神代桜の奇跡
□拾漆
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『チカゲ…』
じじぃの名前を呼ぶやいなや、ライラはすぐに意識を手放した
「ライラ様っ!」
すぐにじじぃが受け止めたためライラに怪我はないよだ
俺はすぐにそこに駆けつけライラを受け取った
「おい、これはどういうことだ?」
俺がそういうとじじぃ、すなわち長老のチカゲは俯いてしまった
そして暫くすると顔をあげ真剣な表情になっていた
「皆のもの、ここはワシとマダラだけで話がしたい。席をはずしてくれぬか?」
「でっ、ですが長老」
「外せといったのがわからぬのか?」
最後に見たのはいつ以来だろうか、じじぃは流石長生きしているだけのことはある貫禄と圧力を放ち皆は黙るしかなかった
「わかりました…」
そういい渋々と出ていった上役達
この部屋には俺とライラとじじぃだけになった
「マダラ、彼女を隣の部屋の布団に寝かせておいで」
「あぁ、わかった」
俺は言う通りにライラを横抱きにし隣の部屋の布団に寝かせた
ライラの顔は普段よりさらに白くなっていて見るからに体調が悪そうだった
彼女の頬をそっと撫でまた隣の部屋に戻るとじじぃは難しい顔をしていた
「じじぃこれは一体…」
「マダラ、彼女との出会ったときのことを詳しく教えてくれないかの?」
質問しているのはこっちだというのにもかかわらずじじぃは逆に俺に質問した
「ライラと出会ったのは聞いていると思うが一週間前ほどだ」
「それはしっておる。何処で出会ったのだ?」
「あの神代桜のところだ。確かあれは夜だったか」
「やはりのぉ…。通りで皆が騒ぐ訳じゃ」
「騒ぐ?」
「桜の花が咲いたのだろう?あれはお前も知っていると思うがもう何十年も花を咲かしていない」
あぁ、と俺は声を漏らした。そのことは俺もそれは知っている。というよりライラが来るまでそこにいって花が咲いているかどうか確認するのが俺の日課でもあった。それとこれとなにが関係あるのかは俺にはわからなかった
「マダラ、御主には信じがたい話かも知れないが…今からわしの話を聞いてほしい」
じじぃはそういい俺の目を見た。俺は息をのみ頷いた
「まず最初に彼女はれっきとしたうちはの忍だ」
俺はそれをききそとと胸を撫で下ろした。決して彼女の言葉を疑っていたわけではないが、心の何処かでもし彼女がうちは一族出はなかったら、敵である一族の者だったらと考えている自分がいた
「そして彼女はこの時代の人ではない」
この時代?俺は意味がわからずじじぃの言葉をまった
「彼女は既に写輪眼、万華鏡写輪眼を開眼している。そしてその眼に宿っている彼女独自の能力は佐久夜」
佐久夜。確かそれはうちはの中でもある家系のものにしか使えないとても貴重な能力。しかしその家系は断絶したと言われていた
「御主も聞いたことぐらいはあるだろう。ライラ様はその佐久夜を使える家系の方だ。そしておそらくその能力で、この時代へ…」
「話が大きすぎる。大体佐久夜にはそんな能力があるのか?」
「佐久夜は元々は晶遁を操れる能力じゃ」
「じゃあ何で」
「おそらく麗楼の指輪の力が大きいだろう」
「麗楼の指輪?ライラがつけている指輪のことか」
「あぁ。あれもライラ様の家系に伝わるもので神代桜を御加護をする証でもある指輪だ。そして麗楼の指輪は持ち主の願いを1つだけ叶えるそうだ。だがあまりに膨大な力を使ったため一時的に記憶を無くしてしまったのだろう」
「そんなお伽噺みたいなことを信じろと?」
「お伽噺か…。確かにそうかもしれないがこれはおそらく事実じゃ。それに此で色々と辻褄もあうのではないか?」
「…」
俺はじじぃから聞いた話をもう一度頭のなかで整理した。どれもにわかに信じがたい話ではあるがもしそれが本当ならば確かに辻褄があうのだ。何故ライラがいきなり現れたのか。そして本当にうちはの忍であるのか。そして何故何十年もの間桜が咲かなかったのか。
神代桜は主の帰りを待っていたのだろう。そして主であるライラが帰ってきたことにより再び花を咲かせたに違いない。どうもタイミングが合いすぎると思った。ライラが現れた瞬間から花を咲かせたのだから。
「ならライラはどうしてこの時代に来たのだ?ライラの願いとはなんだったんだ?」
「さぁの、わしにもそこまでは分からん。只…」
じじぃはそう言ったきり口を閉じてしまった
「どうした?」
「御主には少し酷かもしれぬがのぉ…」
酷かも知れない。そう言われた瞬間嫌な予感がした。聞きたくない。そう思ったが彼女のことを知りたいという自分もいた。
「俺は大丈夫だ。少しでもライラのことを知っておきたい」
俺がそういうとじじぃは俺の瞳をじっと見た
「ライラ様には思い人がいた」
俺は胸に何かが刺さったような感覚がした。嫌な予感はやはりあたってしまった。
「そしてその方はうちはの忍でありライラ様を千手の攻撃から庇って亡くなられてしまった。そしてそのあとライラ様も亡くなられたと聞いていたがおそらく…」
「その時に術を使ったのだな」
俺がそいいうとじじぃは頷いた
「マダラ。ライラ様をどうか幸せにしてあげて欲しい。例え昔ライラ様に思い人がいたとしても、己自身を愛してもらいそしてライラ様を、愛して欲しい」
「少し散歩でもしてくる」
俺はじじぃから逃げるように外にでた
外には散った桜の花びらが地面に落ちていた。それが人に踏まれて土がつき薄汚い色に変わっているのはまるで今の自分を写しているようだった。ライラと初めてあった時はまるで運命の出会いかのように心が引かれた。だがしかし今はどうだろう?まるでこの桜の花びらのように汚く濁って元の形をなくしていた。俺は只ひたすらその光景を見ながら歩いた。気づけば俺は神代桜の前にいた。大分歩いたらしく日も傾いていた。
俺はライラと初めて会った場所へと腰をおろした。ふと地面を見ると大分散ったであろう花びらが落ちていた。この桜の花びらはさっきまで見ていた花びらとはやはり違う。そして俺はそっとそれに触れた。そして目を閉じてじじぃの言葉を思い出した。
己自身を愛してもらい、そしてライラを愛す
ライラが何を願いこの時代にやって来たのかはわからない。だが俺の気持ちは最初から決まっていたではないか。
俺は立ち上がり神代桜へ向き直った
「俺は何があってもライラを愛すと誓おう」
そしてそっとその木を撫でると風が吹いた
俺はその風に背を押されるように来た道を引き返した