神代桜の奇跡

□拾捌
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「ライラっ」

ライラの寝ている部屋にあわてて入るとじじぃが隣に座っていた
俺はそっと近寄りじじぃが座っているほうと逆の位置に座った

「マダラよ…」

「俺は」

俺はじじぃに被せるように言葉を放った

「例えライラの心に他の人がいようとも、俺はライラをずっと愛し続ける」

俺ははっきりとした口調で言った。するとじじぃはすこし間をあけてからそうかと言った。そしてライラにまた視線を落とした。

「ライラ様の記憶は徐々に戻っていくはずだ。だから…」

「あぁ、わかっている」

じじぃの名前をきいただけでこの有り様なのだ。もしこの話をしたらライラはもっと酷く体調を崩してしまうだろう。ゆっくり自分自身の力で思い出すほうがよいことはじじぃも俺もわかっていた。だからこの話は誰にも言ってはいけない。勿論ライラにも…

「御主にはかなり辛いことかも知れんがのぉ」


「それでも俺はライラを愛してる。この気持ちは変わらない。」

俺はライラの手を握った。すると手のひらになにかが当たり、それは少し熱を帯びていた。。俺はライラの手を上にあげた。俺の手に当たったのは指輪だった。

「この指輪が…」

この麗桜の指輪こそ俺とライラを引き合わせたといっても過言ではない。元々は俺とライラは会うことすらない存在だったのだ。

「その指輪がマダラとライラ様を出会わせたのじゃな。これもなにかライラ様の願いと関係有るかもしれんの」

「あぁ」

だが本当にライラはなにを願ったのか。この時代にきた理由とは一体何なのだろうか…

「わしももう長くはない…。だからこのことを知るのはお前だけになる。」

俺ははっとして顔を上げた

「じじぃ」

「御主の相談に乗るものが居なくなり苦しむときも有るだろう。だがどうかライラ様を信じそして二人で人生を共にして欲しい。」

俺はゆっくりと首を縦にふった。俺が物心ついた頃から既にあれやこれやと世話を焼いてくれた人なだけに俺のことをよく分かっていると思った。
すると握っていたライラの手が俺の手を握り返した

「ライラっ?」

そしてゆっくりと目を開いた。ライラは辺りを見回した。

『私は…』

「ライラ様…」

じじぃが呼ぶとライラはじじぃの顔を見た。

『貴方は…チカゲ?』

「えぇ。そうです」

ライラは俺の手をさらに強く握った。まさか思い出したのだろうか

『さっきまで夢を見てたと思ったんだけど、どうやら私自信の記憶のようね。チカゲがそんな年になってるってことは…』

そういいライラは繋がれた手を見た。その視線の先はやはり指輪だった。

『この麗楼の指輪の力なのね…』



麗楼の指輪、その単語が出てきたということは既に全てを思い出しているのだろうか。だとしたらあの男のことも……

「えぇ、御察しの通りでございます。」


ライラは深く息をすい、片手で頭を押さえた。

『でも、一体私は何を願ったのかしら……』

「それは覚えていないのか?」

『えぇ、…なにか、こう……大切なものを忘れている気分』

大切なもの。どうやら指輪に願ったことを忘れているということは、あの男の記憶だけすっぽり抜けているのだろう。俺はその男の名前も知らなくては会ったこともない。ライラ自信が自分で思い出すしかないのだが、俺は心では思い出して欲しくないと願った。このままずっと俺だけを見てくれたらどんなに良いだろうか。


『本当に何だった……っ、』

ライラは今度は両手で頭を押さえ縮こまった。
無理に男のことを思い出そうとするとこうなるようだ。やはり時間をかけてゆっくり思い出すしか道は無いのだろう。

「無理に思い出さなくても大丈夫です。ゆっくり思い出していきましょう」

『ありがとうチカゲ。そしてマダラ。』

ライラは握られた片手をもう片方の手を添え俺の手を包み込むように重ねた。
そしてにこりと微笑んだ。

「礼には及ばん。」

俺はそう答えたが内心心は穏やかではない。もしその男のことを思い出したらライラは過去に帰りたがるのだろうか。その笑顔はもう向けられることは無くなるのだろうか。そう考えるだけでも胸が張り裂けそうだった。これ以上思い出して欲しくない。これが俺の率直な意見だった。

その後はこれからのことをじじぃとライラと俺の3人で話し、一通りの方針を決めた。取りあえずは記憶が戻ったことは言うつもりだが麗楼の指輪のことや時代を越えたことなどは極秘扱いだ。その事についてはライラも同意してくれた。戦に参加することについては俺は猛反発したがライラは頑なに首を縦にふらなかった。自分も忍である以上戦にでる必要がある。ライラはそう言って主張を曲げなかった。最終的にはその話を黙って聞いていたじじぃがライラ側についてしまったので、今度は俺が首を縦にふるしかなかった。そうこうしているうちに時間がたってしまい、家についたのは大分夜も深まった頃だった。

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