ハリー・ポッター(夢)

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新入生が大広間へ入ってくるのを待っている今、生徒たちの視線は職員席に集中していた。

女子生徒は笑顔を振りまいて手を振っているロックハートに。
そして男子たちの視線は、魔法薬学教授とマグル学の教授に挟まれて談笑している美しい女性に。

「誰かしら?」

ハーマイオニーの言葉に首を傾げるハリーとロン。
しかし、ロンはここ最近同じような顔を見た気がしてならなかった。

「僕、どこかで会ったのかな?」

首を傾げてスッキリしない思いのまま居たが、フィルチが組分け帽と椅子を持って来たことで思考を止められた。

マクゴナガルが一年生を連れてやって来て、まだどこの寮にも分けられていない子供たちの名前を呼んでいく。

「ツバキ・キモト」

みんなが歩いている女の子を見た。

黒い目に黒髪、他のみんなより少し黄色い肌。ポニーテールが揺れていた。

「ハッフルパフ!」

ハッフルパフのテーブルから割れんばかりの拍手が送られ、職員席のみんなも手を叩く。

椿はグリフィンドールの席に目を向けると小さく手を振って、チラリと振り返ったスリザリンのテーブルへはニコリと笑顔を向けた。

ざわついていた大広間にダンブルドアの声が響く。

「新入生の諸君、入学おめでとう。そして在学生の諸君、これからも勉学に励むことを期待しておる」

お祝いの言葉を述べ、今年から入った新任教授を紹介しようと言うとすぐにロックハートが立ち上がった。

「去年まで闇の魔術に対する防衛術を担当してくださっていた先生は隠居生活がしたいとおっしゃってやめてしまわれたのでな、新たにお迎えしたのがギルデロイ・ロックハート先生じゃ」
「ご紹介に預かりました、ギルデロイ・ロックハートです!」

意気揚々と自己紹介する。
その笑顔に胸を高鳴らせている女子たちを見て、男子たちは顔をしかめる。
そして、ダンブルドアはロックハートが座った事を確認してまた生徒たちに向い合った。

「更に喜ばしい事に、今年からホグワーツに新しい教科を加えることができた」

これ以上増やすなんてと顔を見合わせるハリーたちとは逆に、ハーマイオニーは目を輝かせている。

「選択科目に“東洋魔術”を増やすにあたり、わざわざお呼びした先生じゃ。この先生にはスリザリンの副寮監もお願いしておる」

大広間のざわめきがより一層大きくなった。

「紹介しよう、」

その言葉と同時に立ち上がった一人の女性。
見慣れない服を着ていて、スカートのようなズボンを胸の下で縛っていた。
真っ黒の髪は癖の一つもなくて、黄色みがかった白い肌に赤い唇。

立ち上がったその人を見たのと同時に、ロックハートも立ち上がった。

「なんて美しい方だ!」

そう叫ぶように声を上げて女性に近づいて行く。

そして手を握ろうとした時、女性との間に体を入れたその人に一層大広間がざわつく。

「校長がまだお話中ですぞ」

その冷たい声に、魔法薬学教授に対する恐怖心を植え付けられている生徒たちは震えあがった。

「では改めて、ご紹介しよう。ウメナミ・スネイプ先生じゃ」
「「嘘だろ!?」」

驚きのあまり声を揃えて叫んだグリフィンドールの双子を見て、紹介された東洋魔術の先生はクスクスと笑いだす。
それはダンブルドアも同じだったようで、双子を見た後生徒たち全体を見回した。

「察しておる者もおるようじゃの。ウメナミ先生は魔法薬学を担当してくれておるスネイプ先生の奥方じゃ」

さっきまであんなに騒がしかった大広間は、物音一つしなくなった。
みんなが口を開けたまま身動きもせず、紹介された美しい女性と陰険スリザリン贔屓の教授を見る。

「さらに、ウメナミ先生たっての希望で我が校が誇る“なんでも部”を再開してくださる事を皆に知らせておこう」

なんでも部?そんなクラブあったか?とそれぞれ顔を見合わせて首を傾げた。

「有り余る才能と意欲を発揮できる部。今から数十年前、素晴らしい功績と優秀な魔法使い、魔女を輩出した由緒ある部じゃ。よって、入部には条件がある」

みんなはほんのり笑っている優しそうなその人を見て、落胆にも似たため息を吐きながら肩を落とした。
どんなに美しくてもやっぱりスネイプの奥さんだ。どうせ純血しか入れないとか、スリザリンしかダメとかそういうのだろと思っていたら、

「条件は二つ。成し遂げたい事柄があり、それに専念すること。夏休み前にはその成果をわしに報告することになっておる。そして最後に、」

さき程までキラキラと輝いていた青い目が真剣さを表し、生徒一人ひとりの顔を見るかのように見据えられる。

「差別意識を持ち込まぬことじゃ」
「気になると思ったら気軽に声をかけてね。部活や授業以外でもみんなと話してみたいと思っているから」

ニッコリと笑ったその人は、そのキレイな笑顔を隣にいたセブルスに向けて一緒に席に着いた。
ロックハートも全生徒も、二人から目を反らすことができなかった。
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