ハリー・ポッター(夢)
□18
2ページ/4ページ
春も終わりに近づいて来たある日、ハーマイオニーは部室を訪れていた。
「いらっしゃい」
迎え入れてくれたのは梅並で、その後ろではフレッドとジョージ、椿にルーナもいて、それぞれ何かやっていた。
「もしかして入部の話?」
「、はい」
返事をすれば頷いて、座ってと椅子をすすめられる。
「今お茶を入れよう。クッキーは好き?」
棚から出てきたクッキーと、魔法を使わずに入れられた紅茶。
それを目の前に置いて梅並も座った。
「やりたい事は見つかった?」
その質問には肩をすくめて首を振る。
「その、まだ具体的なことは何も。今は勉強をする事が楽しいので」
「おいおい、それ本気で言ってんのか?」
「ハーマイオニーは勉強の虫だな」
「二人とも」
「「はーいママ」」
「いや、もういいよ」
ママと呼ばれたことにため息を吐いて、何か言い返そうとしたが諦めたと言う様に首を振った。
「勉強が好きなら、ここを勉強部屋として貸し出すよ」
「え?」
「勉強をしているうちに、自分が何をしたいのか見つかるかもしれないしね」
入部はそれからでもいいし、しなくてもいいと言ってみんなに向き直る。
「みんなは?クッキー食べる?」
「食べたい」
「私も」
「「ママのお手製だー」」
「モリーさんを尊敬するよ」
みんなの分もお茶を入れるために立ちあがった梅並はハーマイオニーの頭を撫でて、やはり魔法を使わずお茶の準備をしていく。
「先生は、魔法を使わないんですか?」
「いいや?それなりに使うよ」
杖もいつも持ち歩いてるしと、ポットにお湯を注いだ後で袖から出して見せる。
「それでも、いざとなったらやっぱり東洋魔術の方が先に出てくるね」
生まれた時から身近にあったものだからと笑って、
「セブルスとクィリナスも呼ぼうか」
「「はんたーい」」
「賛成」
「賛成」
「ハーマイオニーは?」
「え、私は、どちらでも」
「じゃぁ多数決で呼ぶ方に決定」
「「えー!」」
顔をしかめる双子に、ルーナが笑う。
「ウメナミ先生がママなら、スネイプ先生はパパでしょ?」
「ルーナの言う通りだね」
クスクスと笑って、懐から白い紙を二枚出して手のひらに乗せる。
「お茶にしない?クッキーを用意して待ってるよ」
フッと息を吹きかけて扉から外へ投げた。
「今のは何ですか?」
「東洋魔術です」
ハーマイオニーの疑問に椿が答える。
「言伝を頼んだり探し物をする時によく使います」
「その通り。椿、ハーマイオニーにはもう固くならなくていいんじゃない?」
「そうそう」
「僕らみたいにさ」
梅並と双子の言葉に、ハーマイオニーと名前で呼んでもいいかと聞かれたので頷いた。
みんなでワイワイと話しているのを見て、つい思ったことが口から出てしまった。
「先生って、スリザリンらしくないですよね」
言ってから罪悪感にも似た羞恥が襲ってくる。
なんでも部に入る条件を自分も満たしていないじゃないか。
ロンの事をとやかく言える立場じゃないと一人打ちのめされていると、
「よく言われるよ」
クスクスと笑って頭を撫でられた。
「でも、セブルスには“お前はまごう事無きスリザリンだ”とも言われるね」
「「どこが?」」
「今度本人に聞いてみたら?」
答えてくれるかは分からないけどねと笑って紅茶を飲む。
この穏やかな人になら聞いても大丈夫だろうかと、失礼は承知でまた口を開いた。
「スリザリンに入ったとき、嫌じゃなかったですか?」
自分は絶対にスリザリンには入りたくないと願ってあの帽子を被ったからこその質問だった。
「君たちの時にあの帽子がなんて歌ったか知らないけど、私の時に歌った歌詞は今でも覚えてる」
『スリザリンに入ったら、多くの試練が待っている。狡猾に難題を潜り抜け、心許せる友を得る』
「私はスリザリンに選ばれて嬉しかったよ。実際、心を許せる友達もできたし、人生のパートナーも見つかったしね」
今でもスリザリンに入ってよかったと思ってると笑顔を深めた。
「家族は?何も言わなかったの?」
「うちはみんなグリフィンドールだからな」
フレッドはジョージに頷いて、二人で梅並を見る。
「姉さんたちはレイブンクローだったから残念がってたけど、兄さんは同じスリザリンだって喜んでくれたよ」
「私の時はおばあちゃんと同じって言って喜んでくれたわ」
「家は結構ばらけてたからね」
梅並にとっての祖母はレイブンクローだし、曾爺はグリフィンドール。
「家の子たちはどこに入るのか楽しみだよ」
「先生子供いるんですか!?」
「いるよ。可愛い双子の女の子がね」
衝撃の事実を聞かされたという顔をする双子とハーマイオニーを見て笑い出すルーナと椿。そして梅並。
「そんなに子持ちに見えない?」
「いえっ、あの、そうじゃなくて、」
「「父親はスネイプって事!?」」
「他に居たら私が嫌だな」
「吾輩も、それは聞き捨てなりませんな」
ハッとして振り返ったそこに居たのは、無表情のセブルスとその一歩後ろで震えているクィレルだった。