神代桜の奇跡

□拾陸
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“綺麗な指輪だな”


“この指輪は代々私の家系に伝わる物なの”

“ほぉ、なら相当価値のあるものなんだろうな”

“そうね、一応この世に一つしかないものよ”

“ひっ、一つだと”
男はそういうとその指輪から手をはなした

“別に触っても大丈夫よ”

“だが一つしかないと聞くとな”

そういい男はもう一度私の手を上げてまじまじと指輪を見た

“この指輪は持ち主の願いを一つ叶えてくれるの”

“願いを?それでその願いは叶ったのか?”

“いいえ。だってまだ願い事をしてないもの”

“そうか、何故だ?”

“本当に叶えて欲しい願いができたときにまでとっておくつもりよ”

そういい男の口角があがったきがした
相変わらず顔のところはもやがかかっていてよくわからない


ねぇ、貴女は一体誰なの?










「ライラ、ライラっ」


誰かが私を呼ぶ声がして目を覚ますと目の前にはマダラの顔があった
私は驚きのあまりガバッと体を起こした

「ライラ、よかった。無事か?」

マダラはほっとした様子でそういった
一体何故そんなに焦っていたのか

「その指輪がすごい光っていたからライラに何かあったのかと…」

『指輪が?』

私は指輪に視線を落とした
それは何時もと変わらない様子だ。さっきまで光っていたなんて
そもそも光るような物なのだろうか?それに先ほどまで私が見ていた夢も丁度指輪のことだった
とても偶然とは思えない。もしかしてこの指輪が…?

「ライラ?」

マダラが心配そうに顔をのぞきこんできた
私は先ほどまでの夢のことを一通り話した
言おうか言いまいか迷ったがとても偶然とは思えない出来事だし、いっておいた方がよいだろう

「なるほどな…」

マダラは顎に手をあててなにかを考えていた

「それはライラの言う通り記憶なのかもな」

『やっぱり…』

「まぁ、とにもかくにも記憶に一歩近づいたな」

マダラは私の頭を撫でた
なんだかそれがすごく心地よくて、でも子供扱いされているような気もして
とても不思議な気分になった

「今日は上のところに行こうと思っていたのだが、またの気にするか」

『いいえ。問題ないわ。それに早いほうがよいだろうし…』

「本当に大丈夫か?」

私が頷くとマダラは今度は私の頬をなでた
私がクスリと笑うとマダラは立ち上がった

「食事の支度がもうじき出来る。着替えたらこい」

『ええ。わかったわ』

そう言うとマダラは部屋からでていった
私も言われたとおり身支度を素早く済ませ朝食をとりに部屋をでた
部屋をでたときにもう一度指輪に視線を落とした
もしあれが記憶だと言うのならこの指輪は私の家系に受け継がれている、私の記憶にとって貴重なものなのだ
確かに、この指輪をはめたときなんとも言えない懐かしい気持ちになった気がする
それにこの指輪はどこか普通のものとは違うと思う
指輪にはめてある白い石をそっとなぞると微かに熱が残っていた
きっとさっきまで光っていたせいだろうか

「あっライラ、おはよう」

『おはようイズナ』

考え事をしながら歩いていたため全く気がつかなかったが前方にイズナがいた

「今日は長老に会いにいくんだよね」

『えぇ、なんだかとても緊張するわ』

「ははは。まぁ確かに怖い人だけどね。兄さんもあの人だけには逆らえないよ」

『まぁ、そんな怖い方なのね』

「まぁ年も年だしね。でも悪い人じゃないから安心していいよ。あっ、この部屋だよ。どうぞ、」


イズナがふすまを開けてくれた
この外見で更に紳士的ときたならばさぞかしもてるのだろう

「おはようございます、ライラ様、イズナ様」

『おはよう』

部屋に入ると既にマダラは座っておりヒカクが食事を並べていた
流石はヒカク、女の私より料理が上手いのではないかと思うほど朝から込み入ったものをつくってくれる

「相変わらずヒカクは料理上手だね」

『本当にお上手だわ』

「いやいや……照れますな。ささっ、さめないうちに召し上がって下さい」

私達は言われたとおり席につき食事をとった

やはりヒカクの料理の味は抜群だ
今度こつでも聞いておこう。そんなことを考えながら食べているとヒカクが話しかけてきた

「今日は長老様のところへ参るのですよね?」

『えぇ。そのつもりよ』

「…お気を付けて下さいね」

『さっきもイズナに言われたけど…そんなに怖い人なのね』

「そろはもう。うちはの最年長であり、色々なことを知っておられる方ですから…」

「俺はあのじじぃは好かん」

すると今まで黙っていたマダラが口を開いた

「またそんな呼び方をして…。」

ヒカクがあきれたようにいった

「小さい頃から知ってるんだ。別に今更呼び方なんてどうでもいいだろ」

『それならイズナも同じじゃないかしら?』

私がそう言うとマダラはばつが悪そうな顔をした

「おっ俺は、イズナみたいに器用な人間じゃない」

『ふふっ、そうかもしれないわ』

「はぁ、それより早く食べてしまえ。年寄りってのは暇で朝が早いんだ。」

私ははっとして急いで食事をとった。長老ともあろうかたを待たせてしまうなんてこと…考えただけでもおそろしい

「まぁそんなに急がなくても。行くのはお昼ごろなんでしょう?」

『でも支度は早いほうがよいでしょう?』

私がそういうとヒカクは感心するといい腕をくみ首を縦にふった
私は素早く食事を終えると支度をするため部屋にもどった
支度といってもほとんどないのだが一応忍者であるため忍具は最低限持っていくことにした
うちはの敷地内であるから必要はないのかもしれないけど、万が一のために忍具は常に持っておけとマダラにいわれていた
一通り確認し終わり鏡で外見も整えた
これでいつでも行けるといった状態でマダラを待つことにした
ここに来てからあまりたってないのだが随分慣れてきた。しかしまだ知らないこともたくさんある

ふと横をみると先ほどまで使っていた鏡に自分が写っているのがみえた
これは私がここに来てからマダラが揃えてくれたものだ
化粧台には引き出しがついていた
あまり気にしていなかったがふとそれを開けていた
するとコロンと音がした。なにがはいっているようだ
なかを覗いてみると白粉や口紅などのまだ使われていない化粧道具が何種類も入っていた
もう一段下を開けると簪やらその他いろいろ髪飾りもはいっていた
こんな些細なところにまで気を使ってくれるなんて…

「ライラ、そろそろ行こうと思うのだが大丈夫か?」

急にマダラが入ってきたので私は驚きビクッと肩が跳ねた
そのままマダラは私の元まできた

「化粧でもするつもりだったか。ならばもう少しかかるな。」

マダラは私が化粧をするのかと思ったらしくその場に座り込んだ

『いえ違うわ。ただこの引き出しに何が入っているのか気になって』

「なんだまだ開けていなかったのか」

『まさか物が入っているなんて、空だと思ってたの』

「くくっ、そうか。なら折角だ、今日使えばよかろう」

『今日!?』

マダラはそう言うと部屋を出ていき少しすると二人の女中さんを連れて戻ってきた

「ほら、まっててやるから」

マダラはどこかからかっているように、意地の悪い笑みを浮かべてそういった

「ささ、ライラ様こちらへどうぞ」

私はやや強引に鏡の方に向かされると鏡越しのマダラと目があった


「マダラ様、女が化粧をするときは席をはずすものですわ」

「はぁ、分かった。後ろを向いているからさっさと始めろ」

鏡越しにみるマダラはきちんと後ろを向いている

そんななか私は女中たちによってあれよあれよというまに化粧が施された

「簪はいかがなさいましょう」


私は一番最初に目にとまった簪を指差した
それは先端に臼ピンクの丸い石がついておりそこに桜の花びらが描かれている。
そしてその石と簪の棒の繋ぎめからは二つの桜の飾りが垂れている。
どこかこの指輪に似ているデザインだ。
『これでお願いできるかしら?』

「はい、かしこまりました」

女中は私の髪を上げその簪で留めた

「よくお似合いですわ」

「本当にお美しい、」

『いいえ、貴女たちの腕がよいのですよ』

「そんなことないです。」

「それにライラ様は化粧をしなくてもお美しいのでうまいも下手もありませぬ」

『ふふっ、お世辞が上手いのね』

「おい、出来たのか?」

私達が話しているとマダラがわってはいってきた
正直マダラに待っていてもらってるのを忘れかけていた

「あぁ!すみませんマダラ様。終わりました」

それは女中も同じようでマダラはため息ををついていた
マダラは立ち上がりこちらへ近づいてきたが私はなぜか振り向くのが恥ずかしくなってうつむいた

「ライラ、どうした?」

いつまでも振り向かない私を不審に思ったのかマダラが声をかけてきた

私は俯きながら振り返った
すると今度はマダラが私を見たまま動かなくなってしまった
そんなに変だろうか、

『あの…似合わないなら似合わないといってくれたほうがまだましだわ』

「いっいや。違う、そんなんじゃない。」

『…?』

私が不思議そうに首をかしげるとマダラは頭の後ろに片手をあげ少しうつむいた
そしてはっと顔をあげるとまっすぐ私の瞳を見た

「ライラすごく綺麗だ。似合っている」

『なっ…』

いきなりそんなことを言うから私は言葉を詰まらせた
それを見ていた女中たちはクスクスと笑っていた
「それでは私たちはこれで」
「それでは失礼いたします」

『えっ、えぇ。ありがとう』

「いいえ。それではごゆっくり」

女中達がさったあと沈黙が続いた。私は相変わらず恥ずかしくてうつむいたままだった
沈黙を最初に破ったのはマダラだった

「ライラ、そろそろ顔をあげてくれないか?これではらちが明かん」

私はゆっくり顔をあげるとマダラはまっすぐ私の目をみていた

「はぁ、綺麗なものに綺麗といって何が悪い。」

『だって…。そんなに誉められると思わなかったから』

マダラは一つため息をつくと立ち上がった
そして私の目の前に手を出した

「ほら、行くぞ」

『えぇ、』

私はマダラの手をとりそのまま立ち上がり部屋を後にした

家をでてから少し歩くとなんとも立派なお屋敷があった
マダラたちと住んでいる屋敷もあの人数にしてはとてつもなく大きいがここは更にもっと大きい

その間ずっと繋がれた手が気になって正直なんのためにここにきたのか分からなくなりそうだった

「ここだ」

一瞬マダラの顔が少し強ばった
がすぐにもとに戻りなぜか意を決したかの顔で門をくぐった


「これはマダラ殿、お待ちしておりました。そして、このかたが…」


入り口に立っていた見張りの役であろう人が私のことをたずねてきた

私はあいさつをして軽く会釈をした

その見張りやくの人に案内されるがままついていくと大きい部屋の前にきた

「ここでございます」

「あぁ、案内ご苦労」

マダラがそう言うとその見張りやくの人はもといた場所へと戻っていった
先ずは俺がはいる。合図をしたらはいれ

そういったマダラの言葉に私がうなずくとマダラは襖をあけた
「入るぞ」

そして襖は閉められた

「マダラ殿か、久しいの」

「何年ぶりかの…」

「また少し大きくなったか?」

襖の向こうからは色々な人の声がした
きっと何人もこの部屋にいるのだろう

「今日あんたがたを集めたのは言うまでもないが、ついこの間俺が保護したうちは女のことだ」


「ふむ、その女がうちはという証拠はあるのか?」

「昨日の戦で写輪眼を開眼した」

「なに!それは本当か?」

「写輪眼を開眼したということはうちはであることの証拠には申し分なかろう」

「だが素性が知れぬ以上、頭領であるマダラ殿の元に置いておくのは危険すぎじゃないか」

「確かにまだ出会ってから間もないから疑われるのも無理もない。だがその戦では大いに活躍してくれ、ほかのうちはの者達からも承諾を得ている」

「ほぉ、其ならばなぁ。何はともあれ一度顔を見せてくれぬか?そこにおるんじゃろう?」

襖越しで聞いて私は思わずビクッと肩をあげてしまった

「入られよ」

私は正座のまま襖をあけそのまま頭を下げた

『私がライラでございます』

「顔を上げられよ」

私は言われたとおり顔を上げた
中には五人おり、横一列になりその向かいにマダラが胡座をかいて座っていた

「ほぉ、これはこれは」

「別嬪だの」

其々がそれぞれのことを言うなか真ん中にいた一番歳をとっていそうな男の人だけ目を丸くしてこちらを見ていた

それを不審に思ったマダラがどうしたかと声をかけた
それに気付き他の人もどうしたものとその人を見た

「長老?どうかなさいましたか?」

そうかこの人が長老なのか
私がそんなことを考えていると長老は腰をあげこちらに近づいてきた
そしてそのまま私の前に座り込むと顔をじっと見つめた

「あっ、貴女は…」

『あの…。どうかなさいましたか?』

「そのお姿それに…」

長老は私の手元に目をやった

「その指輪…間違いない。」




「貴女はライラ様でございますね?」


「おっおい、じじぃなにいってる。確かに名前はライラだが…初対面だろう?」

「黙れマダラ。この方は…間違いなくライラ様だ」


『確かに私の名はライラですが…。どこかでお会いなさいましたか?』

「無理もないです、もう何十年たちましたか…。私の名はチカゲです。聞き覚えはありませんか?」

『チカゲ…。』

何処かで聞いたことがある。
そう思い頭の名かを、巡らせてみたが急に目の前が真っ暗になってそのまま私は気を失った

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