神代桜の奇跡

□玖
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「ところでマダラ様、ライラ様の部屋はどういたします?」

「昨日と同じで兄さんの部屋でいいんじゃない?」

食事を終えたあとそのまま他愛のない話をしていた
そしたらヒカクがいきなりライラの部屋の話をふってきた
、俺としては本当のところ同じ部屋がいい
なので二人の会話は悪いものではなかったのだが、此方の様子を楽しそうに眺めるその嫌らしい目で言われてはプライドの高い俺には簡単に首をたてに振ることはできなかった
ましてや、年頃の女が自分と対して年もかわらない男と同じ部屋で寝るなど嫌がるに違いないし変に気を使わせるだろう


『マダラが構わないなら是非ともそうしてほしいんだけれど、、』

俺はてっきり嫌がられるかと思ったので逆に驚いた
いや、これは只話を合わせているだけだ、普通に考えたら会って1日ほどの男と同じ部屋など嫌に違いない
俺は自分の気持ちを殺してなんとか声をだした

「無理に合わせなくてもいい。部屋ならたくさんあるんだ、それにに俺と同じ部屋では色々と困るだろう。」

そういいおれは湯飲みを手にしてお茶を飲み視線をそらした
イズナとヒカクは肩をすくめなにやらヒソヒソと話していた
ライラはというと目を丸くしてきょとんとしていた

『そんなつもりちっとも無かったわ。只、マダラと同じ部屋ならいいなと思っただけよ?』

俺はおもはず湯飲みを落としそうになった
それを見たイズナが笑いだしヒカクも笑いを耐えているようだった
確かに今の俺のかおはきっと耳まで赤くしているに違いない
穴があったら入りたいとは正に今だ

『あら、私なにか変なこといいました?』

ライラはイズナとヒカクがなぜ笑っているのかわからないらしく首を横に傾げて不思議そうにしていた

「いや、いいのか本当に?」

『マダラが良いって言うなら一緒がいいわ』

真っ直ぐ見つめてそんなことを言うもんだから俺は耐えられず視線をまたそらした
はたしてこんなんで俺は一緒の部屋で大丈夫なのだろうか?
理性を保てる自信がなくなってきた

「ライラもそう言ってるし同じ部屋でいいんじゃない?」

「えぇ、私もそれに賛成です。何かあったときにマダラ様がいれば安心ですし」

「だが、」

『あっ、マダラが嫌なら別にいいのよ?ごめんなさい我が儘いって、』

俺がかたくなに首を縦にふらないためライラに勘違いをさせてしまったようだ
本当のところ同じ部屋がいいと思ってるのは俺の方なのだが、本当に大丈夫なのだろうか、
俺がぐるぐると思考を巡らせているとイズナがはぁとため息をついた

「全く兄さん素直じゃないんだから。なにを考えてるのか大体分かるけどライラも良いって言ってるんだからさ、もう少し素直になったら?」

イズナはイライラしたような顔、というよりは呆れた顔で頬杖をしながら言った
なんだか最近イズナに説教されてばかりな気がする、その度にあれやこれやと指摘されまるで母親のようだ
昔はもっと穏やかなはずだったんだが

「はぁ、お前年取るごとにきつくなってきたな、」

「まぁ大方兄さんのせいだけどね」

俺がため息をつくとライラが、心配そうにこちらをみた

「勘違いをさせてしまったようだな。俺もお前と同じ部屋がいいと思ってたところだ」

俺がそういうと一気に顔がぱぁと明るくなったがすぐに心配そうな顔になった

『えっ!本当に、無理してない?』

心配そうに見上げる顔は、反則なまでに可愛いと思った
俺を気遣うその態度もなんとも愛らしくかんじた

「無理などしていない、今日から俺の部屋で好きにしていい」

『ふふふ、ありがとう!』

トクリ、

俺の心臓がはねた

まただ、彼女の笑顔をみるとなぜだか異常に胸が高鳴る

「それでは私はお風呂の準備をしてきますね」

「あっ、あぁ。頼む」

「兄さん?」

『どうかした?急に固まってしまって』

急に挙動不審になった俺を心配そうに二人はみた

「いや、なんでもない。少し考え事をしていただけだ」

「そう、ならいいんだけど」

「あぁ、少し外へ行ってくる。イズナ、ライラを頼む」

俺はそういい立ち上がり上着を羽織って外にむかった

「ちょ、兄さん?どこへ行くの?」

慌てて立ち上がるイズナに少ししたら戻るから待っていろというと大人しく座った

そのまま俺は外へ出るとやはり夜は肌寒かった
そして今まで通りあの場所へと足をはこんだ

少し歩くとひらり、あのときのように花びらがまた俺の手にのった
やはり夢ではなかったのだ

ここはうちはの領地だが中心部からはだいぶ外れている
この桜の木の存在を知っているものは多いがわざわざここに来るやつなどよっぽどの物好きだけだろう
自分もその物好きの一人だけれども。

俺は物心ついたころからここへ来て桜の様子をみるのが日課だった
修行をしたあと、戦をしたあと、嫌なことがあったときもよくここへ来て木の幹に寄り掛かっていた
あの千手柱間と縁をきった日にもここへ来てただなにもせずぼーっと座っていた。
どうしてだかこの木のそばにいるととても落ち着くのだ
この木のそばはとても心地よかった

そう、俺にとってこの桜の木との付き合いは長いのだ

そしてその桜の木、神代桜がついに今年、花がさいたのだ

おそらく此処に訪れるものなどほとんどいないためこの花が咲いていることを知っているのは俺ぐらいだろう
しかし何故咲いたのだ
何故何百年も咲かなかった花が今ごろになって咲いたのだろうか

そして花とともに現れた彼女はいったい何者なのだろうか

とても偶然とは思えない

<彼女>と<神代桜>

この二つが同時に現れたことはとても偶然だとは思えないのだ
何かある。そう考えたが答えはでなかった
今はただ、ライラの記憶が戻るのを待つしか道はない

俺はそっと木を撫でて家に戻ることにした

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