ハリー・ポッター(夢)
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夏休み、木元の家に招待されたマルフォイ家とウィーズリー家。
「おー!一週間ぶり!」
「お前は、どうしていつもそんなに急なんだ」
「丁度仕事が休みだったからよかったけど、連絡はもっと早くくれ」
この前見た、魔法界の英雄に文句を言っている父たちを見ていると本当にこの東洋人があの英雄なのかと疑いたくなってくる。
「俺の子供たちだ」
そう言って紹介されたのは前に本屋で見た椿と、蓮花と苧環という双子の女の子。そして、
「竹人です」
「へー、可愛いね」
「ありがとうございます」
ニコリと笑ってこちらを見上げてくるその子にみんなの表情が緩む。しかし、
「うちの長男だ」
ニヤッと笑った蘭樹から発せられた言葉にみんなの目が見開いた。
「可愛かろうて!」
「え、なんで女の子の恰好をしてるんですか?」
パーシーが戸惑いがちに聞けば、日本の風習なんだと説明された。
「後もう一人、トム!うちで預かってる俺の友達だ」
やって来たのはジニーより少し小さい男の子だった。
「トム、俺の友達のアーサーとルシウスだ。それとその家族」
「初めまして、トム・ダンブルドアです」
「ダンブルドア!?」
「おう、うちに来た時ここを気に入ってな。普段は世話できねぇからってうちで預かってんだ。な」
「うん」
笑顔で頷いたトムはルシウスを見上げて笑顔を深める。
「ルシウスは知ってる。前の僕とよく話してたから」
どういう意味なのか分かった者は少なかったけれど、ルシウスは優しい笑顔を浮かべて目線を合わせるために屈んだ。
「覚えていてくれたのか。光栄だよ」
「僕にも紅茶を入れてくれる?」
「もちろんだとも」
頭を撫でれば子供らしい幼い顔で嬉しそうに笑った。
「椿、みんなを森に案内してやれ。お前らは久しぶりに稽古場な」
「嘘だろ」
「もう十年以上やってないよ」
「しっかり柔軟やんねぇとアキレス健切るぜ」
クックックと笑って、蘭樹はルシウスとアーサーを連れて家の中へ入って行った。
「私たちはお茶でもどう?お義母さんも呼んでくるわ」
「おばさんに会うのはいつ振りかしら!」
「お変わりはない?」
麻耶という蘭樹の妻と一緒にはしゃぐナルシッサとモリー。
残された子供たちは互いに見つめ合った後、紹介されたばかりの木元家の子供たちに向い合った。
「ついてきて、森に案内するわ」
「「ちゃんと自己紹介してね」」
「怒らせない方がいいよ」
そんな事を言いながら森の中へ入って行く。
とりあえず、見失わないように後をついて行った。
「なぜ森に行く必要があるんだ?」
ドラコが不満げに言えば、椿が振り返った。
「みんなに紹介しないと襲われちゃうからよ」
「は?」
「ここのみんなはうちの人間は襲わないの。だから顔を覚えてもらうのよ」
椿の言葉に緊張が走った。
これから何と会わせられるんだ。
森に入って、すぐ上から声が聞こえてきた。
「わっぱが大勢来よった」
「どこの童じゃ?」
「ん?あれはルシウスじゃないか?」
「おお本当じゃ!ルシウスが来るのは久しぶりじゃな!」
木の上から、姿の見えない誰かが話し出す。その声を聞いて椿が笑った。
「違うわ。この子はルシウスさんじゃないの」
「なに?匂いも同じじゃ」
ほらと肘で小突かれ、上を見ながら口を開いた。
「る、ルシウス・マルフォイは僕の父です」
「なんと!ルシウスの倅じゃったか!」
「そうか!それにしてもよう似とる」
「して、お主の名は?」
「ドラコ・マルフォイ」
さわさわと揺れる枝。椿はパーシーに挨拶してと小声で言う。
「あ、あー、僕はパーシー・ウィーズリーです」
「ウィーズリー?」
「アーサーと同じ名じゃ」
「アーサーの子かの?」
「はい。アーサーとモリーの子供です」
「モリー!懐かしいのぉ!」
「あの二人は所帯を持つと思っておった!」
「本当はパーシーの上にビルとチャーリーっていうお兄さんがいるらしいけど、今日は来れなかったの」
「いつか会うてみたいのぉ」
「そこの赤毛は、もしや皆アーサーの子かの?」
「フレッドです」
「ジョージです」
「ぼ、僕はロンです」
「ジニーです」
「ジニーは私と同じ年よ」
全員が自己紹介を終えると上が更に騒がしくなった。
「今日は宴じゃな!」
「ルシウスとアーサーの倅たちが来たぞ!」
「世代が変わったか!」
「みんなに伝えてね」
椿の声を最後に、声も気配も消えてしまった。
「い、今の誰?」
「天狗よ」
「テング?」
「なにそれ」
「神様に近い妖怪」
「妖怪?!この森には妖怪が住んでるのか!?」
「そうよ。天狗以外にも沢山いるわ」
そう言って更に奥へと入って行く。
歩く度に揺れるポニーテルが本当の馬の尻尾の様だった。
「ルシウスさんとアーサーさんは一年生の時からここに来て遊んでたって、お父さんが言ってたわ」
「父上が?」
「ええ、ナルシッサさんとモリーさんも来たんですって」
「そんな話初めて聞いたよ」
「そうなの?私はよく聞かされるわよ」
「父上が妖怪と会ってたなんて、信じられないな」
「あなた心が狭いわね」
「ぷっ」
ロンが噴出したことにドラコが睨んだが、フレッドとジョージはニヤついた顔を隠そうともしなかった。
「良い物見せてあげる」
こっちよと椿が向かった先には、一本の太い大木がそびえたっていた。
「靴を脱いで。滑って怪我をしちゃうから」
「は?」
「木登りよ。したことないの?」
「なぜ僕がそんなこと。箒にでも乗ればいいだろ」
「あなた馬鹿ね」
そんなことを初めて言われたのか、口をパクパクしているドラコが最高に面白いと言わんばかりに笑い出すみんな。