Mine
□Only the mind is always by your side
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臨也は体調がすぐれない時もあったが
それ以外は、俺が一人になっても生活できるようにと掃除の仕方から料理まで手取り足取り教えてくれた。
家事をすれば物を壊してばかりの俺を
ほんとに不器用なんだから、と呆れたように笑う臨也は少しやつれたが、いつもと変わらなかった。
「シズちゃんも早くいい人見つけて結婚しなよ」
時折そう言って泣きそうな顔で笑う臨也に
俺は抱きしめてキスを落とすことしかできなかった。
一度、一緒に頑張って病気と闘わないかと持ちかけたことがある。
すると臨也は怪訝そうに俺を見つめた。
「シズちゃん馬鹿?抗癌剤って髪の毛抜けるんだよ?」
「はぁ!?馬鹿はてめぇだろ!!そんな理由で生きるのを諦めんのかよ!?」
「だって死ぬ時くらい美しい姿でいたいでしょ?それにね……」
そこで言葉を切ると、言葉を選ぶように視線を宙に泳がせた。
「あのねシズちゃん、生にしがみつくばかりが生きるってことじゃないと俺は思うよ」
臨也の言いたいことが読めず、眉をひそめる。
「どう足掻いたって俺はもうすぐ死ぬよ。
それなら、シズちゃんといる時間を大切にしたい。
ねぇ、俺は好きの気持ちが多すぎてまだ全部伝えきってないんだよ」
そう言って俺の胸に掌を当てると、俺はシズちゃんの此処にずっと残っていたい…そう呟いた。
「ごめんねシズちゃん。俺、シズちゃんに幸せになってほしいけど、ずっと俺のこと覚えててほしいんだ」
俺は臨也の、痩せて骨が目出つようになった体をただ抱きしめた。