ハリー・ポッター(夢)

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少し寒くなってきたある日、トムがドラコへ声をかけてきた。

「今日の夜に部室で食事するんだけど、よかったら来ない?」
「部室?」

「うん、人数も揃ったから、部として活動するお祝いで鍋パーティーするんだって」
「鍋?なんだそれは」

「日本の料理だよ。梅並おばさんが作るから味は保障できる」
「でも、僕は条件を満たしていない」

なんでも部へ入る条件。
それは差別意識を持たない事。
それを満たしていないのは自分がよく分かっている。しかし、トムは笑った。

「気づいてないの?」
「何に?」

「ドラコが変わったって、みんな言ってるよ」

この前の危険生物飼育学の授業でもバックビークからスリザリンの生徒を助けたんでしょ?と聞かれ、新学期が始まった頃を思い出す。

バックビークをバカにしたゴイルたち。
襲いかかってくるバックビークを見たら、体が勝手に動いていた。

「あれは、ランジュのせいだ」

夏休みの時に参加させられた強化合宿。
それに加えて川や森で遊んだ時にかけられた全く知らない術。
自分はまだ成人していないからホグワーツ以外で魔法を使えない。
だから走って逃げたり、攻撃したり、とにかく使える物が自分の体しかなかったのだ。
そのせいであの時も杖を出すより先に体が動いた。

それを言えば、トムが嬉しそうに笑顔を深める。

「蘭樹はすごいでしょ」

自慢の友達なんだと言って、腕の傷について聞いて来た。

「もう塞がってる。父上が風来坊の薬をマダム・ポンフリーに送って下さったからな」
「そう、よかった」

ただ、カンカンに怒った父上があいつらの親に文句を言ったから最近は近くに寄ってこなくなったと肩を竦めれば、小さく声を漏らしながら笑われる。

「それでここの所一人でいたんだ」
「ああ、別に僕は何とも思ってないけどな」

「ドラコを見てる女子に無反応なのは?」
「は?」

「それも気づいてなかった?」

笑っているトムの足元でサザーがドラコを見上げている。
顔にはお札が張られているというのに、なんだか蛇にまで笑われているような気分だった。

「ドラコは椿しか見てないもんね」
「は!?」

顔に熱が集まっていくのが分かる。
そんな自分を見てもトムは笑顔のまま話し続ける。

「じゃぁ、夕食の時間に呼びに行くから。談話室で待ってて」
「ちょ、行くとは言ってないぞ!」

「椿もいるよ?」
「、」

「後でね」

そう言って、トムはサザーを連れてどこかへ行ってしまった。
残されたドラコは、とりあえず昼食を摂るために大広間へ向い、一人で座る。

「ドラコ、一緒に食べない?」
「ああ」

そう言えば、最近はやけにパンジーが隣に座りたがるようになった気がする。
他にも授業中は誰かしら女子が隣の席に居たような。
そこまで考えて、顔を上げた。
見えるのは向にあるハッフルパフのテーブル。こちらに背を向けて座っているあの後ろ姿は椿だ。

「それでね、私グレンジャーに言ってやったの」

パンジーの声をBGMに、少し動く度揺れる黒髪を目で追う。
今日もポニーテールにしていて、本物の馬の尻尾のようだ。
艶を放ちながら、小さな肩に何本もの糸のように広がる。

別に何か考えている訳ではない。
ただ見ていただけだ。
そこに何か感情があった訳じゃない。

食事を終えて本を開いた椿にレイブンクローから女子生徒、確かルーナとか言ったと思う。
その生徒が呼びに来て、一緒に大広間を出て行った。

「食欲ないの?最近あまり食べてないわね?」
「いや、そんなことはない」

止めていた手を動かしていれば、見慣れたフクロウがやって来た。

「父上から?」

フクロウを撫でてやれば指を甘噛みして飛んでいく。

「いつ見ても立派なフクロウね」
「ああ、父上のお気にいりなんだ」

封を切り、手紙を読む。
中には今年のクリスマスパーティーの事が書かれていた。椿を招待したのだと。

急に立ち上がったドラコにどうしたの?と聞くパンジーだが、ドラコの耳には届いていなかったようだ。

更に手紙を読み進めると、ナルシッサが椿に会いたがっているのだと言う。
それと、日本にはお正月という行事があるため、うちに泊まれるのは一日だけだと書いてあった。

一日だけ、椿がうちに泊まる。

その事実がなんだかよく分からない感情を沸き上がらせていく。

「ドラコ?」

しかし、パンジーの声で我に返り、なんでもないと取り繕って座り直した。

「お父様からそんなに嬉しい知らせが来たの?」
「嬉しい?」

「ええ、とっても嬉しそう」

自分が笑っている事に、やっと気がついた。
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