神代桜の奇跡

□弐
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あれから女はすぐに気を失った

俺は一先ず彼女を家に連れて帰った



家までの道の間俺は女の顔をじっと眺めていた





何故俺は泣いたのか





この年にまでなってまさか泣くとは思わなかった
しかも泣き顔を初対面の女に見られるなんて、我ながらなんという失態を犯したのだろう


だがこの女のそばは何故だか落ち着くのだ
遠い、遥か昔から知っているような懐かしさを持っていた

昔何処かであったのだろうか、しかし生憎忍びである俺にこんな気品のある女の知り合いはいなかった
いいところで遊女といったところだがこんなにも美しい遊女ならば覚えているに違いない




そんなことを考えながら歩いていると屋敷についた

すると直ぐに側近であるヒカクが出迎えた


「おかえりなさいませマダラ様・・・、そのお方は?」


ヒカクの後ろから弟であるイズナも出てきた


「兄さんお帰り。その人は?」



聞かれるとは思っていたがやはり聞いてきたか。
家路につくまでの間、この女のことをどう説明しようか迷っていたがどう説明してもこの女が何者であるかはわからないのだ


そんなえたいのしれない女をのこのこと屋敷に上がらせることをさせてくれはしないと言うことも俺は分かっていた


しかし、そもそもそんな得たいの知れない女を助ける義理なんてないし、何時もの俺なら放って置いたかもしれない
しかしこの女に関しては全くの別枠、いわば例外であったのだ
堪らなく懐かしく感じるこの女を側に置きたい、離したくない、そう思ってしまっている

全くどうしてくれようか


俺はこそこそと言い訳をするのも面倒になりありのままを二人に話した



「しかし・・・」
「そんな無防備なことできるわけないでしょ」

案の定否定的な言葉が返ってきたがもう今となってはどうでもいい

俺は二人を無視して女を横抱きにしたまま屋敷に入った


「はぁ、全くマダラ様は、」


「ちょっと兄さんきいてんの?」


とにかく今日1日は話すまい。口ではこの賢い弟に言いくるめられてしまうので無視を決め込むことにした


自室に入り布団を敷き女を横にさせた


「・・・、しかし」


見れば見るほど美しい女である
何処かこの戦乱の時代ではない、もっと華やかな場所から来たようにとても気品あふれる女だった

そしてなにより、とても初対面とは思えない懐かしさ

自分でも答えはわからぬが確かに有るのだ

まるで昔からの知り合いに会った、いやそれ以上にこの女からは懐かしさを感じられた


それに側にいるととても落ち着くのである
先程までの激闘全てを忘れるほどに、



俺は暫くその女を眺めていた
すると障子があきイズナが入ってきた


「兄さんちょっと失礼するよ」


「何のようだ」


イズナは俺の隣に座ると直ぐに女の方へ視線を落とした


「何のようって・・・。どう考えてもこの人のことでしょう」


イズナは女に視線を落としたまま暫く動かなかった

恐らく俺と同じよう見惚れていたのだろう


「それにしても、凄く美しい人だね」


「手を出すなよ」


「兄さんが連れてきた人に手なんか出さないよ。第一こんな美人に手を出すなんて恐れ多くて、」


イズナは少し笑うと再び顔を上げ俺の方にやった

ここからが本題なのだろう


「兄さんが理由もなしに知らない女の人を自分の領地にいれるなんてことはしないのは分かってる。この人はいったい何者なの?」

「先ほど説明した通りだ。この女との面識は多分ない。だが酷く懐かしく感じるのだ」

「懐かしい?初対面なのに?」


「だからだ。その理由が知りたくてここまで連れてきた。お前は見覚えないか?」


イズナは再び視線を落とし女を眺めたが直ぐに肩をすくめた


「こんな綺麗なひと一回あったら覚えてると思うけど俺はあったことない」


まぁ、当たり前である。しかし、この黒髪にエメラルドの瞳。うちは一族ではないだう


いったいこの女は何者なのだろう

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