ハリー・ポッター(夢)
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今学期最終日。
最後の宴も終わり、みんなが寝静まった深夜。
誰もいない東洋魔術の教室では、床に広げられた半紙を集まった四人の大人たちが見つめていた。
「ツバキはちゃんと部屋におるかの?」
「はい。部屋から出ないように言ってあります」
「あの子は自分の役目を分かる子ですよ」
「ある意味では、兄さんよりも信用できます」
「そうじゃな」
梅並の言葉にみんなが笑い、文字が浮かび上がった半紙に目を向ける。
次の瞬間、そこに現れたのは蘭樹と、
「おじいちゃん!」
「おおトム!元気じゃったか?」
「うん!」
抱き合うダンブルドアとトムを見て微笑ましそうに笑うなんでも部のOBたち。
梅並は笑っている蘭樹を見上げる。
「他のみんなは?駄々をこねなかった?」
「めっちゃこねてた」
「だろうね」
「珍しくルビーとペリーも行くって言ったくらいだからな」
「あの二人がわがままを言うとは」
「ご迷惑をかけました」
驚いている梅並とセブルスだが、クィレルは申し訳なさそうに頭を下げている。それに笑って肩を叩く蘭樹。
「いいって!あいつらはもっとわがまま言った方がいいくらいだ!」
「それは私も思うかな」
「椿にも言えることだがな」
「なぁ!もうちょっとハッチャケてもいいのによ」
俺そんな事で怒ったりしねぇのにと腕を組むのを見て、子供以上に無茶をする親がいるからだろうなと思った三人だった。
その後、みんなもトムとの再会を喜び、目隠しをして部屋を出る。
向かう先は三階の女子トイレ。
「久しぶりのホグワーツ!んでもって初めて入った女子トイレ!」
「入った事あったら問題だよ」
「前の僕って、なんで人に見つからなかったんだろ」
目隠しを取りながら顔をしかめて、蛇口に近寄りパーセルタングで話しかければ大きなパイプが出てきた。
「結構深いよ。でも滑り台みたいになってるから大丈夫」
「俺いっちばん!」
「あ!!」
飛び込んだ蘭樹を追いかける様にトムが飛び込み、ダンブルドアが目を輝かせてそれに続く。
「みんな童心を忘れてないね」
「そのようだな」
「昔を振り返って見たんだけど、私たちの子供の頃って今とさして変わらなかったよ」
蘭樹に振り回されて川でおぼれたり、稽古場でプロレスごっこをしてのた打ち回ったり。
「クィリナスは、姉さんに目を付けられた時が運の尽きかな」
「言わないで」
そう言って三人もパイプの中に飛び込んだ。
パイプを滑り降りてたどり着いた場所は動物の骨だらけだった。
「お、これ鹿じゃね?」
「本当だ。これを食べられるとは、かなりのサイズですね」
「セブルス!バジリスクの抜け殻だよ!」
「素晴らしいっ、保存状態も悪くない!」
「いい素材が見つかって何よりじゃ」
研究者二人を見て笑うダンブルドアの手を引き、トムがこっちと奥へ進んでいく。
そこには蛇が絡み合ったような扉があった。
「ついにバジリスクとご対面か!」
「はい、みんなこれを顔につけて」
「僕は大丈夫。バジリスクに目を閉じてってお願いできるから」
梅並がみんなに配り出した半紙を断って、扉に向かって開けと唱える。
ガコンガコンと音を上げて開く扉の向こうには、大きな部屋が広がっていた。
「これがサラザール・スリザリンの顔・・・」
「記念写真撮っとくか?」
「観光スポットじゃないんだから」
「記念にはよいじゃろ」
「校長」
「みんな並べー」
どこから出したのかカメラを構えた蘭樹にみんながため息を吐いていると、以外にもトムが待ったをかけた。
「こっちにバジリスクが来てる」
「マジか」
じゃぁバジリスクの件が終わってから写真を撮ろうと、内ポケットにカメラをしまう。
結構な大きさのあるカメラだったのだが、するりと入ってしまった。
サラザール・スリザリンの口が開き、そこから出てきた巨大な大蛇。
「でけー!!!」
出てきたバジリスクは鹿を一飲みにするとかのレベルではない程大きく、みんなが騒然とその頭を見上げていた。
体はまだ出てきている途中である。
大きな金色の目を見ても石にならないのは梅並がくれた半紙の御かげだ。
「バジリスクが僕と一緒に来てもいいって」
蛇語で何か話した後、目を輝かせて見上げてくるトムの頭を撫でてダンブルドアが杖を取り出す。
「では、サイズを小さくせねばな」
これはちと大きすぎると言って、バジリスクに収縮呪文をかけた。
「じゃ、これは俺らからの入学祝いだな」
懐からお札を出して笑う蘭樹は、ニシキヘビくらいの大きさになったバジリスクの目を覆う様にお札を張り付けていく。
「これでバジリスクの目を見れる奴はいなくなった」
更にバジリスクからはちゃんとこっちが見えるおまけつきと、顔に付けていた半紙を取る。
「じゃ、改めて記念写真を撮りますか!」
流されるまま、みんなできっちり写真を撮りました。
「トム、その子にちゃんと名前つけてあげてはどうだろう?」
バジリスクは種類の呼び名だからとクィレルが言えば、トムも頷いて自分の首に巻きついている蛇を見る。
「何がいいかなぁ、・・・サザー?」
「もしかしてサラザールからとった?」
「うん」
「なるほど、よい名じゃ」
記念撮影も終わり、梅並とセブルスの抜け殻採取を待っている間和やかな会話が続く。
しばらくして、二人が戻ってきたのでお開きとなった。
「また明日ね、おじいちゃん」
「ああ、楽しみにしとるよ」
この秘密の部屋もこのまま封鎖するとの事なので、サザーにももうここには来れないと話を付けて蘭樹と共に日本へ帰った。
「今年の夏休みは忙しくなるよ」
「そうだな、トムに頼んでサザーの毒を少し分けてもらおう」
成功すれば強力な解毒剤ができると話し合う研究者二人。
それを見て苦笑に近い笑いをこぼしている校長とマグル学教授。
夏休みはこれから始まる。