神代桜の奇跡

□惨
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愛してる








これから先も永遠に













「・・・っ、」




外を見ると暗くまだ夜中のようだ
また随分と迷惑な時間に起きたことだ




俺は汗ばんだ体に張り付いた服が余りにも気持ち悪かったので体を流そうと風呂場へ足を運んだ




それにしても、あの夢で起こされるのは一体何度目なのだろう



俺がまだ幼かった頃から定期的にあの夢を見ていた

しかし、年を重ねるうちに徐々に長く、鮮明に夢の内容が見れた
最近では夢に出てくる人物の1人がどうやら俺自身であることがわかった


一体この夢が何を意味するのか
以前から何度も考えたが結局答えはでず最早気にもしなくなった

しかし今日見た夢では言葉もはっきりと聞き取れた

今まではただ単に顔の見えない男と女が何かを話しているだけ、というなんとも不思議な夢であった


「はぁ、」


昨日今日で沢山のことが起こりすぎて流石の俺でも疲れてきた

しかもそれらの何一つが解決しない、その苛立たしさもあったのだろう


俺は汗を流すと直ぐに着替え女の寝ているへや、つまり俺の自室の向かった





部屋に入るとやはり女は寝ていた
明日の朝には起きるのだろうか
彼女の瞳が無性に見たい

まだ一回しか見ていないのに女の透き通ったエメラルドの瞳を鮮明に思い出せた
我らうちはの瞳の色は黒であるから、彼女のエメラルド色の瞳はひと極めだってって見えた

俺はすっと女に近づき頬に触れようとした
一瞬俺は女に触れるか触れないかの距離で動きが止まった。全くもって自分らしくない。今まで数え切れないほどの女に触れてきたというのに。

なにを今更緊張しているのか
俺はそっと女の頬に触れた。すると思っていたよりも暖かくこの女は生きているということが感じられた

俺はその事に安心したのか再び眠気が襲ってきた

俺は女と少し離れた位置に敷いてある布団に入り直し眠りについた











*******************






「兄さん、起きて朝だよ」




春の朝は少し肌寒く起きるのが少々つらい
俺の弟であるイズナはなんともしっかりしている男であるので、毎朝こうして俺をおこしに来る


布団からでて隣に目をやると女は未だに眠ったままであった


「まだ目を覚まさないね」


「あぁ、そうだな」




俺は障子を開け外の光を目一杯部屋の中に入れた
すると光が女の顔に当たってしまい、それが眩しかったのか女は少しばかり眉をひそめた

俺は慌てて障子を閉めようとしたが時すでに遅し、女はゆっくりと起き上がった




『ここは・・・』



「ここはうちは本陣の屋敷だ」


『うちは・・・』


女はまるで自らに言い聞かせるよいに呟いた


『私は・・・』


「お前、名はなんという」


女は俺の瞳を見つめたまま口を開いた


『ライラ・・・ライラともうします』



「そうか、ライラか」


ライラ確かに初めてきく名であるがこの名にも何故だか懐かしさを覚えた



「君はどこの一族の者なんだい?」


部屋の入り口辺りにいたイズナが尋ねた。やはり警戒をしているのだろう


『私は・・・、』


彼女はそういったぎり黙りこんでしまった


「お前、記憶がないのか?」



俺がそう問えば彼女は申し訳ないと謝った

つまり、そういうことなのだろう


はてさて、彼女が起きたら聞こうと思っていたことは山ほどあったはずなのに、記憶がないのではなにも聞けないではないか



「何にも覚えてないの?」



『私は・・・、忍びであったはずだわ』


「なに!忍びだと?」


この時代に女で忍びをやっている者はほとんどいない
精々自己防衛の為などそんなレベルだろ
しかしながらこんなにも美しい女ならば戦わずしても最も他にいい仕事があっただろうに



俺は少し考えているとイズナも同じことを思ったのかやはり考え込んでいた


しかし記憶が、ないのならばわざわざ俺たちに襲ってくるような真似をしないだろうし、俺としては側に置いとくことができるのである意味好都合であった



「記憶がないのならば此処に留まるとよい」


「ちょっ!兄さん!」



「イズナ少し黙っていろ」


「でも!いくら記憶がないといっても!」


「黙れといったはずだが」



「!!、ごめん」



俺の殺気に、きづいかイズナは大人しく部屋からでていった




「時にライラ、自分は忍びだと言ったが記憶のない今何故そうだと思ったのだ?」

『先ほどうちは、といったときに少し思い出したの。私が遠い昔うちはの忍びであったことを』



「うちはの忍びだと?」


俺がそう問うと彼女は首を縦にふった


彼女の年齢はどうみたって20前後、俺と同じぐらいの年である。

従って頭領である自分が顔すら知らぬことなど先ずないはずだ
女ならば尚更であった

しかし彼女は嘘を言っているようではなかったし、例えそれが嘘としても彼女に得などなかった。俺たちを騙そうとするのならもっと、ましな嘘をつくだろう




「嘘・・・ではなさそうだな」


『ふふっ、こんな怪しい女を信じて下さるの?』


「あぁ。お前には微かにだがチャクラを感じる」


俺は閉じようとしていた障子を全開にした

『私、忍びといっても自分がどんな術を使うのかも覚えていないわ』



「記憶が、ないのだから無理もないだろう。少しずつ思い出すといい」


『優しいのね』


「優しいだと?この俺が?」


『えぇ、とても』


優しいなんて他人にわれたのはいつぶりだろうか
今まで余多の人をこの手で殺めてきたと言うのに


「俺は優しくなんかない」



『何故?こんな女を面倒みてくれるだけでもとても優しと思うけど』



「俺は数え切れないほどの人を殺めてきた。」


『忍びである以上仕方のないことじゃない』



「仕方がないか・・・。そんなことで片付けていいほど人の命は軽くない」



俺がそう言うと女はニコリと微笑んだ


「どうした?」


『ほら、やっぱり貴方は優しい人だわ』



トクリと俺の心臓が一瞬跳ねたのは気のせいだろう

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