ずっと、世界は戦いで染まっていたのだろう。早くこの戦を終わらせたい。だとしたら私は戦場に行って少しでも早く平和をつかみたいとも思う。私が首を縦にふるとヒカクが一瞬悲しい顔をした。しかしすぐに元の顔に戻った。その顔は同情ではなく、仲間に対する眼差しだ。
そしてそのあとはイズナとヒカクに晶遁やら佐久夜やらをみせた。二人とも目を丸くして見ていた。

「わぁ、これは凄い。とてもいい術だね」

「ライラ様らしいですね。」

二人は口々に褒めてくれたが内心穏やかでないことはすぐに分かった。私も、二人も敢えてそこには触れなかった。
それから朝食をとったのだが、なんとも言えぬ空気になってしまった。皆平然を装ってはいるが何処か落ち着きがなかった。そんな空気に堪えられなかったであろうイズナが私に過去のことについて色々と聞いてきた。

「もとの時代はどんな感じだったの?」

『基本は変わらないわ。まぁ、服装とかは少し違うかしら?』

私がそういうと、イズナはどこが違うのと言葉を続けた。まぁ、ほとんど変わらないのだが私の時代では女は外では着物しか来ていなかった。しかしこの時代ではもっと軽装である。私は初めてこの時代に来て服を用意されたとき少し戸惑ったのを思い出した。こんなに薄いもので過ごすのかと。まぁなれてしまえばそんなものなのだが。他にもうちはの地区も大分変わった気がする。昔はここまで立派な建物はなかった。どこの家も簡単な作りだった。しかし、庭に植えられていた桜もそうだがうちはには昔から桜の木が多かった気がする。神代桜もその一つだ。そういえば、私はこの時代にきてから神代桜を一回も見ていない。桜の時期は終わりかけて来ているがまだすべてが葉桜なわけではないだろう。後でマダラにお願いして連れていってもらうように言ってみよう。
気がつけば先程までの空気はなくいつも通りに戻っていた。私はほっと胸を撫で下ろし、ヒカクの作ってくれた料理に箸を進めた。

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