短編
□plus minus
1ページ/7ページ
窓から差し込む日差しが、暖かくて眠くなる。金曜日の午後、数学の時間。
1番後ろの席をいいことに、机に突っ伏して、うとうとする私。
一方隣の席のヤツは、授業そっちのけで窓の外をボーっと見つめてる。
「……結弦くん。」
「は、え?」
「呼ばれてる。ほら、みきも起きて。」
「んぅ?」
前の席の麻由子に揺さぶられ
瞼をこすりながら前を見ると、あきれた顔の先生がいた。
「お前らなぁ……眠いのもわかるが、授業態度悪すぎるぞ。」
「はーい……。」
「そういう先生も、テスト監督の時、爆睡だったじゃないっすか。」
「おまっ……諸君。今聞いたことは門外不出で頼むぞ〜。」
教室に笑い声が響く。数学は苦手だけど、今日は良かった。
先生は若くてテキトーだから、態度が悪くても笑って許してくれるのだ。
これが物理の時間だったら、うるさいババア先生なので
雷が落ちて、放課後は2人揃って補習だっただろう。
板書から帰ってきた本郷は、席に座ると
ルーズリーフに何か書いて、渡してきた。
『ババアの授業の時間じゃなくて良かったな』
隣人の顔を見てニヤリと笑うと、ヤツもニヤリと笑う。
どうやら考えていたことは同じらしい。
私とヤツ―、本郷結弦は、隣の席だ。
しかし、それ以外接点があるわけでもなく、仲が別段いいわけでもない。
共通点といえば、お互い授業態度が悪いくらいだ。