ハリー・ポッター(夢)

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「ウメナミ、今の」
「うん、みんなばらけないで。絶対に」

生徒たちがパニックを起こす中、なんでも部だけは冷静だった。

「先生たちが学校の領域に結界を張ってるみたいです」
「でも向こうの勢力を考えると、破られるのは時間の問題かもしれないな」

「せめて城だけでも私が強化するよ」

懐から出した数枚のお札を宙に投げて手をかざす。
窓から出て行ったお札はすぐに見えなくなった。

「いつでも戦える準備はしておいてね」
「当たり前だ」

みんな杖を構えて周りを見回す。
多分、スリザリンは信用できないだろう。

「スリザリンの生徒には気を付けろ、動きが可笑しいのが何人かいる」
「僕たちもスリザリンですよ」

「あなたたちは信用してるもの」

リリーの言葉に笑ってしまった。


城が揺れる。
戦いが激しくなっていく。
先生たちが張った結界が消えていく。
死喰い人たちの雄叫びが鳴りやまない。

戦いが、ついに始まった。


城の中に死喰い人たちが押し入ってくる。

「エクスぺリアームス!」

僕たちの横をかすめて行った呪文。
聞き覚えのある声。振り返れば、ルシウス先輩がいた。

「この子たちに手を出すな!!」

その声は聞いたことがない程怒りに満ちていて、目には炎が宿っているかのように燃えている。

「裏切るつもりかルシウス!」
「私は最初からお前らの仲間ではない!!」

僕たちを背に隠して立つ先輩は、僕たちがいつも見ているその人だった。

「アルバス!無事か!!?」

知らない声に、姿現しのバシバシという音が至る所で鳴りだす。振り返れば、

「「みんな怪我はない!?」」

桜花と桃花がいて、僕たちを見つけると一目散に走ってきた。

「「あたしのダーリンに何してくれてんのよ!!」」

どうやら悪戯仕掛人の四人も近くにいたようで、桃花もクィレルを守っている桜花同様オリジナル呪文を乱射し始めた。

「アラスター!ずい分早い到着じゃな!」
「ああ!こっちにも早い段階で情報が来てたんでな」

「ルシウス!」
「アーサー!?なぜここにいる!」

逃げろと言っただろと怒鳴るルシウス先輩に、同じくらい怒っているらしいアーサー先輩が杖を出して応戦しながら怒鳴り返した。

「君が命がけで情報をくれたんだぞ!?それにこの子たちもいる!私だけ逃げるなんてできる訳ないだろ!!」
「お前に何かあったらモリーたちはどうするつもりだ!」

「それはお互い様だろ!?」

怒鳴り合いながら失神呪文や石化呪文、粉砕呪文を交互に放つ先輩たちはものすごく息があっていて、どんどん敵を減らしていく。そして、

「お前ら無事かー!!?」

どこから降って来たのか、蘭樹がシュタッと効果音が付きそうな着地を決めて周りを見る。そして、

「ルシウスてめぇこら!なんだあの伝言は!!」

ルシウス先輩を見つけるやいなやとび蹴りをかました。

「ぐほっ!」
「何が逃げろだこの野郎!命に代えても守るとかカッコつけんじゃねぇ!!」

そう怒鳴ってお札を一枚出すと芝生に向かって投げ、前に一度だけ見た事のある獅子を作り上げていく。

「てめぇはそれでもスリザリンか!狡猾が売りならとことんずる賢く生き抜いてみやがれ!!」

木や草で出来た獅子は城の入口で咆哮を上げた。

「またくだらねぇこと言ってみろ!何度でも殴って止めてやる!!」
「今のは蹴りだ」

「うるせぇ!上げ足とんな!」
「今回は蘭樹に賛成だ」




見つけた、あいつだ、間違いない!!
黒い髪、黄色い肌、猿のような東洋人。
キクオと同じ目。


『道を踏み外したら殴りに行くから安心して踏み外せ』


あいつがキクオの意思だ!




「オウカ!」

死喰い人に押されている桜花を見て駆けだすクィレル。

「プロテゴ!」
「ダーリン!?」

「ステューピファイ!」

敵が動かなくなったことを確認し、上がった息を整える。

そして力強く抱きしめた。

いつも可愛いと言い続けていただけに、クィレルに対して今まで感じた事のない感情が湧いてくる。

クィレルが腰に腕を回せば、顔に集まる熱を感じた。

「無事でよかったっ」
「!一生ついて行くわ!!」

そのやり取りを見ていた蘭樹が痛々しげに首を横に振る。

「可哀相に」

そう小さく呟いていたのを僕たちだけが聞いていた。



「エクスパルソ!」

敵が唱えた呪文で爆発が起きた。飛び散る破片。

「モモカ!」

その破片から守る様に立ちはだかったペティグリューは至る所に傷を作っている。

「ダーリン!?」
「ごめんっ、魔法でかっこよく助けてあげたかったんだけど、咄嗟過ぎて」

「そんな!こんなに傷だらけになってまで助けてくれたのに!!」

桃花は傷を労わる様にペティグリューを抱きしめて囁く。

「あなたはあたしのヒーローよ」

見つめ合う二人は自分たちの世界へ入って行った。

「哀れな」

木や草で出来た獅子を操って敵をなぎ倒しながら蘭樹が呟いたような気がしたけど、聞かなかったことにした。



「リリー!危ない!」
「邪魔よジェームズ!!」

目隠しの呪文を唱え、武装解除を確実に行っているリリーに加担しているポッターだが、リリーには邪魔だと押しのけられている。

「僕は君と結婚したいんだ!この戦いで君を失うわけにはいかないよ!!」
「うるさいわね!結婚でもなんでもしてあげるから黙ってて!」

「本当!?」

浮かれまくるポッターを見て、みんなが首を傾げた。

「あれはプロポーズが成功したことになるのか?」
「分からないけど、ジェームズはそう思ってるみたいだよ」

意外なところで意外なカップルが誕生した瞬間だった。


「風!」

僕の後ろで声が聞こえる。
目だけを動かして見れば、青白い球体の壁が降ってきた瓦礫の下にいる人物を守っていた。

僕はその人物を確認してため息を吐く。

「フェミニスト」
「そんなことないよ」

クスクスと笑う梅並だが、助けられたブラックは目を見開いた後顔を歪めていた。

「お気に召さなかったようだが?」
「人命第一。苦情は受け付けないよ」

「イモービラス、嫌いな人間でも?」
「ボンバーダ、そう。嫌いな人間でも」

「フェミニスト」
「誰でもそんなもんだよ」

苦笑して、梅並の開いている手を握ってみる。小さくて細い手だった。

「戦いが終わったら言いたことがある」
「奇遇だね。私もだよ」

どうしてだろう。
確信にも近い思いが湧いてくる。
僕の胸に押し込めたこの気持ちを梅並に伝えても、僕らの友情は無くならない気がしたんだ。
なくならないどころか、良い方に転ぶ気さえしてくる。

握った手を離して、顔を上げた。
死喰い人はまだいるけれど、その数はかなり減った。蘭樹が作り出した獅子が城の中に敵を入れないようにしているのが功をそうしたのだろう。

瓦礫の山で向かい合っているダンブルドアとヴォルデモート卿。
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