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□幽霊屋敷の首吊り少年 *蘭拓
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ー或る夏、影を伸ばすような夕暮れ
カラスが鳥居の上で聞いた噂
耳打つ子供の声、夏祭り
揺ラリー
裏山の小道にあるトンネルを抜けると、ポツリと古ぼけた屋敷がある。
その屋敷には、ちょっとした思い出があったような気がする。
でも、今の俺は家族の顔も住んでいた家も友達の顔さえも思い出せない。
帰る所を失った俺は、この屋敷に住んでいる。
夜は、電気も点かないから、もちろん暗くて怖かった。
でも、今日は違った。
いつものように、屋敷の窓から空を眺めると、神社のあたりが明るくて賑やかだった。
すると、下の方で物音がした。
怖かったけど、俺は階段を下りて下へ向かった。
”なぁ、ココ幽霊が出るんだってよ。“と一人の少年が言ってた。
他の人は、ケタケタと笑いながら俺の横を通りすぎた。
まるで、俺の存在など、ないかのように…
「俺…死んでなんかない…生きてるんだ…」
呟いた言葉でさえも、聞こえないようだった。