神代桜の奇跡

□拾
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兄さんがさったあと部屋には俺とライラだけが残った

少しの間沈黙が流れたがそれを破ったのは俺だった

「ライラはさ、昔兄さんと会ったこととかある?」

『ごめんなさい、まだ記憶が、』

「あっ!ごめん、」

俺はなにも考えずただ気になっていたことを聞いたが、よく考えたら彼女には記憶がなかったのだ
それに記憶を、失っているわけではない兄さんですら覚えていないのだ
彼女が覚えているはずがない


『いえ、お気になさらず。でも、なぜ?』

「あっ、いや、少し気になっただけなんだ。そんな深い意味はないよ」

俺がそういうとライラはそう、と言い視線を外に向けでも、と続けた

「でも…?」

『何故かしらね。マダラを見ているととても懐かしい気持ちになるのよ。本当に不思議だわ…』

俺は思わず彼女の顔を凝視してしまった
兄さんも同じようなことを口にしていた
やはりあの二人は初対面なんかではない。根拠はないが、そう思わせる点はたくさんあった

俺が凝視しすぎたせいか外に向けられていた視線は此方へと向きどうかしたの、と首を傾げられた
それに何でもないと答えれば今度はライラから色々な質問をされた

うちはの人たちはどんな人かとか、忍術のことだとか、はたまた兄さんのことだとか

忍術に至っては兄さんが直接みてくれるらしいからなんの問題もないだろう
しかし、兄さんが仕事を離れるぶん俺に仕事が回ってくる
正直結構忙しかったりするのだ
別に彼女を恨む気持ちもない
むしろ頑張って強くなりうちはの皆に認めて貰えるようになって欲しいと思っている

それに話によればライラはなかなか飲み込みがいいらしい
昔に忍をやっていたのは強ち嘘ではないらしい
それに長く綺麗な黒髪、それに、陶器のように白いはだ。これはうちは特有の容姿である。またうちはでは珍しい、遠目では黒目に見えるが近くで見るととても綺麗な色をしたエメラルドのひとみ。それは彼女の美しさをより一層増したものにしていた

だから尚更なのだ。
何故俺たちが彼女のことを知らないのか

うちは一族は比較的顔が整っているものが多いい
しかし彼女はそれを遥かに上回っている
どこも欠落していないその容姿。
正に絵にかいた美人だった
もし彼女が上の者に知られたら、大名に嫁がせたりやら、政略婚やら、色々利用されていただろう
まぁ此れからは兄さんが側にいるからそんなことにはならないだろうけど

それに上の者も早く兄さんに身を固めて欲しいらしい。
そしてその血をのこして欲しいんだとか
しかし兄さんは頑なに首を縦にふらなかった
今まで様々な花嫁候補がでていたが全く興味を示さなかった
そんな兄さんがいきなり見ず知らずの女ではあるが興味を示した人があらわれたのだ
上としてはとても美味しい話だと思う。それに上の者にさえ気に入られてしまえばあとは何も心配入らないだろう


俺はライラの質問に答えながらそんなことを考えているとヒカクがやって来た

「お風呂の準備ができましたよ」

「あぁ、ありがとう。ライラ、先に入ってきちゃって」

『えっ、そんな悪いです…』

「いやいや、女の子を後に入れさせる方が悪いよ。」

『でっ、でも、』

「男の親切は素直にうけとるべきだよ?」

『う、うん。ありがとう。なら先にお風呂頂きますね。』

「どうぞごゆっくりしてください。お着替えは女中に用意させますので。それとお風呂から上がったらマダラ様のお部屋をお使いなさって下さい」

『何から何まで…ありがとうございます。』
ライラはぺこりと一礼するとお風呂のほうへ向かっていった

「イズナ様、マダラ様はどちらへ?」

「さぁ?俺とライラを残してどっか行っちゃったよ」

「全くあのお方は。昔から急にふらっと何処かへ消えてしまうから困る」

全く同感だとばかりに俺は頷いた

「ライラ様と二人で話したみてどうでしたか?」

「どうって言われてもね、」

俺は肩の力が抜けたように机へ項垂れた

「ふふふ、女の扱いになれている貴女でも逆に緊張してしまうほど美しい方ですよね。」

「全く、ヒカクは俺のことを何だと思ってるの?俺はそんな軽い男じゃないよ」

俺がそういうとヒカク両手を少し上げやれやれといった表情をした
なんだそれ、なんかむかつく

「無自覚なら尚更たちの悪い話ですよ。今まで何人の女性が騙されてきたことやら」

「別に騙したつもりもないし、そもそも騙してない」

「ふふふ。それならば良いのですが」

「全く、」

暫くそんな話をしているとお風呂の戸があいた音がした。

どうやらライラがでたのだろう

そしてものの数十秒ごに兄さんが帰ってき、俺たちのところにきた

「ライラはどうした?」

「今丁度お風呂からあがったんじゃない?ついでに兄さんも入ってきなよ」

「あぁ、そうさせて貰うぞ」

そういい兄さんは風呂場へ向かった

「羨ましいですね、」

「あぁ、全くだ」

ライラを独り占めにできるなんて


初めてだった、兄さんからなにかを奪おうと思ったのは

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