神代桜の奇跡

□弐拾
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風呂から出て軽くタオルで髪を拭き部屋に戻ると既にライラは眠っていた。無理もないだろう。俺はそのまま隣に引かれている布団の上に座った。ライラはどうやら髪も乾かさないで寝てしまったらしい。風邪を引いてしまうので起こそうかと思ったがやめた。念のため俺の掛け布団をライラに掛けておいた。ライラの寝顔を除きこむとすやすやと気持ち良さそうに寝ていた。普段は凛としていて大人っぽいが寝顔はあどけなく可愛らしかった。とても安心仕切っている。信頼されているのだと思うと自然と顔がほころぶが同時に大分警戒心が足りないのだなと思う。男の前でこんな姿で寝ていたら如何にも襲って下さいと言っているようなものだ。俺だから手は出さないものの他の男だったら襲っていても可笑しくはない。いや俺も例外ではないかもしれない。俺は濡れている髪をそっとすくい上げそれでなんとかとどまり自分も寝るこにした。疲れていたため寝付くのにはそんなに時間はかからなかった。


−−−−−−−−−−



朝目を覚ますと目の前にマダラの寝顔があった。思わずビクッと肩を震わせたがマダラが起きてしまうと思いじっとした。こうして寝顔を見ているとなんとも可愛らしい。くせっ毛の真っ黒な髪。つり上がった目にすっと通った鼻筋。こうしてずっと寝顔を見ているとなんだか黒い猫に見えてきた。一旦意識をしてしまうともうそれにしかみえない。

『可愛い』

私は我慢出来ず彼の頬を撫でた。少し体は動いたがどうやら起きてはいないようだ。一度やってしまえば調子に乗ってしまうのが人間だ。私はマダラの髪の毛をそっとなでて、しまいにはぎゅっと抱きついた。その時突然マダラの体が起き上がり視界が逆転した。
そしてそのまま首に顔を埋めてきた。

『っ、…マダラっ』

「朝からあまり煽らないでくれ」

マダラは顔を上げ私の顔の横に手をついた。髪の毛が顔にあたってくすぐったい。影になっているが口元が笑っているのがみえた。

『いつから起きていたの?』

「##NAME1##が起きる前からだ。」

『なんだ、最初からじゃない。ずるいわ』

「くっくっ。人が寝てるのをいい気に、好き勝手するのはずるくないのか?」

『もう…』

私はあきれ気味に少し笑ってみせた。するとマダラも可笑しかったのか薄ら笑いをした。私が片手でマダラの胸を
押すと大人しく上からどいた。

「俺はまだ寝る」

マダラはそういい自分の布団へ戻っていった。なぜ私の布団に入っていたのかはあえて聞かないことにしよう。私のほうはすっかり目がさえてしまい眠れそうになかったので起きることにした。ささっと着替えをすまして鏡の前にす髪を整えた。鏡台には昨日つけていた桜の簪がおかれていた。私は軽く髪を結ってその簪をつけた。そして一度家の庭に出た。この家、いや屋敷といったほうがよいのかもしれないが、とても大きな敷地で池やら、木などが植えられている。観賞用なのかところどころに桜のきも植えられており、今の時期では半分ほど葉桜になっているが地面に落ちた花びらはとても綺麗だ。。近くに落ちていた花びらを一枚とってそれを手のひらに乗せる。

『晶遁の術』

すると一瞬でその花びらの周りに水晶ができ固まってしまった。どうやら感覚は鈍っていないようだ。私の瞳はすでに万華鏡になっていた。記憶が戻り自分が以前どのように戦っていたのかを思い出した。当時はよくこの佐久夜をつかい敵の動きを止めていたものだ。しばらく体を慣らすためにあれやこれやと術を試した。きずくとあたりが水晶だらけになってしまった。

「ライラ、大丈夫か」

今さっき起きてきたであろうマダラが寝間着のまま庭にやってきてこちらを見て驚いた顔をしている。大方この水晶に驚いているのだろう。

『これは晶遁という術なの』

「ほぉ、これがお前の能力か」

『えぇ、砕いたらその物体は再起不能よ。』

「それは厄介だな。どうやって解くんだ?」

『私自身この水晶を解く方法はないのだけれど、高温で水晶を溶かすことは可能よ』

マダラはそうかといい印を結んだ

「火遁豪華球の術」

マダラの口からおおきな火の玉がでて、あたり一面を炎で覆った。その炎が水晶を溶かしきらきらと蒸発する景色はとても綺麗だった。あっという間に庭はいつもの景色となった。

『綺麗』

「いい術だ。これはライラによく似合う」

『そうかしら』

「火遁で元に戻るというなら、うちはとの相性もいい。」

そういうとマダラは鼻をすすった。この時期の朝方は気温も低く肌寒い。流石に寝間着のまま外に出ては寒いだろう。部屋に戻ると聞けばあぁと短く返事をした。一緒にもどろうと隣を歩くと手を絡めとられた。そのままぎゅっと強く握られ、マダラに引っ張られるように家の中に入った。どうしてかマダラといるとなにかこう、胸に引っかかる。それは記憶がなかった時から感じていたもので、記憶が戻った今もその謎は解けない。ひょっとしてまだ思い出していないことが?確かに、最初からなにか物足りないとは思っていた。それがマダラとなにか関係があるのだろうか…。しかし今こうして二人でいるのも本来決してありえない事なのだ。ましてや私の記憶にマダラが出てくることなど絶対にない。考えすぎはよくない、今を生きよう。握られた手をぎゅっと握りしめ、頭を降って忘れることにした。

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